学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと

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第7章 明莉

67 恋の中心

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「みなさん、落ち着きましょう。なにか勘違いをしていませんか?」

 長い夢を見ていたような感覚でしたが、その夢が覚めることはありません。

 これは現実なのかと、我に返ります。

「落ち着く……? この状況で落ち着くにはあんたが返事するしかないのよっ!」

 クワッと牙を向けてくる冴月さつきさん。

 とっても怖いのです……。

「それに勘違いでも何でもないわ。これは私達の総意よ」

「ええ、そうですよあかちゃん。この燃えるような気持ちを勘違いだと言うのなら、恋そのものが泡沫うたかたの夢のようなもの……」

「うん、日和姉ひよりねえそろそろ黙ろ……? 多分、昔の協調性取り戻していいと思う」

 このように月森さんたちも一切は否定をしないのです。

 四人がわたしに恋をしている……?

 何がどうなったらそんなことになるのでしょうか。

「あの三バカは放っておくにしても、花野はなのはどうするつもりなのっ」

「ど、どうって……」

 冴月さんに詰め寄られますが、それに答える言葉をわたしは持っていません。

 思考は乱れるばかりです。

「この場を収められるのは花野しかないのよっ、ほら、どうするのっ」

「そ、そんなこと言われても……」

 いきなりすぎて、返事をする以前に気持ちの整理が追いついていないのです。

「まあまあ、冴月ちゃん落ち着いて下さいな。あかちゃんには考える時間が必要なんです。ですよね?」

「あ、はい……」

 間を割るように入ってきた日和さんに助け船を出してもらいます。

「ですから、もう少し時間を置きましょう。待てない女は嫌われますよ?」

「……ふん、分かったわよ」

 冴月さんは鼻を鳴らしながらも、ひとまずは納得してくれたようでした。

「ていうかさっき、あたしたちのこと三バカって言ったよね……? 千夜ねえという成績トップもいるのにどうしてバカになるわけ……?」

「じゃあ一バカでいいわよ、月森華凛つきもりかりん

「なんで一になった!?」

「あんた成績悪いの知ってるから」

 いがみ合うお二人……。

 く、空気が重たいのです……。

「冴月理子、貴女アルバイトがあるのでしょう。そろそろ急いだ方がいいんじゃないのかしら?」

「あ、ぐっ、そ、そうだけど……」

 何やら離れ難そうにして、口をパクパクさせる冴月さん。

「わたしは本気なんだから、ちゃんと返事考えときなさいよ!!」

 どうやらわたしにだったようで、とっても純度の高い感情を打ち明けられるのでした。

「あ、あの……」

「なによっ!」

「お仕事、頑張ってくださいね……?」

 なにはともあれ、冴月さんはこれからお仕事なのです。

 わたしのせいではありますが、気持ちが宙ぶらりんになったまま働くのは大変でしょう。

「別に、あんたの家計を支えるために働いてるわけじゃないからっ!!」

「知ってます……」

 冴月さんはちょっと意味不明なことを口走りながら、頬を染めて勢いよく去っていきました。

 わたしたちは、姉妹揃ってお家へと帰ります。


        ◇◇◇


 夕食の時間を迎えた、食卓テーブルにて。

「……え」

 何ですか、この状況。

「さあ、たんと召し上がれ♡」

「あ、いや、あの……」

 夕食はハンバーグでした。

 それはとっても嬉しいのですが……。

「あの日和さん、これは?」

「はい、腕によりをかけて作りましたよ?」

 いや、そうじゃなくてですね……。

 目の前にはハート型になっているハンバーグが山盛りになっていました。

 ちなみに他の皆さんは丸い形になっています。

「ちょっと、日和ねえ! なんで明莉のハンバーグだけハートになってんの!?」

 異変に気付く華凛さん。

 そうです、もっと言って下さい。

「あら、たまたまこんな形になっちゃいましたねぇ……?」

「絶対にならないからっ! アピール露骨すぎっ!」

 華凛さんが当然ツッコミますが……。

「そうね、偶然なら仕方ないわね」

 案外、すんなりと受け入れる千夜さんでしたが……。

「あの、千夜さん? これは……」

 ハートのハンバーグを箸でつまんで、わたしの口元へ運んでいたのです。

「私も偶然、貴女に食べさせる動きをしてしまったの」

 うそぉ……。

「ないから! そんな偶然ありえないからっ!!」

 華凛さんが吠えます。

「二人ともっ、ちゃんと明莉の返事を待つって言ったじゃん! 露骨なアピールやめてよね! 明莉が変なプレッシャー感じるじゃん」

 華凛さんはわたしの立場になって、千夜さんと日和さんの行動を止めてくれます。

 お二方もその言葉で我に返ったのか、無言ながらも反論するようなことはありませんでした。

 確かに気持ちを落ち着けたい場面ではあったので、ちょっと助かりました。

 お二人の気持ちは大変嬉しいのですが、この身に余る好意ですからね。

「……あれ、なんか明莉のハンバーグ熱そう。あたしがフーフーしてあげよっか?」

 え、華凛さん?

『……おい』

「な、なんちゃってぇ~?」

 ドスの効いたお姉さま二人の声に、わざとらしく舌を出して頭をこつんと叩く華凛さん。

 というか待ってください。

 お、おかしいです。

あかちゃんの胃袋を押さえているのはわたしですからねぇ?」

「それなら、学生として最も重要な学業を押さえているのは私になるけれど」

「あ、あたしは……えっと、バスケ、は嫌いだった……え、あたしヤバくない……?」

 明らかに三姉妹の皆さんは臨戦態勢。

 わたしが、返事をするまでこんな冷戦状態がずっと続くということでしょうか?
 
 三姉妹の平和を願っていたはずのわたしが、いつの間にか争いの種になってしまっています。

 こ、こんなバカなことがありましょうか……。

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