学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと

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最終章 決断

68 お風呂は癒し……?

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「……」

 ひと悶着ありましたが、何とか夕食は無事に終わりそうな頃。

 (ちなみにハートのハンバーグは華凛かりんさんと千夜ちやさんの丸いハンバーグと交換になりました。お二人的には食べたらダメだったみたいです。日和ひよりさんは“……?”といつもより反応が薄かったです)

 そんな、いつもの日常であるはずなのに、この状況に違和感を感じて仕方ありません。

 ――ジ~ッ

 そう、自意識過剰かもしれませんか、このわたしに突き刺さる視線。

 何だか温度すら感じそうな熱を帯びています。

 だ、だって、み、皆さんわたしのことを好き、なんですよね……?

 ……ぐへっ。

 自分で思って頭が沸騰しそうです。

 そう思うと何だか途端にムズムズするというか。

 この空気感に耐えられないと言いますか、何とも形容し難い気持ちになってしまうのです。

 いつもならもう少し皆さんとお話をしていたりする事もあるのですが、今はそれが難しそうです。

 ここは一旦離脱するしかありませんね……。

「わ、わたしお風呂に入ってきますねぇ~?」

 普通の事を言っているだけなのに、声が上擦ってしまいました。

 意識しすぎかもしれません。

 わたしは足早にリビングから出て行くのでした。


        ◇◇◇


「ふぅ……」

 浴室に入り、椅子に座ってシャワーを頭に掛けます。

 お部屋に籠ってもいいのですけど、三姉妹の皆さんも同じ二階のお部屋なので、何となく音が聞こえたりして今は変に意識しちゃいそうです。

 こうして水の音で自分のことだけに集中できるお風呂の方が今のわたしにはちょうどいいのかもしれません。

 ――ザーッ

 じわぁっと暖かいお湯が全身を濡らし、ちょっとだけ緊張感がほぐれて行きます。

 ――ガラガラ

「……ガラガラ?」

 おかしな効果音が鳴ったと思い、びちょびちょになっている視界を片目だけうっすらと開けます。

「お背中、お流ししましょうかぁ?」

「――ッ!?」

 ほぐれたはずの緊張感は、一瞬にして元通り。

 というかさっき以上に全身に力が入ってしまいました。

 だって、目の前の光景があまりにもおかしかったのですから。

「……ひ、ひひひっ、日和さんっ!?」

 そこにはバスタオル一枚を体に巻いた日和さん。

 大事な所は見えていませんが、タオルだけでは日和さんの体の曲線をもろに浮かび上がらせてしまいます。

 豊満な胸とお尻を、どうしてそんな細い腰で繋いでいられるのか。

 白磁のような肢体は水を弾きそうなほどの張りがあり、それでいて、ほどよくむっちりとした肉感もあって……。

 いや、ちがうっ!

 何を凝視しているんですか、わたしはっ。

「はい、日和ちゃんです」

 自分にちゃん付け……?

 ああ、いや、そこじゃないっ。

 冷静になれ、わたしっ。

 ……。

 いやいや、無理でしょっ。

 この状況で落ち着けるわけありませんっ!

「何してるんですかっ!?」

「え、ですからお背中をお流ししようと……」

「ここ、お風呂ですよっ!?」

「? だから、背中を流すんですよ?」

 違う違う、そうじゃないですよねっ。

「早く出て行ってください!」

「あらあら、嫌われちゃいました?」

 そうじゃない、そうじゃなくてですね……。

「わたしだけ全部見えちゃうじゃないですかぁっ!!」

 座りながら体を丸めて、両手で自分を抱いているので大事な所は見えていないでしょうけど。

 日和さんはバスタオル巻いてますけど、わたしは裸ですからねっ。

 さすがに恥ずかしすぎますよねっ。

「なるほど、そういうことでしたかぁ」

 なぜか腑に落ちたように頷く日和さん。

 あの、いや、出て行って欲しいんですけど……。

あかちゃんは裸のお付き合いをご所望だったんですねぇ?」

 意味が分からないことを言いながら、日和さんはバスタオルの結び目に手を掛けています。

「なにしてるんですか!?」

「わたしも全てを晒せば、あかちゃんも恥ずかしくないのでしょう?」

 何を言ってるんですか、この人はああああああっ!?

「さあさあ、普段はかしこまって言えないことも体を許せば心も解き放てますよ」

 逆ですよっ!!

 わたしは現在進行形で物理的にも心理的にもガードを固めたくて仕方なくなってますよ!!

 ――スルッ……

 ああっ、衣擦れの音が聞こえてきますぅぅぅ!!!
  


「何をしているのかしら、日和?」



 その背後から、氷点下を下回る声。

 暖かいはずの浴室を凍らせてしまうんじゃないかと思うほどでした。

「……あら、千夜ちゃん」

 それにはさすがの日和さんも、表情を強張らせていました。

「姉妹で一緒に入浴するルールなんてあったかしら?」

 脱げかけていた日和さんのバスタオルも、千夜さんの手でしっかり巻き直してありました。

「入っちゃダメっていうルールもありませんよね?」

「……日和?」

「それにあかちゃんもお疲れのようでしたから、リフレッシュを図ろうと思いましてぇ?」

「日和、怒るわよ?」

「……冗談ですよ」

 千夜さんの圧と状況的不利を感じ取ったのか、日和さんは笑顔で浴室から立ち去ろうとします。

 その横を通り過ぎようとした時でした。

「それと、以前よりお腹周りの脂肪が増えたんじゃないかしら?」

「……うふふ、嫌ですね千夜ちゃん。わたしは脱いだわけじゃないのですから、確認できないでしょう?」

「布越しでも分かるほど、無駄な物がついてるということよ」

「……」

 え、これ、喧嘩ですか?

 すっごい怖い空気です。

「そうですねぇ。わたしのように腰にも・、お肉がない千夜ちゃんと比べられてしまうと、返す言葉もありませんねぇ?」

 ……え。

 それ遠回りに日和さんの方が女性らしい体つきをしてますよって意味でディスってませんか?

「……華凛の方がないでしょう」

 合ってます!?

 その返事で合ってますか、千夜さん!?

「とにかく、出て行きなさい日和」

「分かってますよぉ……」

 パタパタと日和さんの足音が遠ざかって行きます。

 よ、よかった……。

 ひとまず、裸のお付き合いは免れて……。

「え、あの……千夜さん?」

 な、なぜか浴室の扉を閉めてくれません。

 ていうか、思い切りこっち見てませんか?

 いや、あの、閉めたいんですけど、立ち上がると全部見えちゃうのでわたしからは動けなくて……。

「……背中は流さないけど、頭なら私が洗ってあげてもいいけれど」

 どういう理屈!?



「千夜ちゃ~ん? 怒りますよぉ?」



 立ち去ったはずの日和さんの声が、千夜さんの背後から聞こえてきます。

 実は様子を伺っていたのでしょうか。

 さすが姉妹……思考を読み合っています。

「冗談よ」

「ですよねえ? さすがにわたしを出し抜いてそんなことしませんよねぇ?」

 そう言って、また何やら言い合いを始めそうなお二人ですが……。

「あっ、あの……」

「どうかした?」「どうかしましたかぁ?」

 首を傾げているお二人ですが、早く気付いてくださいっ。

「扉、閉めてもらっていいですか!?」

 いつまでこのオープン状態なんですかねっ!?

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