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46. 憧れ(※sideアリューシャ)
いよいよやって来た、お兄様の誕生パーティー当日。
私は今四人の侍女に囲まれて、ヘアメイクやドレスの着付けをしてもらっているところ。
今夜は国中からたくさんの貴族たちが集まって、お兄様のお誕生日を祝うのよ。今まではそういうパーティーの場って、とっても苦手だった。集まった人たちに注目されて、私の一挙手一投足をジロジロと品定めされているようで落ち着かなかったし、マナーがなっていなかったと先生たちから次の日ネチネチと咎められるのも辛かったから。
でも、今はもう大丈夫。ミラベルさんが優しく丁寧に教え続けてくれたおかげで、私もだいぶ様になってきたはずよ。それに、今夜のパーティーはそのミラベルさんも出席するんだもの。ふふ。楽しみ。お兄様だってきっとそわそわしてるはずだわ。
(お兄様って絶対にミラベルさんのことが好きよねぇ。好きどころか、もはや大好きよねぇ。最近のお兄様はもうミラベルさん好き好きオーラが隠せてないもの。私もこないだはついうっかりからかってしまったわ)
お茶をしようと呼ばれて、ミラベルさんと一緒にお兄様のお部屋に行ったら、すごく美味しいスイーツが準備してあって、ミラベルさんはそれを食べて目を輝かせてた。そのミラベルさんの表情を見ていたお兄様が、本当に嬉しそうな顔をしたんだもの。もう私までニヤけちゃって。ついうっかり「私だって甘いもの好きなのに、まるでミラベルさんのためだけに用意したみたーい」なんて言っちゃった。お兄様、露骨に動揺していたわね。
それに、先日も。ミラベルさんがダイアナさんに呼び出されて二人で庭園に行ってしまったわって報告した途端、血相変えて立ち上がるんだもの。ジーンの制止も聞かずに部屋を飛び出していっちゃうし。
もう、ミラベルさんのことが大切で愛おしくて仕方ないって言っているようなものだわ。
(……でもお兄様は結局、ジュディ・オルブライト公爵令嬢と結婚するしかないんだろうなぁ……。オルブライト公爵家のご令嬢だものね。王太子の立場で、私には他に好きな人がいますから!なんてゴネるわけにもいかないもの)
辛いなぁ。
……ミラベルさんはどうなんだろう。
正直こちらも、お兄様を憎からず思っているような感じもする。ミラベルさんのお兄様を見つめる瞳が、最初の頃とは随分違うもの。緊張しつつも礼儀正しく丁寧にふるまっていた当初と比べて、お兄様を見つめる視線がうっとりと甘い……気がする。
お互いがお互いへの恋心を、必死で隠しているような……。
(はぁ……。だとしたら本当に切ないわね。身分違いの大人の恋って感じ……)
結ばれないかな。あの二人。
私がぼんやりとそんなことを考えている間に、身支度はすっかり整っていた。
「お待たせいたしました、アリューシャ様。とても美しく仕上がりましてございます」
「ありがとう」
姿見を見てビックリ。桃色のドレスに身を包んだ可憐な王女の姿が、そこにはあった。黙って立っていれば中身がこんな跳ねっ返りのおてんば娘だって絶対に分からないわ。さすが王女付きの侍女たちね。ありがたい。
「アクセサリーはいかがいたしましょう。イヤリングは、こちらのルビーでよろしかったのですよね」
「ええ。そうよ。それとこのブレスレットがいいわ。……ネックレスは……」
ミラベルさんが先日プレゼントしてくれたルビーのイヤリングと、控えめな細いチェーンのブレスレットを選ぶと、私は化粧台へ移動し、引き出しを開け、あのネックレスが入ったケースをそっと取り出す。
「……。」
ケースを開け、母の形見のルビーのネックレスをジッと見つめる。中央の大ぶりのルビーから下がる、太陽のモチーフ。今日はミラベルさんも、あのルビーのネックレスを着けると言っていた。
少し風変わりな、そしてとても素敵な目の前のネックレスを見つめながら、私は先日のミラベルさんの言葉を思い出す。
『……あなたは、その、……嫌じゃないの?私と、……お母様の形見の大切なネックレスが、その、被ってしまっても』
『まぁ、まさか。少しも嫌じゃありませんわ。むしろ嬉しいです。まるで姉妹みたいで。ふふ』
姉妹みたいで。
ミラベルさんは厚かましいことを言ったと謝ってきたけれど、私は胸がときめくほどに、その言葉が嬉しかった。
だっていつも思っていたんだもの。こんな人が、……ううん、この人が、私のお姉様だったらいいのになぁって。
決して切れることのない血の繋がりという絆。母を早くに亡くしたせいか、私はそれに強く憧れていた。だからもちろん、お兄様はとても大切な人。お父様は……、あまり会うことも話すこともないから、いまだに自分の父親だっていう実感がない。国王陛下だしね。
「……ネックレスはこれにするわ」
「まぁ、素敵でございますね。こちらのイヤリングやブレスレットともとても相性がよろしいですわ」
「ふふ。そうよね」
姿見の前に戻り、侍女にネックレスを着けてもらう。
胸元に輝く大きなルビーと太陽のモチーフを見て、私はドキドキした。ミラベルさん、何て言うだろう。本当に喜んでくれるかな。
とても楽しみな気持ちと、若干の緊張を抱えながら、私は自分の部屋を出て大広間に向かった。
私は今四人の侍女に囲まれて、ヘアメイクやドレスの着付けをしてもらっているところ。
今夜は国中からたくさんの貴族たちが集まって、お兄様のお誕生日を祝うのよ。今まではそういうパーティーの場って、とっても苦手だった。集まった人たちに注目されて、私の一挙手一投足をジロジロと品定めされているようで落ち着かなかったし、マナーがなっていなかったと先生たちから次の日ネチネチと咎められるのも辛かったから。
でも、今はもう大丈夫。ミラベルさんが優しく丁寧に教え続けてくれたおかげで、私もだいぶ様になってきたはずよ。それに、今夜のパーティーはそのミラベルさんも出席するんだもの。ふふ。楽しみ。お兄様だってきっとそわそわしてるはずだわ。
(お兄様って絶対にミラベルさんのことが好きよねぇ。好きどころか、もはや大好きよねぇ。最近のお兄様はもうミラベルさん好き好きオーラが隠せてないもの。私もこないだはついうっかりからかってしまったわ)
お茶をしようと呼ばれて、ミラベルさんと一緒にお兄様のお部屋に行ったら、すごく美味しいスイーツが準備してあって、ミラベルさんはそれを食べて目を輝かせてた。そのミラベルさんの表情を見ていたお兄様が、本当に嬉しそうな顔をしたんだもの。もう私までニヤけちゃって。ついうっかり「私だって甘いもの好きなのに、まるでミラベルさんのためだけに用意したみたーい」なんて言っちゃった。お兄様、露骨に動揺していたわね。
それに、先日も。ミラベルさんがダイアナさんに呼び出されて二人で庭園に行ってしまったわって報告した途端、血相変えて立ち上がるんだもの。ジーンの制止も聞かずに部屋を飛び出していっちゃうし。
もう、ミラベルさんのことが大切で愛おしくて仕方ないって言っているようなものだわ。
(……でもお兄様は結局、ジュディ・オルブライト公爵令嬢と結婚するしかないんだろうなぁ……。オルブライト公爵家のご令嬢だものね。王太子の立場で、私には他に好きな人がいますから!なんてゴネるわけにもいかないもの)
辛いなぁ。
……ミラベルさんはどうなんだろう。
正直こちらも、お兄様を憎からず思っているような感じもする。ミラベルさんのお兄様を見つめる瞳が、最初の頃とは随分違うもの。緊張しつつも礼儀正しく丁寧にふるまっていた当初と比べて、お兄様を見つめる視線がうっとりと甘い……気がする。
お互いがお互いへの恋心を、必死で隠しているような……。
(はぁ……。だとしたら本当に切ないわね。身分違いの大人の恋って感じ……)
結ばれないかな。あの二人。
私がぼんやりとそんなことを考えている間に、身支度はすっかり整っていた。
「お待たせいたしました、アリューシャ様。とても美しく仕上がりましてございます」
「ありがとう」
姿見を見てビックリ。桃色のドレスに身を包んだ可憐な王女の姿が、そこにはあった。黙って立っていれば中身がこんな跳ねっ返りのおてんば娘だって絶対に分からないわ。さすが王女付きの侍女たちね。ありがたい。
「アクセサリーはいかがいたしましょう。イヤリングは、こちらのルビーでよろしかったのですよね」
「ええ。そうよ。それとこのブレスレットがいいわ。……ネックレスは……」
ミラベルさんが先日プレゼントしてくれたルビーのイヤリングと、控えめな細いチェーンのブレスレットを選ぶと、私は化粧台へ移動し、引き出しを開け、あのネックレスが入ったケースをそっと取り出す。
「……。」
ケースを開け、母の形見のルビーのネックレスをジッと見つめる。中央の大ぶりのルビーから下がる、太陽のモチーフ。今日はミラベルさんも、あのルビーのネックレスを着けると言っていた。
少し風変わりな、そしてとても素敵な目の前のネックレスを見つめながら、私は先日のミラベルさんの言葉を思い出す。
『……あなたは、その、……嫌じゃないの?私と、……お母様の形見の大切なネックレスが、その、被ってしまっても』
『まぁ、まさか。少しも嫌じゃありませんわ。むしろ嬉しいです。まるで姉妹みたいで。ふふ』
姉妹みたいで。
ミラベルさんは厚かましいことを言ったと謝ってきたけれど、私は胸がときめくほどに、その言葉が嬉しかった。
だっていつも思っていたんだもの。こんな人が、……ううん、この人が、私のお姉様だったらいいのになぁって。
決して切れることのない血の繋がりという絆。母を早くに亡くしたせいか、私はそれに強く憧れていた。だからもちろん、お兄様はとても大切な人。お父様は……、あまり会うことも話すこともないから、いまだに自分の父親だっていう実感がない。国王陛下だしね。
「……ネックレスはこれにするわ」
「まぁ、素敵でございますね。こちらのイヤリングやブレスレットともとても相性がよろしいですわ」
「ふふ。そうよね」
姿見の前に戻り、侍女にネックレスを着けてもらう。
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