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47. 気持ちを削がれる(※sideアリューシャ)
胸を高鳴らせながら王宮の回廊を歩き、私は大広間を目指していた。もうミラベルさんはいるかしら。私の姿を、そしてこのネックレスを見て何て言うだろう。……大丈夫よね?きっと驚いて、そして喜んでくれるわよね?
はやる気持ちを抑えながら、姿勢を正して歩いていると、
「……あら、ま、これは王女殿下。ご機嫌麗しゅう」
「っ!……ジュディさん。……ええ、ごきげんよう」
なんと、角を曲がった先でオルブライト公爵令嬢に会ってしまった。こんなところで会うなんて。先にお兄様にご挨拶にでも行ったのかしら。
早く広間に行きたいのに、ジュディさんはまだ私に話しかけてくる。
「本日は王太子殿下ご生誕の日の祝賀会にお招きいただき、誠にありがとうございます。……本日の王女殿下は、格別のお美しさですわ。可憐で、優美で。ドレスも大変お似合いでございます」
「どうもありがとう。あなたもとても素敵よ」
では失礼、また後ほどね。
そう言って通り過ぎようとしたけれど、こんな時に限って彼女はしつこかった。
「本日は教育係のミラベルさんもご出席なさいますの?」
「……ええ、そうよ。お兄様がぜひにって仰って」
「……まぁ、それはそれは。あの教育係のお方は、本当にセレオン殿下のお覚えめでたくていらっしゃいますこと。結構なことですわ。貧しい子爵家のお嬢様から、王女殿下の教育係へ。そして今では王太子殿下のお気に入りに。とても向上心あふれる、たくましい方ですわね。……あ、今の言葉は決して、あの教育係のお方を軽んじても蔑んでもおりませんので。どうぞ誤解なさいませんように、敬愛する王女殿下」
「……。」
本当に、嫌な人。
嫌悪感がむくむくと湧いてきて、油断すると冷静さを失ってしまいそう。
「……ジュディさん、“あの教育係のお方”ではなく、ミラベル嬢よ。ミラベル・クルース子爵令嬢」
「大変失礼いたしました。クルース子爵令嬢でございましたわね。以後はそうお呼びいたしますわ、王女殿下」
「……では、また後ほど」
感じ悪い。大っ嫌い。
話を切り上げてオルブライト公爵令嬢の横を通り過ぎようとした、その時だった。
「ま、とても素敵……」
「……え?」
「そのネックレスです。とても精巧な凝ったデザインですこと。素敵ですわぁ」
「……どうも」
「王女殿下のお美しい瞳と同じ輝きを放っていらっしゃいますのね。まさに王女殿下のためだけのネックレスといった感じです。よくお似合いですわ。アクセサリーをお選びになるのも、ご自分で?本当に、見違えるほど成長なさいましたのね。素晴らしいですわ」
「……。」
「あら、失礼。遅れてしまいますわね。そろそろ参りませんと」
そういうとオルブライト公爵令嬢は大仰なカーテシーをし、護衛や侍女たちをぞろぞろと引き連れ、先に広間に向かって歩いていった。
「……アリューシャ様、そろそろ……」
オルブライト公爵令嬢の後ろ姿を睨みつけたまま微動だにしない私に、侍女がそっと声をかけてくる。
何だかものすごく、嫌な気分になった。
彼女は明らかにミラベルさんのことをまた貶した。ミラベルさんがお兄様にも大切にされていることがよほど気に入らないのか、わざとらしく褒めつつも、その言葉には露骨に嘲笑を含んでいたし、その流れでこの大切なネックレスにまで触れられたのが嫌でたまらなかった。まるでミラベルさんとお揃いのこのネックレスまで、馬鹿にされたようで。
今日これをミラベルさんに披露する気には、とてもなれなくなった。ミラベルさんが喜んでくれたとしても、私がさっきのあの人の態度を思い出して、たぶんずっとムカムカしたままだと思うから。
日を改めよう。そう思った。
「……待って。やっぱりアクセサリーを変えるわ」
戸惑う侍女たちを連れて、私は一旦自分の部屋に戻ったのだった。
はやる気持ちを抑えながら、姿勢を正して歩いていると、
「……あら、ま、これは王女殿下。ご機嫌麗しゅう」
「っ!……ジュディさん。……ええ、ごきげんよう」
なんと、角を曲がった先でオルブライト公爵令嬢に会ってしまった。こんなところで会うなんて。先にお兄様にご挨拶にでも行ったのかしら。
早く広間に行きたいのに、ジュディさんはまだ私に話しかけてくる。
「本日は王太子殿下ご生誕の日の祝賀会にお招きいただき、誠にありがとうございます。……本日の王女殿下は、格別のお美しさですわ。可憐で、優美で。ドレスも大変お似合いでございます」
「どうもありがとう。あなたもとても素敵よ」
では失礼、また後ほどね。
そう言って通り過ぎようとしたけれど、こんな時に限って彼女はしつこかった。
「本日は教育係のミラベルさんもご出席なさいますの?」
「……ええ、そうよ。お兄様がぜひにって仰って」
「……まぁ、それはそれは。あの教育係のお方は、本当にセレオン殿下のお覚えめでたくていらっしゃいますこと。結構なことですわ。貧しい子爵家のお嬢様から、王女殿下の教育係へ。そして今では王太子殿下のお気に入りに。とても向上心あふれる、たくましい方ですわね。……あ、今の言葉は決して、あの教育係のお方を軽んじても蔑んでもおりませんので。どうぞ誤解なさいませんように、敬愛する王女殿下」
「……。」
本当に、嫌な人。
嫌悪感がむくむくと湧いてきて、油断すると冷静さを失ってしまいそう。
「……ジュディさん、“あの教育係のお方”ではなく、ミラベル嬢よ。ミラベル・クルース子爵令嬢」
「大変失礼いたしました。クルース子爵令嬢でございましたわね。以後はそうお呼びいたしますわ、王女殿下」
「……では、また後ほど」
感じ悪い。大っ嫌い。
話を切り上げてオルブライト公爵令嬢の横を通り過ぎようとした、その時だった。
「ま、とても素敵……」
「……え?」
「そのネックレスです。とても精巧な凝ったデザインですこと。素敵ですわぁ」
「……どうも」
「王女殿下のお美しい瞳と同じ輝きを放っていらっしゃいますのね。まさに王女殿下のためだけのネックレスといった感じです。よくお似合いですわ。アクセサリーをお選びになるのも、ご自分で?本当に、見違えるほど成長なさいましたのね。素晴らしいですわ」
「……。」
「あら、失礼。遅れてしまいますわね。そろそろ参りませんと」
そういうとオルブライト公爵令嬢は大仰なカーテシーをし、護衛や侍女たちをぞろぞろと引き連れ、先に広間に向かって歩いていった。
「……アリューシャ様、そろそろ……」
オルブライト公爵令嬢の後ろ姿を睨みつけたまま微動だにしない私に、侍女がそっと声をかけてくる。
何だかものすごく、嫌な気分になった。
彼女は明らかにミラベルさんのことをまた貶した。ミラベルさんがお兄様にも大切にされていることがよほど気に入らないのか、わざとらしく褒めつつも、その言葉には露骨に嘲笑を含んでいたし、その流れでこの大切なネックレスにまで触れられたのが嫌でたまらなかった。まるでミラベルさんとお揃いのこのネックレスまで、馬鹿にされたようで。
今日これをミラベルさんに披露する気には、とてもなれなくなった。ミラベルさんが喜んでくれたとしても、私がさっきのあの人の態度を思い出して、たぶんずっとムカムカしたままだと思うから。
日を改めよう。そう思った。
「……待って。やっぱりアクセサリーを変えるわ」
戸惑う侍女たちを連れて、私は一旦自分の部屋に戻ったのだった。
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