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53.激昂するクライヴ様
口を塞がれ倒れたままの姿勢で、私は視線だけを部屋の入り口に這わせる。
そこには、床に手をついたエメライン王女の姿があり──。
(……っ! クライヴ様……っ!)
扉の内側に、怒気を孕んだ鋭い表情の、私の婚約者がいたのだ。廊下から差し込む光で照らされたそのたくましい姿に、私は心底安堵し体中の力が抜けた。私を抑え込むルパート様の腕を摑んでいた指先が、ぱたりと床に落ちる。
もう大丈夫だ。彼の姿を見ただけで、私はそれを確信した。涙がとめどなく溢れる。
「──俺の婚約者から離れろ!!」
心臓に響くほどの怒号を上げ、クライヴ様が猛烈な勢いでこちらに近付いてくる。私を抑えつけ、クライヴ様を見つめたまま固まっていたルパート様は、彼によって呆気なく引き剥がされた。そして首根っこを摑まれ、そのまま投げ飛ばされる。
「ぐえっ!」
蛙の潰れたような妙な声を上げ、ルパート様が背中から床に転がる。視界の隅にその姿をとらえた私は、次の瞬間抱き起こされ、大好きな人の胸の中にいた。
彼の太く力強い両腕が、私の全身をすっぽりと包み込む。息もできないほどに強く抱きしめられ、安堵のあまり一瞬気が遠くなる。私は震えながら目を閉じた。
「ローズ……! 大丈夫か。無事なのか!?」
頭上から聞こえるクライヴ様のその声は、これまで一度も聞いたことがないほどに切羽詰まっていた。私は彼の背に腕を回しながら、何度も頷く。
「はい……はい……! 大丈夫です。あ、ありがとうございます、来てくださって……」
背中が大きくて、全然手が届かない。彼の横腹あたりを必死に摑み、精一杯抱き返した。様々な感情が大波のように押し寄せ、それ以上言葉が出ない。
クライヴ様の胸が大きく膨らんだ直後、彼は脱力したように深く息を吐いた。
「ああ……よかった……。すまない、俺が来るのが遅くなったせいで、君に恐ろしい思いをさせてしまった。……ローズ、ここでしばらく待っていてくれ。奴らに制裁を加える」
掠れた声で優しくそう言うと、彼は私から体を離した。そして私の目を見つめ、髪をそっと撫でる。
クライヴ様は羽織っていた外套を脱ぐと、それを私の肩にかけた。その時に、さりげなくドレスの裾を直してくれる。そして振り返りながら、ゆっくりと立ち上がった。
背後では、ひっくり返ったまま床に両腕をついたルパート様が、充血した目を見開いてクライヴ様を凝視している。そしてひぃっと情けない声を上げた。クライヴ様の表情はこちらからは見えないけれど、よほど恐ろしいのだろう。扉の近くにいるエメライン王女も、倒れ込んだままだ。彼女は唇を薄く開き、呆然とクライヴ様を見つめていた。
彼はルパート様のもとへと、一歩ずつゆっくりと近付く。そして地を這うような低い声を発した。
「……俺の大切なローズに、よくもその汚い手で乱暴に触れたな。名を名乗れ」
「っ!! ル……ルパ、ルパート・フフフラフィントンです……っ! フ、フラフィントン侯爵家の……」
「……やはり貴様、フラフィントン侯爵家の息子か。随分と薄汚れた男だな。見苦しい真似を」
そう言うと、クライヴ様は目を見開いて震えているルパート様の首元を無造作に片手で摑み、立ち上がらせた。ルパート様はまるで巨大なぬいぐるみのように簡単に持ち上げられ、またも情けない声を漏らす。
ちょうどその時、細い廊下の入り口のところに立っていた二人の衛兵が、部屋に飛び込んできた。そしてクライヴ様とルパート様を見て固まり、さらに自分たちの近くに座り込んでいる王女を見てびくりと肩を跳ねさせた。私の侍女の姿も、彼らの奥に見える。騒ぎを聞きつけて控え室から出てきたのだろう。
その全員の視線を受けながら、クライヴ様はルパート様が着ているシャツの首元を摑んだまま、迫力に満ちた声で彼を問い詰める。
「ただでさえ彼女を傷付けないがしろにし、辛い日々を過ごさせておきながら、さらにこの愚行か。ローズは貴様が触れていい女性ではない。俺の婚約者だ。このクライヴ・サザーランドのな。それを貴様は……あろうことか彼女を床に押さえつけ、口を塞ぎ……泣かせたのだ! 相応の罰を受ける覚悟はあるのだろうな!?」
「ひぃ……っ!!」
(ク……クライヴ様……)
部屋中の空気がビリビリと振動するような、こちらの体が萎縮していくような、激しい怒り。自分が怒鳴られたわけでもないのに、その怒号に全身が震える。衛兵たちも私の侍女も、部屋の入り口から一歩も動けずに、強張った顔でクライヴ様を凝視している。
すると、その時。ルパート様の方から変な音が聞こえた。彼に視線を向けると、ズボンの色がじんわりと変わっていく。どうやら失禁したらしい。さすがに見ていられず、私はすぐに目を逸らした。
けれどクライヴ様は、構わず彼を尋問する。
「経緯と目的を吐け。なぜ貴様がエメライン王女殿下の部屋にいる? どうやって入った? 誰の手引きだ。俺のローズをどうするつもりだった。少しでもごまかしていると感じた瞬間、貴様の腕を切り落とす」
本気か脅しか分からないほどの剣幕で、クライヴ様はそう告げると、ぐにゃぐにゃと揺れるルパート様の体をさらに高く持ち上げる。
「本当ならば今すぐこの剣で、貴様の全身を切り刻んでやりたいぐらいなんだ。これ以上俺の理性を壊そうとするなよ」
「あ……、あ、あぁ……」
恐怖に引きつったルパート様の両目から、涙がこぼれた。彼は唇をぶるぶると震わせながら、絞り出すような声を出す。
「ぼ……、僕は、ロ、ローズに……」
次の瞬間、彼の体は鈍い音を立て床に投げ捨てられた。そしてその直後、空気を裂く鋭い音とともにクライヴ様の剣が抜かれ、一直線にルパート様の目の前へと突きつけられた。
「……っ!!」
息をするだけで触れてしまいそうな距離。
ルパート様は声にならない悲鳴を漏らし、全身を強張らせた。
クライヴ様が一層低い声を発する。
「ローズじゃない。ハートリー伯爵令嬢だ。その愛称は、彼女が大切だと思う者にのみ許した呼び名だ。もう一度でも口にしてみろ。二度と声を出せないようにしてやる」
「……し……承知、しました……っ」
(……クライヴ様……)
あの日私が伝えた言葉を、覚えてくださっているんだ……。
サザーランド公爵領のラプル農園で、自分の精一杯の想いを、私はそんな言葉でしか伝えられなかった。でもクライヴ様は、とても嬉しそうにしてくださって……。
こんな時だというのに、あの日の幸せな時間を思い出し、私の目にはまた涙が滲んだ。
そんな私の目の前で、失禁し這いつくばったルパート様が、泣きながら全身を震わせてクライヴ様を見上げていた。
そこには、床に手をついたエメライン王女の姿があり──。
(……っ! クライヴ様……っ!)
扉の内側に、怒気を孕んだ鋭い表情の、私の婚約者がいたのだ。廊下から差し込む光で照らされたそのたくましい姿に、私は心底安堵し体中の力が抜けた。私を抑え込むルパート様の腕を摑んでいた指先が、ぱたりと床に落ちる。
もう大丈夫だ。彼の姿を見ただけで、私はそれを確信した。涙がとめどなく溢れる。
「──俺の婚約者から離れろ!!」
心臓に響くほどの怒号を上げ、クライヴ様が猛烈な勢いでこちらに近付いてくる。私を抑えつけ、クライヴ様を見つめたまま固まっていたルパート様は、彼によって呆気なく引き剥がされた。そして首根っこを摑まれ、そのまま投げ飛ばされる。
「ぐえっ!」
蛙の潰れたような妙な声を上げ、ルパート様が背中から床に転がる。視界の隅にその姿をとらえた私は、次の瞬間抱き起こされ、大好きな人の胸の中にいた。
彼の太く力強い両腕が、私の全身をすっぽりと包み込む。息もできないほどに強く抱きしめられ、安堵のあまり一瞬気が遠くなる。私は震えながら目を閉じた。
「ローズ……! 大丈夫か。無事なのか!?」
頭上から聞こえるクライヴ様のその声は、これまで一度も聞いたことがないほどに切羽詰まっていた。私は彼の背に腕を回しながら、何度も頷く。
「はい……はい……! 大丈夫です。あ、ありがとうございます、来てくださって……」
背中が大きくて、全然手が届かない。彼の横腹あたりを必死に摑み、精一杯抱き返した。様々な感情が大波のように押し寄せ、それ以上言葉が出ない。
クライヴ様の胸が大きく膨らんだ直後、彼は脱力したように深く息を吐いた。
「ああ……よかった……。すまない、俺が来るのが遅くなったせいで、君に恐ろしい思いをさせてしまった。……ローズ、ここでしばらく待っていてくれ。奴らに制裁を加える」
掠れた声で優しくそう言うと、彼は私から体を離した。そして私の目を見つめ、髪をそっと撫でる。
クライヴ様は羽織っていた外套を脱ぐと、それを私の肩にかけた。その時に、さりげなくドレスの裾を直してくれる。そして振り返りながら、ゆっくりと立ち上がった。
背後では、ひっくり返ったまま床に両腕をついたルパート様が、充血した目を見開いてクライヴ様を凝視している。そしてひぃっと情けない声を上げた。クライヴ様の表情はこちらからは見えないけれど、よほど恐ろしいのだろう。扉の近くにいるエメライン王女も、倒れ込んだままだ。彼女は唇を薄く開き、呆然とクライヴ様を見つめていた。
彼はルパート様のもとへと、一歩ずつゆっくりと近付く。そして地を這うような低い声を発した。
「……俺の大切なローズに、よくもその汚い手で乱暴に触れたな。名を名乗れ」
「っ!! ル……ルパ、ルパート・フフフラフィントンです……っ! フ、フラフィントン侯爵家の……」
「……やはり貴様、フラフィントン侯爵家の息子か。随分と薄汚れた男だな。見苦しい真似を」
そう言うと、クライヴ様は目を見開いて震えているルパート様の首元を無造作に片手で摑み、立ち上がらせた。ルパート様はまるで巨大なぬいぐるみのように簡単に持ち上げられ、またも情けない声を漏らす。
ちょうどその時、細い廊下の入り口のところに立っていた二人の衛兵が、部屋に飛び込んできた。そしてクライヴ様とルパート様を見て固まり、さらに自分たちの近くに座り込んでいる王女を見てびくりと肩を跳ねさせた。私の侍女の姿も、彼らの奥に見える。騒ぎを聞きつけて控え室から出てきたのだろう。
その全員の視線を受けながら、クライヴ様はルパート様が着ているシャツの首元を摑んだまま、迫力に満ちた声で彼を問い詰める。
「ただでさえ彼女を傷付けないがしろにし、辛い日々を過ごさせておきながら、さらにこの愚行か。ローズは貴様が触れていい女性ではない。俺の婚約者だ。このクライヴ・サザーランドのな。それを貴様は……あろうことか彼女を床に押さえつけ、口を塞ぎ……泣かせたのだ! 相応の罰を受ける覚悟はあるのだろうな!?」
「ひぃ……っ!!」
(ク……クライヴ様……)
部屋中の空気がビリビリと振動するような、こちらの体が萎縮していくような、激しい怒り。自分が怒鳴られたわけでもないのに、その怒号に全身が震える。衛兵たちも私の侍女も、部屋の入り口から一歩も動けずに、強張った顔でクライヴ様を凝視している。
すると、その時。ルパート様の方から変な音が聞こえた。彼に視線を向けると、ズボンの色がじんわりと変わっていく。どうやら失禁したらしい。さすがに見ていられず、私はすぐに目を逸らした。
けれどクライヴ様は、構わず彼を尋問する。
「経緯と目的を吐け。なぜ貴様がエメライン王女殿下の部屋にいる? どうやって入った? 誰の手引きだ。俺のローズをどうするつもりだった。少しでもごまかしていると感じた瞬間、貴様の腕を切り落とす」
本気か脅しか分からないほどの剣幕で、クライヴ様はそう告げると、ぐにゃぐにゃと揺れるルパート様の体をさらに高く持ち上げる。
「本当ならば今すぐこの剣で、貴様の全身を切り刻んでやりたいぐらいなんだ。これ以上俺の理性を壊そうとするなよ」
「あ……、あ、あぁ……」
恐怖に引きつったルパート様の両目から、涙がこぼれた。彼は唇をぶるぶると震わせながら、絞り出すような声を出す。
「ぼ……、僕は、ロ、ローズに……」
次の瞬間、彼の体は鈍い音を立て床に投げ捨てられた。そしてその直後、空気を裂く鋭い音とともにクライヴ様の剣が抜かれ、一直線にルパート様の目の前へと突きつけられた。
「……っ!!」
息をするだけで触れてしまいそうな距離。
ルパート様は声にならない悲鳴を漏らし、全身を強張らせた。
クライヴ様が一層低い声を発する。
「ローズじゃない。ハートリー伯爵令嬢だ。その愛称は、彼女が大切だと思う者にのみ許した呼び名だ。もう一度でも口にしてみろ。二度と声を出せないようにしてやる」
「……し……承知、しました……っ」
(……クライヴ様……)
あの日私が伝えた言葉を、覚えてくださっているんだ……。
サザーランド公爵領のラプル農園で、自分の精一杯の想いを、私はそんな言葉でしか伝えられなかった。でもクライヴ様は、とても嬉しそうにしてくださって……。
こんな時だというのに、あの日の幸せな時間を思い出し、私の目にはまた涙が滲んだ。
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