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注目
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「あれ? 何で皆いるの?」
闘技場地下二階の控え室、エレベーターでここまで降りてきたフェイルーラは、グーシーやジュウベエたちの姿を見掛けて首を傾げた。彼らは昨日のうちに既に十一階層まで進んでいるので、彼らの控え室は、十一階の決闘者専用スペースのはずだからだ。
「初戦くらいは近くで見ておきたいからな!」
ジュウベエの言葉に、ジュウベエの派閥の少年たちだけでなく、グーシーたちも頷く。どうやら初のランクバトルに挑むフェイルーラの為に陣中見舞いに来たらしい。この後、一階の観客席に移動するようだ。
「子供を見守る親かよ」
思わずフェイルーラがツッコみ、皆が笑う中でも、グーシーは複雑な顔だ。幼少よりフェイルーラに仕えてきたグーシーからしたら、確かに子供を見守る親のような気分だからだ。
「そう言えば、貴賓室のあるフロアで、マドカ嬢に会ったよ」
「姉上に?」
グーシーには触れずに、フェイルーラは話題を変える。
「休日には良く来ているみたいだね。ジュウベエ君が来ているのも伝えたから、下手な試合は出来ないよ」
「ぬぬぬ、これは初手からまつりを召喚しないといけないか」
「それはどうぞご自由に。…………ジュウベエ君って、今、何階?」
「十三だ」
それがどれくらいのレベルなのか分からないフェイルーラは、グーシーたち、自分の派閥の面々に顔を向ける。
「十四です」
「同じく」
「…………」
グーシー、アーネスシス、ブルブルは十四階まで進んでいるようだ。他の面々は十一階まで上がったところで止まっているらしい。ジュウベエの派閥も同じくらいのようだ。これにフェイルーラは思考を巡らせる。
「じゃあ、折角だから、俺は二十階以上を目指そうかなあ」
そう口にすれば、
「いやあ、フェイルーラでもそれは難しいんじゃないか?」
ジュウベエはジト目になる。が、グーシーたち側近はこれを笑っていないので、グーシーたちの手応えからすると、フェイルーラでも二十階以上までいけるだろうと判断しているのが分かった。
「ま、あくまで目標だよ。対戦相手の組み合わせによれば、可能性もなくはないだろ?」
ランク戦は基本的にランダムで対戦が組まれるので、その階層で一番弱い対戦相手が続けば、一気に二十一階まで上がる事も不可能ではない。が、ジュウベエが十階層で手をこまねいている状況から考えると、現実的ではないとも考える。何せ、各階で十二勝しなければ次の階へ行けないのだ。二十一階となると、一日で二百四十勝しなければならない事になる。確かに現実的ではない。
「闘技場でのニュービーの一日の達成階数記録が、二十一階だそうです」
グーシーが説明をする。闘技場も二十四時間開いている訳ではないので、そこら辺が限界値だろうと、フェイルーラも納得する。が、これを説明したグーシーたちの顔はあまり晴れやかではない。
「どうかしたの?」
「いえ、その記録保持者は、セイキュア様のようでして」
「ああ」
これに複雑な顔となるフェイルーラ。フェイルーラの母であるセイキュアは、武闘派である父サロードよりも更に武闘派であり、魔法学校時代、派閥の傘下にサロードやガイシア、セガンなどを従えていた人物だ。ならばニュービーの達成階数記録を持っていても不思議ではないが、観客にそれを期待されても困る。とフェイルーラは嘆息を漏らした。
「やっぱり十一階を目標にするよ」
「何だよ、いきなりやる気なくしたな」
事情に明るくないジュウベエが、フェイルーラの突然の心変わりに、首を傾げる。
「朝も言ったけど、俺は本当なら闘技場には来年になってから挑戦するつもりだったんだよ。今日来たのも、スフィアン王太子殿下からの要請に応えたからだしね。適当なところで切り上げるさ」
「ふ~ん」
闘い大好きなジュウベエからは理解出来ない思考だったが、ジュウベエもフェイルーラがあまり本音を口にしないタイプである事は理解してきていた。なので、本当は二十一階までいくつもりがあるのか、本当に十一階で止めるのか、ジュウベエには判断出来なかった。それがジュウベエをモヤモヤさせる。
「取り敢えず、俺様が言える事は、これは決闘なんだ。対戦相手に失礼がないようにな」
つまり、手を抜くな。とジュウベエは言いたい訳であり、その言外の指摘はフェイルーラに届いていたが、
「対戦相手次第かな」
フェイルーラの答えは、ジュウベエの期待を満たすものではなかった。
✕✕✕✕✕
フェイルーラが地下二階のランクバトル用のポッドが並ぶ部屋に入ると、その場にいた決闘者たちの視線が一斉にフェイルーラへ向けられる。
(この注目なんだ? 新人が珍しいって訳じゃないだろうし……)
フェイルーラを横目で見ながら、それぞれが近くの決闘者と話をしていた。フェイルーラには聞こえてこなかったが、彼らが話題に上げていたのはフェイルーラだ。
ここにいる決闘者たちと言うのは、これを食い扶持の一つとしている者が相当数であり、それなりの数の決闘者が、四日前のジュウベエ対フェイルーラの闘いを観戦しており、それは尾鰭が付いて、その日フェイルーラの対戦を観れなかった者たちにも、その圧倒的魔力量差、守護精霊の有無をものともしない異様な闘い方は、噂の俎上にあがっていた。
(気にし過ぎかな)
この場に知り合いもいないフェイルーラは、視線やコソコソ話は無視する事にして、適当なポッドに入る。
ポッド内が暗くなり、フェイルーラの生体情報がスキャンされると、初回のガイダンスが流れる事もなく、眼前の黒い画面に『STANDBY』の文字が現れたかと思ったら、すぐに『DUEL.OK』の文字が現れた。
(流石はランクバトル。待ち時間なしですぐ決闘か)
『対戦が決定しました。意識をバトルフィールドへ移行します。移行まで、10、9、8、7、6、……』
スーッと意識が遠のく感覚を覚えながら、目は重く閉ざされ、次にフェイルーラが目を開いた時には、前回同様、バトルフィールドに立っていた。
闘技場地下二階の控え室、エレベーターでここまで降りてきたフェイルーラは、グーシーやジュウベエたちの姿を見掛けて首を傾げた。彼らは昨日のうちに既に十一階層まで進んでいるので、彼らの控え室は、十一階の決闘者専用スペースのはずだからだ。
「初戦くらいは近くで見ておきたいからな!」
ジュウベエの言葉に、ジュウベエの派閥の少年たちだけでなく、グーシーたちも頷く。どうやら初のランクバトルに挑むフェイルーラの為に陣中見舞いに来たらしい。この後、一階の観客席に移動するようだ。
「子供を見守る親かよ」
思わずフェイルーラがツッコみ、皆が笑う中でも、グーシーは複雑な顔だ。幼少よりフェイルーラに仕えてきたグーシーからしたら、確かに子供を見守る親のような気分だからだ。
「そう言えば、貴賓室のあるフロアで、マドカ嬢に会ったよ」
「姉上に?」
グーシーには触れずに、フェイルーラは話題を変える。
「休日には良く来ているみたいだね。ジュウベエ君が来ているのも伝えたから、下手な試合は出来ないよ」
「ぬぬぬ、これは初手からまつりを召喚しないといけないか」
「それはどうぞご自由に。…………ジュウベエ君って、今、何階?」
「十三だ」
それがどれくらいのレベルなのか分からないフェイルーラは、グーシーたち、自分の派閥の面々に顔を向ける。
「十四です」
「同じく」
「…………」
グーシー、アーネスシス、ブルブルは十四階まで進んでいるようだ。他の面々は十一階まで上がったところで止まっているらしい。ジュウベエの派閥も同じくらいのようだ。これにフェイルーラは思考を巡らせる。
「じゃあ、折角だから、俺は二十階以上を目指そうかなあ」
そう口にすれば、
「いやあ、フェイルーラでもそれは難しいんじゃないか?」
ジュウベエはジト目になる。が、グーシーたち側近はこれを笑っていないので、グーシーたちの手応えからすると、フェイルーラでも二十階以上までいけるだろうと判断しているのが分かった。
「ま、あくまで目標だよ。対戦相手の組み合わせによれば、可能性もなくはないだろ?」
ランク戦は基本的にランダムで対戦が組まれるので、その階層で一番弱い対戦相手が続けば、一気に二十一階まで上がる事も不可能ではない。が、ジュウベエが十階層で手をこまねいている状況から考えると、現実的ではないとも考える。何せ、各階で十二勝しなければ次の階へ行けないのだ。二十一階となると、一日で二百四十勝しなければならない事になる。確かに現実的ではない。
「闘技場でのニュービーの一日の達成階数記録が、二十一階だそうです」
グーシーが説明をする。闘技場も二十四時間開いている訳ではないので、そこら辺が限界値だろうと、フェイルーラも納得する。が、これを説明したグーシーたちの顔はあまり晴れやかではない。
「どうかしたの?」
「いえ、その記録保持者は、セイキュア様のようでして」
「ああ」
これに複雑な顔となるフェイルーラ。フェイルーラの母であるセイキュアは、武闘派である父サロードよりも更に武闘派であり、魔法学校時代、派閥の傘下にサロードやガイシア、セガンなどを従えていた人物だ。ならばニュービーの達成階数記録を持っていても不思議ではないが、観客にそれを期待されても困る。とフェイルーラは嘆息を漏らした。
「やっぱり十一階を目標にするよ」
「何だよ、いきなりやる気なくしたな」
事情に明るくないジュウベエが、フェイルーラの突然の心変わりに、首を傾げる。
「朝も言ったけど、俺は本当なら闘技場には来年になってから挑戦するつもりだったんだよ。今日来たのも、スフィアン王太子殿下からの要請に応えたからだしね。適当なところで切り上げるさ」
「ふ~ん」
闘い大好きなジュウベエからは理解出来ない思考だったが、ジュウベエもフェイルーラがあまり本音を口にしないタイプである事は理解してきていた。なので、本当は二十一階までいくつもりがあるのか、本当に十一階で止めるのか、ジュウベエには判断出来なかった。それがジュウベエをモヤモヤさせる。
「取り敢えず、俺様が言える事は、これは決闘なんだ。対戦相手に失礼がないようにな」
つまり、手を抜くな。とジュウベエは言いたい訳であり、その言外の指摘はフェイルーラに届いていたが、
「対戦相手次第かな」
フェイルーラの答えは、ジュウベエの期待を満たすものではなかった。
✕✕✕✕✕
フェイルーラが地下二階のランクバトル用のポッドが並ぶ部屋に入ると、その場にいた決闘者たちの視線が一斉にフェイルーラへ向けられる。
(この注目なんだ? 新人が珍しいって訳じゃないだろうし……)
フェイルーラを横目で見ながら、それぞれが近くの決闘者と話をしていた。フェイルーラには聞こえてこなかったが、彼らが話題に上げていたのはフェイルーラだ。
ここにいる決闘者たちと言うのは、これを食い扶持の一つとしている者が相当数であり、それなりの数の決闘者が、四日前のジュウベエ対フェイルーラの闘いを観戦しており、それは尾鰭が付いて、その日フェイルーラの対戦を観れなかった者たちにも、その圧倒的魔力量差、守護精霊の有無をものともしない異様な闘い方は、噂の俎上にあがっていた。
(気にし過ぎかな)
この場に知り合いもいないフェイルーラは、視線やコソコソ話は無視する事にして、適当なポッドに入る。
ポッド内が暗くなり、フェイルーラの生体情報がスキャンされると、初回のガイダンスが流れる事もなく、眼前の黒い画面に『STANDBY』の文字が現れたかと思ったら、すぐに『DUEL.OK』の文字が現れた。
(流石はランクバトル。待ち時間なしですぐ決闘か)
『対戦が決定しました。意識をバトルフィールドへ移行します。移行まで、10、9、8、7、6、……』
スーッと意識が遠のく感覚を覚えながら、目は重く閉ざされ、次にフェイルーラが目を開いた時には、前回同様、バトルフィールドに立っていた。
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