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第一章 謎の転校生
謎の転校生③
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祖父に連れられ学園の門をくぐった九条瑞樹は、顔を苦痛に歪め、今にも泣きそうな顔をしている。
「はじめまして。九条瑞稀です。これから宜しくお願い致します」
自分に向かって礼儀良く頭を下げる青年に、ミスター・レンは思わず目を見開く。目の前にいる瑞稀と名乗った青年は、美形というわけではないが整った顔立ちをしていた。
何かスポーツをしていたであろうその体は、程よく筋肉がつきスラッとしている。その落ち着いた佇まいは瑞稀を酷く大人びて見せる。きっと、さぞや生徒からモテるだろうと、ミスター・レンは溜息をついた。
ただ、その表情はまるで凍りついてしまっているように見えた。もしかしたら本来の瑞稀は、社交的で友達も多い性格……なのかもしれないと想像してしまう。常に人の輪の中心にいるような、誰からも好かれる存在であったのであれば、この子のお爺様はどれだけ孫を不憫に思ったことか。
瑞稀のあまりにも痛々しい姿に、ミスター・レンの心は痛む。
「ひとまず、寮の中を案内します」
「はい」
瑞稀がようやく少しだけ浮かべた笑顔に、ミスター・レンは安堵する。どうやら全く笑えないわけではなそうだ。
「授業が終わったら、ここの寮長を紹介しますから」
「わかりました。ありがとうございます」
本当に十八歳とは思えないほどの落ち着いた態度で、大人しくミスター・レンの後をついて回りながら、案内に耳を傾けている転校生。少しの時間一緒にいるだけでも良家に生まれ、きちんとした教育を受けてきたことが伝わってきた。
「ミスター・レン。遅くなってすみません!」
突然、食堂のほうから聞こえてくる足音に、ミスター・レンと瑞稀が振り返る。そこには、分厚い教科書を抱えて走ってくる羽音の姿があった。
「あ、来栖君」
「ハァハァ……申し訳ありません。六時限目の授業が長引いてしまって……」
「構わんよ」
息を切らせながら、自分達の方へと駆け寄ってくる羽音に、ミスター・レンは笑いかける。
ふと、ミスター・レンの視界に羽音を見つめる瑞稀の様子が入る。瑞稀は何かに吸い込まれるかのように、呆然と羽音を見つめていた。銀色の髪に栗色の瞳をもった姿を、つぶさに見つめる瑞稀の顔は、紅潮していた。
「へぇ……」
まるで、熱に魘されたかのように顔を赤らめる瑞稀を見たミスター・レンは、目を細めた。
「彼は 来栖羽音。この学校で生徒会長をしていて、君が暮らすことになる寮の寮長も務めてくれています」
「はじめまして、僕は来栖と言います……え?」
羽音が瑞稀に向かって手を差し出し握手を求めようとした瞬間、まるで凍りついてしまったかのように動きを止める。
「……な、なんで……?」
瑞稀に差し出した手を、羽音は慌てて引っ込めてキャソックの中にしまってしまった。硝子玉みたいに真ん丸な瞳を更に見開いて、体がカタカタと震え出す。額には冷や汗が滲み、何かに怯えているのが傍目にもわかった。
「どうした? 来栖君?」
ミスター・レンが明らかに様子のおかしい羽音の顔を覗き込んだ。
「いえ、なんでもありません」
「なんでもないわけないだろう? 大丈夫か?」
「嫌! 触らないで!」
羽音の肩に触れようとしたミスター・レンの手を羽音が勢いよく払い除けた。
その顔は赤く火照り、「ハァハァ」と肩で荒い呼吸をしている。瞳は涙で潤み、その姿が嫌に艶かしい。ミスター・レンは明らかにいつもと様子が違う羽音から、そっと体を離した。
「ミスター・レン。すみません、僕、体調が良くないので、これで失礼します」
そう伏し目がちにお辞儀をしながら、羽音はミスター・レンと瑞稀の横をすり抜けて行ってしまった。
「あ! ちょっと……!」
そんな羽音を追いかけようとした瑞稀の腕を、ミスター・レンが咄嗟に掴んだ。
「君は部屋に戻っていてください。彼は俺が追いかけますから」
「でも……」
「大丈夫です。俺に任せて」
「……はい……」
不服そうではあるが、素直に自分の指示に従ってくれた瑞稀の頭を撫でてから、ミスター・レンは足早に羽音の後を追いかけた。
──なんだったんだ、あれは……。
ミスター・レンは眉を顰める。いつも冷静な羽音が見せた明らかな動揺に、ミスター・レン自身も強い戸惑いを感じていた。
「はじめまして。九条瑞稀です。これから宜しくお願い致します」
自分に向かって礼儀良く頭を下げる青年に、ミスター・レンは思わず目を見開く。目の前にいる瑞稀と名乗った青年は、美形というわけではないが整った顔立ちをしていた。
何かスポーツをしていたであろうその体は、程よく筋肉がつきスラッとしている。その落ち着いた佇まいは瑞稀を酷く大人びて見せる。きっと、さぞや生徒からモテるだろうと、ミスター・レンは溜息をついた。
ただ、その表情はまるで凍りついてしまっているように見えた。もしかしたら本来の瑞稀は、社交的で友達も多い性格……なのかもしれないと想像してしまう。常に人の輪の中心にいるような、誰からも好かれる存在であったのであれば、この子のお爺様はどれだけ孫を不憫に思ったことか。
瑞稀のあまりにも痛々しい姿に、ミスター・レンの心は痛む。
「ひとまず、寮の中を案内します」
「はい」
瑞稀がようやく少しだけ浮かべた笑顔に、ミスター・レンは安堵する。どうやら全く笑えないわけではなそうだ。
「授業が終わったら、ここの寮長を紹介しますから」
「わかりました。ありがとうございます」
本当に十八歳とは思えないほどの落ち着いた態度で、大人しくミスター・レンの後をついて回りながら、案内に耳を傾けている転校生。少しの時間一緒にいるだけでも良家に生まれ、きちんとした教育を受けてきたことが伝わってきた。
「ミスター・レン。遅くなってすみません!」
突然、食堂のほうから聞こえてくる足音に、ミスター・レンと瑞稀が振り返る。そこには、分厚い教科書を抱えて走ってくる羽音の姿があった。
「あ、来栖君」
「ハァハァ……申し訳ありません。六時限目の授業が長引いてしまって……」
「構わんよ」
息を切らせながら、自分達の方へと駆け寄ってくる羽音に、ミスター・レンは笑いかける。
ふと、ミスター・レンの視界に羽音を見つめる瑞稀の様子が入る。瑞稀は何かに吸い込まれるかのように、呆然と羽音を見つめていた。銀色の髪に栗色の瞳をもった姿を、つぶさに見つめる瑞稀の顔は、紅潮していた。
「へぇ……」
まるで、熱に魘されたかのように顔を赤らめる瑞稀を見たミスター・レンは、目を細めた。
「彼は 来栖羽音。この学校で生徒会長をしていて、君が暮らすことになる寮の寮長も務めてくれています」
「はじめまして、僕は来栖と言います……え?」
羽音が瑞稀に向かって手を差し出し握手を求めようとした瞬間、まるで凍りついてしまったかのように動きを止める。
「……な、なんで……?」
瑞稀に差し出した手を、羽音は慌てて引っ込めてキャソックの中にしまってしまった。硝子玉みたいに真ん丸な瞳を更に見開いて、体がカタカタと震え出す。額には冷や汗が滲み、何かに怯えているのが傍目にもわかった。
「どうした? 来栖君?」
ミスター・レンが明らかに様子のおかしい羽音の顔を覗き込んだ。
「いえ、なんでもありません」
「なんでもないわけないだろう? 大丈夫か?」
「嫌! 触らないで!」
羽音の肩に触れようとしたミスター・レンの手を羽音が勢いよく払い除けた。
その顔は赤く火照り、「ハァハァ」と肩で荒い呼吸をしている。瞳は涙で潤み、その姿が嫌に艶かしい。ミスター・レンは明らかにいつもと様子が違う羽音から、そっと体を離した。
「ミスター・レン。すみません、僕、体調が良くないので、これで失礼します」
そう伏し目がちにお辞儀をしながら、羽音はミスター・レンと瑞稀の横をすり抜けて行ってしまった。
「あ! ちょっと……!」
そんな羽音を追いかけようとした瑞稀の腕を、ミスター・レンが咄嗟に掴んだ。
「君は部屋に戻っていてください。彼は俺が追いかけますから」
「でも……」
「大丈夫です。俺に任せて」
「……はい……」
不服そうではあるが、素直に自分の指示に従ってくれた瑞稀の頭を撫でてから、ミスター・レンは足早に羽音の後を追いかけた。
──なんだったんだ、あれは……。
ミスター・レンは眉を顰める。いつも冷静な羽音が見せた明らかな動揺に、ミスター・レン自身も強い戸惑いを感じていた。
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