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第二章 天使の翼
天使の翼②
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「今日は満月なんだ」
真っ直ぐに寮に戻ることに躊躇いを感じた羽音は、渡り廊下を抜けて庭へと足を伸ばした。
学校の目の前に広がる大きな湖は、ユラユラとさざ波を作りながら、ゆっくりと揺れ続けている。それと同時に、湖面に映し出された満月も頼りなさそうに揺れていた。湖面が揺れる音だけが、鎮まり返った世界に響いているように思えて、強い孤独に襲われる。
「僕は一人ぼっちなのかな……」
羽音は湖の淵にしゃがみ込んだ。その瞬間……羽音の体中が熱くなり、背中にムズムズと虫が這うような違和感がある。それと同時に心臓が大きく高鳴り出した。
「んぁ……あ、あん……な、何だこれ……」
キャソックが少し胸の飾りに擦れただけで、ビクンビクンと体が跳ね上がるほどの快感に襲われる。徐々に羽音自身にも熱が籠り、呼吸が荒くなっていった。
「あ、あぁ……く、苦しい……苦しい……」
その時、シュッと一つの流れ星が、綺麗な尾を引いて夜空を駆け抜ける。後から後から、まるで流星群のように空を駆け抜けていく。それはまるで星屑のシャワーのように、羽音の上へと降り注いだ。
「あ、あぁ……あ、あぁぁぁ……‼」
バサッ、バサッ。
羽音が絶叫すると同時に、背中からはキャソックを切り裂いて、真っ白くて大きな片羽が姿を現した。
その純白な片羽にたくさんの星屑が舞い降りて、キラキラと眩い光を放つ。それはまるで、花嫁が身に纏う純白のウェディングドレスのようだった。
「はぁはぁ……なんで、羽が……」
突然の予期せぬ出来事に、羽音は強い戸惑いと恐怖を感じた。
「来栖さん」
「え……?」
その時、羽音の背後から聞き覚えのある声が聞こえてくる。羽音の脳裏を最悪な結末が過っていく。恐る恐る振り返ったそこには、羽音の予想通り、瑞稀が立っていた。
「何で九条君がここに……」
「部屋の窓から、貴方の姿が見えたから心配になって……。やっぱり貴方は、天使だったんだ……」
羽音の体はカタカタと音を立てて震える。そんな羽音に、瑞稀の優しい声が聞こえてきた。
「来栖さん。これから、俺は少しずつ貴方に近付いていきます。でも、逃げないでください」
「…………」
「行きますね。大丈夫です。俺は貴方に危害を加えませんから」
少しずつ二人の距離が近付く度に自然と体に力が入り強張っていく。そんな羽音に、瑞稀は優しく語りかけ続けてくれた。
「お願いです。俺から逃げないで。俺は……俺は、貴方の近くに行きたいだけです」
「九条君……」
「だからお願いです。そのまま、そこにいて……」
段々近付いてきた瑞稀が、今にも泣きそうな顔をしていることに気付いた羽音は、逃げようという気持ちが少しずつ和らいでいくのを感じた。
「ありがとう。来栖さん」
そのまま、瑞稀は羽音を抱き締めた。
「何……この花の香りは……」
瑞稀の体温を感じた瞬間、羽音の周りを甘ったるい花の香りが包み込む。その香りを、羽音は思い切り吸い込んだ。
「なんて綺麗な天使なんだ……」
瑞稀の体温が心地良くて、蕩けてしまいそうな意識の中で、瑞稀の優しい優しい声が羽音の鼓膜を震わせた。
「来栖さん、大丈夫ですから」
瑞稀に囁かれながら優しく頭を撫でられれば、羽音はどうしたらいいかわからなくなる。
それなのに、体が火照って、下半身が甘く疼き始める。
「なんなんだよ、これ……」
羽音の頬を幾筋もの涙が伝う。もう、素手では触れないくらい熱くなった水晶玉が、羽音の身も心も焼き尽くしていくように思えた。
「大丈夫ですか? もしかして……泣いてるの?」
羽音のそんな思いなど露も知らない瑞稀が、不安そうな表情で自分の顔を覗き込んでくる。こんなにも自分を心配してくれている瑞稀を前に、意味も分からないまま欲情している自身が、羽音は許せなかった。
「大丈夫? 羽が片方しかないから、痛いんですか?」
羽音の背中で、湖から吹き抜けてくる風にフワフワと揺れる羽を撫でながら、瑞稀まで泣きそうな顔をしている。
「お願いです。泣かないで……」
そのまま瑞稀の指先がスルりと滑り落ちて、首筋に触れた瞬間、
「んぁ、あんっ……」
「え?」
たったそれだけの刺激で、羽音の口からあられもない声が漏れる。瑞稀が驚いたように手を引っ込めてしまったから、羽音は慌てて俯いた。
「ごめんなさい、変な声出して。今、僕の体はおかしいから、お願いです……僕に近寄らないでください」
羽音は唇を噛み締めたまま、俯くことしか出来ない。
「僕は、醜い存在なんです」
自分の言葉に、羽音が一番傷付いていた。次から次に溢れ出した涙が乾いた地面に落ちて、音もなく吸い込まれていく。
『気持ち悪い』、そう瑞稀に罵られる覚悟はできていた。
真っ直ぐに寮に戻ることに躊躇いを感じた羽音は、渡り廊下を抜けて庭へと足を伸ばした。
学校の目の前に広がる大きな湖は、ユラユラとさざ波を作りながら、ゆっくりと揺れ続けている。それと同時に、湖面に映し出された満月も頼りなさそうに揺れていた。湖面が揺れる音だけが、鎮まり返った世界に響いているように思えて、強い孤独に襲われる。
「僕は一人ぼっちなのかな……」
羽音は湖の淵にしゃがみ込んだ。その瞬間……羽音の体中が熱くなり、背中にムズムズと虫が這うような違和感がある。それと同時に心臓が大きく高鳴り出した。
「んぁ……あ、あん……な、何だこれ……」
キャソックが少し胸の飾りに擦れただけで、ビクンビクンと体が跳ね上がるほどの快感に襲われる。徐々に羽音自身にも熱が籠り、呼吸が荒くなっていった。
「あ、あぁ……く、苦しい……苦しい……」
その時、シュッと一つの流れ星が、綺麗な尾を引いて夜空を駆け抜ける。後から後から、まるで流星群のように空を駆け抜けていく。それはまるで星屑のシャワーのように、羽音の上へと降り注いだ。
「あ、あぁ……あ、あぁぁぁ……‼」
バサッ、バサッ。
羽音が絶叫すると同時に、背中からはキャソックを切り裂いて、真っ白くて大きな片羽が姿を現した。
その純白な片羽にたくさんの星屑が舞い降りて、キラキラと眩い光を放つ。それはまるで、花嫁が身に纏う純白のウェディングドレスのようだった。
「はぁはぁ……なんで、羽が……」
突然の予期せぬ出来事に、羽音は強い戸惑いと恐怖を感じた。
「来栖さん」
「え……?」
その時、羽音の背後から聞き覚えのある声が聞こえてくる。羽音の脳裏を最悪な結末が過っていく。恐る恐る振り返ったそこには、羽音の予想通り、瑞稀が立っていた。
「何で九条君がここに……」
「部屋の窓から、貴方の姿が見えたから心配になって……。やっぱり貴方は、天使だったんだ……」
羽音の体はカタカタと音を立てて震える。そんな羽音に、瑞稀の優しい声が聞こえてきた。
「来栖さん。これから、俺は少しずつ貴方に近付いていきます。でも、逃げないでください」
「…………」
「行きますね。大丈夫です。俺は貴方に危害を加えませんから」
少しずつ二人の距離が近付く度に自然と体に力が入り強張っていく。そんな羽音に、瑞稀は優しく語りかけ続けてくれた。
「お願いです。俺から逃げないで。俺は……俺は、貴方の近くに行きたいだけです」
「九条君……」
「だからお願いです。そのまま、そこにいて……」
段々近付いてきた瑞稀が、今にも泣きそうな顔をしていることに気付いた羽音は、逃げようという気持ちが少しずつ和らいでいくのを感じた。
「ありがとう。来栖さん」
そのまま、瑞稀は羽音を抱き締めた。
「何……この花の香りは……」
瑞稀の体温を感じた瞬間、羽音の周りを甘ったるい花の香りが包み込む。その香りを、羽音は思い切り吸い込んだ。
「なんて綺麗な天使なんだ……」
瑞稀の体温が心地良くて、蕩けてしまいそうな意識の中で、瑞稀の優しい優しい声が羽音の鼓膜を震わせた。
「来栖さん、大丈夫ですから」
瑞稀に囁かれながら優しく頭を撫でられれば、羽音はどうしたらいいかわからなくなる。
それなのに、体が火照って、下半身が甘く疼き始める。
「なんなんだよ、これ……」
羽音の頬を幾筋もの涙が伝う。もう、素手では触れないくらい熱くなった水晶玉が、羽音の身も心も焼き尽くしていくように思えた。
「大丈夫ですか? もしかして……泣いてるの?」
羽音のそんな思いなど露も知らない瑞稀が、不安そうな表情で自分の顔を覗き込んでくる。こんなにも自分を心配してくれている瑞稀を前に、意味も分からないまま欲情している自身が、羽音は許せなかった。
「大丈夫? 羽が片方しかないから、痛いんですか?」
羽音の背中で、湖から吹き抜けてくる風にフワフワと揺れる羽を撫でながら、瑞稀まで泣きそうな顔をしている。
「お願いです。泣かないで……」
そのまま瑞稀の指先がスルりと滑り落ちて、首筋に触れた瞬間、
「んぁ、あんっ……」
「え?」
たったそれだけの刺激で、羽音の口からあられもない声が漏れる。瑞稀が驚いたように手を引っ込めてしまったから、羽音は慌てて俯いた。
「ごめんなさい、変な声出して。今、僕の体はおかしいから、お願いです……僕に近寄らないでください」
羽音は唇を噛み締めたまま、俯くことしか出来ない。
「僕は、醜い存在なんです」
自分の言葉に、羽音が一番傷付いていた。次から次に溢れ出した涙が乾いた地面に落ちて、音もなく吸い込まれていく。
『気持ち悪い』、そう瑞稀に罵られる覚悟はできていた。
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