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第四章 交わってはいけない二人
交わってはいけない二人④
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瑞稀に抱き締められたまま、その顔を見上げれば、やっぱり寂しそうな顔をしていて……羽音はもう一度、優しく瑞稀の頭を撫でてやる。
「羽音。俺は、貴方に話しておかなければならないことがあるんです」
「話しておかなければならないこと?」
「はい……」
瑞稀が悲しそうに目を伏せたのを見て、羽音は不安にかられた。何を話すつもりかなんて、もちろん想像はついていない。疑問符を浮かばせたような表情で、羽音は瑞稀を見つめて、続きを促す。
瑞稀は堰を切ったように口を開いた。
「俺の、過去のことです」
「……君の、過去」
「はい。でも、僕の過去を知った貴方は、僕の目の前から去ってしまうかもしれない」
「……そ、そんなことはありません……誓ってもいい……!」
その優しい外見からは、想像がつかない程の羽音の強い口調に、瑞稀が一瞬目を見開いてから微笑んだ。その笑顔が、今にも泣き出しそうな子供のようで、羽音の胸はズキンズキンと痛み始める。
一体何が、あの明るくて元気な彼をこんな風にさせるのだろう。羽音は、それが知りたかった。
「今からする話を聞いても、俺を嫌いにならないでください」
「嫌いになんてなりません。絶対に」
「ありがとう」
瑞稀はフワリと笑って、羽音にキスをくれた。
まるで、地上に音もなく舞い降りる雪のように。優しく、そっと。
「僕は、子供の頃にインキュバスという悪魔に襲われたんです」
「インキュバス……?」
その言葉に、一瞬にして羽音の血の気が引いていくのを感じた。
手足は冷たくなり、自然と体がカタカタと震えてくる。心臓は張り裂けそうなくらい拍動を打ち始めていた。
「子供の頃に会った時は、特に何もされることもなく、その悪魔は去って行きました。でも、つい最近……あいつは、再び俺の目の前に現れた」
恐怖に顔を引きつらせ、どんどん瑞稀の顔が真っ青になっていく。当時の記憶が、鮮明に思い起こされているのかもしれない。
鍛え上げられた逞しい体が、震え出した。
「大人になった俺は……俺は……」
「大人になった瑞稀はどうしたんですか?」
瑞稀の頬を両手で包み込み、自分の方を向かせる。只事ではない瑞稀の雰囲気に、羽音は恐怖に押し潰されそうになった。
羽音の手に一粒の雫が落ちる。その雫は、羽音の手を伝い、音もなく床へと落ちる。その雫の正体は、冷たい瑞稀の涙だった。
羽音は、初めて瑞稀の涙を見た。いつも向日葵のように笑う瑞稀の涙に唇を寄せて、ペロッと舐めとる。今の羽音には、それくらいしかしてやれることがなかったから。
「羽音。俺は、貴方に話しておかなければならないことがあるんです」
「話しておかなければならないこと?」
「はい……」
瑞稀が悲しそうに目を伏せたのを見て、羽音は不安にかられた。何を話すつもりかなんて、もちろん想像はついていない。疑問符を浮かばせたような表情で、羽音は瑞稀を見つめて、続きを促す。
瑞稀は堰を切ったように口を開いた。
「俺の、過去のことです」
「……君の、過去」
「はい。でも、僕の過去を知った貴方は、僕の目の前から去ってしまうかもしれない」
「……そ、そんなことはありません……誓ってもいい……!」
その優しい外見からは、想像がつかない程の羽音の強い口調に、瑞稀が一瞬目を見開いてから微笑んだ。その笑顔が、今にも泣き出しそうな子供のようで、羽音の胸はズキンズキンと痛み始める。
一体何が、あの明るくて元気な彼をこんな風にさせるのだろう。羽音は、それが知りたかった。
「今からする話を聞いても、俺を嫌いにならないでください」
「嫌いになんてなりません。絶対に」
「ありがとう」
瑞稀はフワリと笑って、羽音にキスをくれた。
まるで、地上に音もなく舞い降りる雪のように。優しく、そっと。
「僕は、子供の頃にインキュバスという悪魔に襲われたんです」
「インキュバス……?」
その言葉に、一瞬にして羽音の血の気が引いていくのを感じた。
手足は冷たくなり、自然と体がカタカタと震えてくる。心臓は張り裂けそうなくらい拍動を打ち始めていた。
「子供の頃に会った時は、特に何もされることもなく、その悪魔は去って行きました。でも、つい最近……あいつは、再び俺の目の前に現れた」
恐怖に顔を引きつらせ、どんどん瑞稀の顔が真っ青になっていく。当時の記憶が、鮮明に思い起こされているのかもしれない。
鍛え上げられた逞しい体が、震え出した。
「大人になった俺は……俺は……」
「大人になった瑞稀はどうしたんですか?」
瑞稀の頬を両手で包み込み、自分の方を向かせる。只事ではない瑞稀の雰囲気に、羽音は恐怖に押し潰されそうになった。
羽音の手に一粒の雫が落ちる。その雫は、羽音の手を伝い、音もなく床へと落ちる。その雫の正体は、冷たい瑞稀の涙だった。
羽音は、初めて瑞稀の涙を見た。いつも向日葵のように笑う瑞稀の涙に唇を寄せて、ペロッと舐めとる。今の羽音には、それくらいしかしてやれることがなかったから。
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