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第五章 ウェディングドレス
ウェディングドレス③
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「ねぇ、温めて?」
「え?」
「寒いから……瑞稀が温めて?」
恥ずかしさのあまり、頬が火照るのを感じた羽音は少しだけ俯いてしまう。でも、今日だけは素直で可愛い羽音でいたいと思ったのだ。だから、羽音は勇気を振り絞って、潤んだ瞳で瑞稀を見上げる。
瑞稀の前髪に雪の結晶が付いて、それが水滴になる。そのあまりの色香に、羽音はドキドキしてしまった。
「いいですよ」
フワリと、瑞稀が自分のコートで羽音を包み込んでくれる。
「俺が貴方を温めてあげます」
「瑞稀……」
「冷えきった体も。唇も……」
「ん、ん……」
瑞稀の唇が、冷たくなった羽音の唇に、まるで真綿のように優しく重なった。
しばらくの間、互いの唇を堪能してから、名残惜しそうに離れる。二人は甘い吐息を洩らした。それは白い結晶となり、キラキラと輝いて見える。
瑞稀は、冷えきった羽音の手を、自分の頬に当てて温めてくれた。
「あったかい」
羽音が呟けば、その手に唇を押し当てられた後に、ペロッと指を舐められてしまう。その刺激に、羽音は思わずピクンと反応した。
「貴方にどうしても見せたい物があって」
「何ですか? 見せたい物って」
「ふふっ。こっちですよ」
そう言うと、瑞稀は羽音の手を引いて、薔薇園の奥へと向かって歩き出す。さり気なく繋がれた手が、羽音は恥ずかしくて顔が火照るのを感じる。瑞稀の手は、大きくて、とても温かい。
薔薇園には、冬だと言うのにたくさんの薔薇が咲いてた。赤色にほんのりピンク色のもの。それから真っ白なものまで、実に様々だ。それでも、どの薔薇もとても綺麗で、うっとりするような神々しい香りを発していた。
「あった、これです」
瑞稀が立ち止まった先には、立派な薔薇の木が数本生えていて、真っ白な大輪の薔薇が咲き乱れていた。その薔薇は、パッと見た限り薔薇には見えない。
ヒラヒラと薄くて可愛らしい花弁が大きく開き、中心には黄色いオシベとメシベが仲睦まじく寄り添っている。そんな純白の薔薇が咲き誇る姿は、美しくもあり、とても可憐でもあった。
「これ、薔薇なんですか?」
「はい。純白の花嫁のドレスみたいな薔薇ですよね」
「純白のドレス……」
「この薔薇の名前は、『ウェディングドレス』っていうんですよ」
薔薇の名前を聞いた瞬間、羽音はハッとして瑞稀の顔を見上げた。
「あの日、貴方の真っ白な羽を見た時、純白なウェディングドレスを着た花嫁に見えたんです」
「え? ……僕が花嫁ですか?」
「はい。とても綺麗な花嫁に見えました」
瑞稀が照れくさそうに笑いながら、握ったままの羽音の手に指を絡めてから強く握った。降りしきる雪の中、体はとうに冷え切っているのに、繋いだ手と頬だけは異常に熱い。
「ぼ、僕は、世の花嫁みたいに綺麗ではありません」
「そんなことありません。貴方は花嫁みたいに綺麗だし、可愛らしいです」
言い終えてから、言われた羽音よりも赤い顔をして、頭を掻きむしる瑞稀は余程恥ずかしかったらしい。しかし、彼の羽音への愛の囁きはとどまることはなかった。
「貴方は可愛いです。本当に、本当に可愛い」
「瑞稀……」
もう一度照れくさそうに笑った後、少しだけ真面目な顔をした瑞稀。その整った横顔に、羽音はドキドキしてしまった。
「だから、インキュバスを抱いた俺でも、貴方の傍にいれば自分が浄化されてく気がします」
「…………」
「こんなに綺麗な貴方になら、俺の心と体を綺麗にしてもらえるんじゃないかって、そう思えてならないんです」
瑞稀が微笑んでから、羽音を抱き締めてくれる。やっぱり瑞稀の腕の中は温かくて、羽音もその背中に腕を回し隙間がないくらいに寄り添った。
「この雪も、『ウェディングドレス』という薔薇も、貴方も、みんな本当に綺麗です」
「瑞稀……」
「だから、俺は貴方にこの薔薇を見せてあげたかった。貴方みたいに、可憐で綺麗だったから」
雪が深々と降り積もり、二人には近くにある湖面が揺れる音しか聞こえてこない。
もしかしたら、この世界には自分達しかいないのかもしれない……そう感じるくらいに、静かな夜だった。
「羽音。俺は貴方が好きです」
「……瑞稀……」
それは昨日、拒絶したばかりの言葉だった。嬉しいはずの言葉が、羽音の胸を知らず、痛める。
「俺は、羽音に初めて会ったあの瞬間から、貴方に強く惹かれました」
瑞稀は少しだけ苦しそうに囁いた。
「好き……羽音が大好き……」
その瞬間、心臓が大きく拍動を打ち、背中をゾワゾワッと何かが駆け抜ける感覚に襲われる。異常に背中が熱くて、痛いくらいだ。
……来る……またあの感覚だ……!
咄嗟に恐怖を感じた羽音は、瑞稀にしがみついた。
「え? 羽音? どうしたんですか?」
「来る……来そう……」
「羽音? 大丈夫ですか?」
不安になった瑞稀が、羽音をそっと自分から体を離して、顔を覗き込んだ。その羽音の顔は酷く何かに怯えていて、今にも泣きそうな顔をしている。
「来る、ねぇ、来ちゃう……んぁ、あ、あぁぁぁ!」
羽音が小さく悲鳴を上げるのと同時に、その背中からはキャソックを切り裂いて、真っ白くて、大きな片羽が再び姿を現した。
「純白の……片羽だ……」
瑞稀が呆然と呟く。
その純白な片羽にたくさんの粉雪が舞い降りて、キラキラと眩い光を放つ。それはまるで、今二人の目の前にある純白の薔薇、『ウェディングドレス』のようだった。
「羽音、綺麗です」
瑞稀は、優しく羽音を抱き締めた。
「え?」
「寒いから……瑞稀が温めて?」
恥ずかしさのあまり、頬が火照るのを感じた羽音は少しだけ俯いてしまう。でも、今日だけは素直で可愛い羽音でいたいと思ったのだ。だから、羽音は勇気を振り絞って、潤んだ瞳で瑞稀を見上げる。
瑞稀の前髪に雪の結晶が付いて、それが水滴になる。そのあまりの色香に、羽音はドキドキしてしまった。
「いいですよ」
フワリと、瑞稀が自分のコートで羽音を包み込んでくれる。
「俺が貴方を温めてあげます」
「瑞稀……」
「冷えきった体も。唇も……」
「ん、ん……」
瑞稀の唇が、冷たくなった羽音の唇に、まるで真綿のように優しく重なった。
しばらくの間、互いの唇を堪能してから、名残惜しそうに離れる。二人は甘い吐息を洩らした。それは白い結晶となり、キラキラと輝いて見える。
瑞稀は、冷えきった羽音の手を、自分の頬に当てて温めてくれた。
「あったかい」
羽音が呟けば、その手に唇を押し当てられた後に、ペロッと指を舐められてしまう。その刺激に、羽音は思わずピクンと反応した。
「貴方にどうしても見せたい物があって」
「何ですか? 見せたい物って」
「ふふっ。こっちですよ」
そう言うと、瑞稀は羽音の手を引いて、薔薇園の奥へと向かって歩き出す。さり気なく繋がれた手が、羽音は恥ずかしくて顔が火照るのを感じる。瑞稀の手は、大きくて、とても温かい。
薔薇園には、冬だと言うのにたくさんの薔薇が咲いてた。赤色にほんのりピンク色のもの。それから真っ白なものまで、実に様々だ。それでも、どの薔薇もとても綺麗で、うっとりするような神々しい香りを発していた。
「あった、これです」
瑞稀が立ち止まった先には、立派な薔薇の木が数本生えていて、真っ白な大輪の薔薇が咲き乱れていた。その薔薇は、パッと見た限り薔薇には見えない。
ヒラヒラと薄くて可愛らしい花弁が大きく開き、中心には黄色いオシベとメシベが仲睦まじく寄り添っている。そんな純白の薔薇が咲き誇る姿は、美しくもあり、とても可憐でもあった。
「これ、薔薇なんですか?」
「はい。純白の花嫁のドレスみたいな薔薇ですよね」
「純白のドレス……」
「この薔薇の名前は、『ウェディングドレス』っていうんですよ」
薔薇の名前を聞いた瞬間、羽音はハッとして瑞稀の顔を見上げた。
「あの日、貴方の真っ白な羽を見た時、純白なウェディングドレスを着た花嫁に見えたんです」
「え? ……僕が花嫁ですか?」
「はい。とても綺麗な花嫁に見えました」
瑞稀が照れくさそうに笑いながら、握ったままの羽音の手に指を絡めてから強く握った。降りしきる雪の中、体はとうに冷え切っているのに、繋いだ手と頬だけは異常に熱い。
「ぼ、僕は、世の花嫁みたいに綺麗ではありません」
「そんなことありません。貴方は花嫁みたいに綺麗だし、可愛らしいです」
言い終えてから、言われた羽音よりも赤い顔をして、頭を掻きむしる瑞稀は余程恥ずかしかったらしい。しかし、彼の羽音への愛の囁きはとどまることはなかった。
「貴方は可愛いです。本当に、本当に可愛い」
「瑞稀……」
もう一度照れくさそうに笑った後、少しだけ真面目な顔をした瑞稀。その整った横顔に、羽音はドキドキしてしまった。
「だから、インキュバスを抱いた俺でも、貴方の傍にいれば自分が浄化されてく気がします」
「…………」
「こんなに綺麗な貴方になら、俺の心と体を綺麗にしてもらえるんじゃないかって、そう思えてならないんです」
瑞稀が微笑んでから、羽音を抱き締めてくれる。やっぱり瑞稀の腕の中は温かくて、羽音もその背中に腕を回し隙間がないくらいに寄り添った。
「この雪も、『ウェディングドレス』という薔薇も、貴方も、みんな本当に綺麗です」
「瑞稀……」
「だから、俺は貴方にこの薔薇を見せてあげたかった。貴方みたいに、可憐で綺麗だったから」
雪が深々と降り積もり、二人には近くにある湖面が揺れる音しか聞こえてこない。
もしかしたら、この世界には自分達しかいないのかもしれない……そう感じるくらいに、静かな夜だった。
「羽音。俺は貴方が好きです」
「……瑞稀……」
それは昨日、拒絶したばかりの言葉だった。嬉しいはずの言葉が、羽音の胸を知らず、痛める。
「俺は、羽音に初めて会ったあの瞬間から、貴方に強く惹かれました」
瑞稀は少しだけ苦しそうに囁いた。
「好き……羽音が大好き……」
その瞬間、心臓が大きく拍動を打ち、背中をゾワゾワッと何かが駆け抜ける感覚に襲われる。異常に背中が熱くて、痛いくらいだ。
……来る……またあの感覚だ……!
咄嗟に恐怖を感じた羽音は、瑞稀にしがみついた。
「え? 羽音? どうしたんですか?」
「来る……来そう……」
「羽音? 大丈夫ですか?」
不安になった瑞稀が、羽音をそっと自分から体を離して、顔を覗き込んだ。その羽音の顔は酷く何かに怯えていて、今にも泣きそうな顔をしている。
「来る、ねぇ、来ちゃう……んぁ、あ、あぁぁぁ!」
羽音が小さく悲鳴を上げるのと同時に、その背中からはキャソックを切り裂いて、真っ白くて、大きな片羽が再び姿を現した。
「純白の……片羽だ……」
瑞稀が呆然と呟く。
その純白な片羽にたくさんの粉雪が舞い降りて、キラキラと眩い光を放つ。それはまるで、今二人の目の前にある純白の薔薇、『ウェディングドレス』のようだった。
「羽音、綺麗です」
瑞稀は、優しく羽音を抱き締めた。
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