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第五章 ウェディングドレス
ウェディングドレス④
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羽音の片羽がバサバサと揺れる度に、雪のように白い羽がヒラヒラと宙を舞う。その光景に目を奪われたかのように、瑞稀が目を細めた。
「綺麗だなぁ……」
そう呟きながら、
「真っ白なウェディングドレスに羽……本当に花嫁みたいですね」
「……は、恥ずかしいから……」
「何で? こんなに可愛いのに」
「可愛くなんてありません」
「そんなことない。羽音は可愛いです」
そう言いながら微笑む瑞稀に、片羽をいたわるようにそっと抱き締められれば……羽音の心は喜びで満たされていく。
──僕も、貴方が好きです。
うっかり口から溢れ出しそうになる言葉を、羽音は必死に飲み込んだ。その言葉は禁句だ。決して口にすることなど、許されるはずがない。そんな事は、羽音が一番わかっていることだ。
それでも、羽音の心の中は瑞稀でいっぱいだった。羽音の心の中にあるティーカップから、『大好き』という甘いミルクが溢れ出してしまっている。それはもう、止めることなどできなかった。
それと同時に葛藤もしてしまう。
瑞稀に隠し事などしたくない。しかし自分には、打ち明けられるほどの記憶すらも持ち合わせていない。そんな自分が怖いと感じるときもあるというのに。そんな自分を、彼は受け入れてくれるのだろうか?
もしも、自分が悪魔と指をさされるほどの悪い過去があったとしたら?
怖い。一体僕は、何者であれば彼を傷つけずに済むんだろう?
嫌われたくないという思いと、全てを受け入れてもらいたいという思い。そんな相反する感情が、まるで天秤のようにカタカタと音をたてて揺れている。
この、どこまでも優しい瑞稀を知れば知る程、その天秤の揺ればどんどん大きくなって行った。
「瑞稀……」
「はい、なんでしょう?」
「ありがとうございます」
「え?」
瑞稀が少しだけ驚いた顔をしながら、羽音の顔を覗き込んだ。
「ありがとう。凄く……嬉しいです……」
「ふふっ。照れちゃいますよ」
瑞稀があまりにも無邪気に笑うものだから、羽音はツイッと少しだけ背伸びをして、瑞稀の唇に自分の唇を重ね合わせた。
羽音は知らなかった。キスがこんなにも気持ちがいいものだということも、抱き締められることが、こんなにも幸せで満たされるものだということも。
「羽音……大好きです……」
「僕も、僕も瑞稀が好き……」
──あ、言っちゃった……。
あれ程我慢していた言葉が、ポロリと口から零れてしまう。それはあまりにも自然で、言った羽音でさえびっくりしてしまう程だった。
「本当ですか? 嬉しい」
「瑞稀……」
瑞稀があまりにも幸せそうに微笑む。でも、その瞳にはたくさんの涙が浮かんでいた。
その涙を見れば、羽音の心がギュッと締め付けられる。
「好きです、羽音」
「僕も、瑞稀が……好きです」
お互い見つめ合って微笑めば、あまりにも照れくさくて、少しだけはにかんだ。
一度その言葉を口にしてしまえば、好き……という思いが、次から次へと溢れ出してきてしまう。もう、止められそうにない。
「照れちゃいますね」
「恥ずかしくて、顔から火がでそう……」
「ふふっ。ねぇ、羽音?」
「はい」
羽音が瑞稀を見上げれば、天から舞い降りてくる粉雪のように、フワリと瑞稀のキスが降ってきた。羽音はその唇を受け止めて、そっと瑞稀の腰に腕を回す。お互いの唇を啄んで、舌を絡め合って……雪さえも蕩けてしまいそうな、熱い熱いキスをした。
「あ、羽が……」
瑞稀が寂しそうな顔をしながら手を伸ばす。
羽音の純白の片羽は白薔薇の花弁に姿を変え、粉雪と共に夜の闇へと消えていった。
教会の釣り鐘が、夕食の時刻を知らせるために、その心地よい音色を学園中に響き渡らせている。
羽音と瑞稀は薔薇園から手を繋いで学生寮へと向かっていたが、建物の明かりが見えた辺りで、そっと手を離した。離れていったその温もりが何だか名残惜しくて、二人で顔を見合わせながら照れくさそうに笑う。
そして、今日はこれで終わり……と自分達を納得させて、最後に口付けを交わした。
「羽音、やっぱり可愛い」
「え?」
「でも、覚えておいてください。俺は、めちゃくちゃエロいんです」
「瑞稀……どうした……ん、ん、ッあ……」
羽音は後ろから羽交い締めにされたまま、やや強引に瑞稀の方を向かされて唇を奪われてしまう。熱い瑞稀の舌がすぐさま侵入してきて、羽音の敏感な上顎を刺激される。それだけで、羽音は意識が遠のくのを感じた。
その後も、舌を絡ませた深い深いキスに、羽音は呆気なく夢中になってしまう。
「あ、んぁ……痛ッ」
最後に鎖骨を強く吸われてから、羽音は瑞稀の唇から解放された。
「俺は、いつだって貴方と結ばれたいって思ってます。どうぞ、ご注意を」
羽音が半ば蕩け切った顔で瑞稀を見上げれば、瑞稀はクスクス笑っていた。
こんなやりとりが、二人にしてみたらクリスマスプレゼントを貰った時みたいに、ドキドキするし、楽しくて仕方ない。
一緒にいられることが、お互い触れ合えることが……心の底から幸せに思えた。
そんな二人だからこそ、周囲に注意を払う余裕はなかったかもしれない。
「毎日毎日、飽きもせずイチャイチャしやがって……」
それは確実に、羽音と瑞稀の仲を引き裂こうとするナイフのように。二人を結び付けている赤い糸を切る瞬間を見計らっていたのだ。
「九条瑞稀は俺の物だ。誰にも渡さない」
学園に潜む悪魔が、今、その翼をはためかせた。
「綺麗だなぁ……」
そう呟きながら、
「真っ白なウェディングドレスに羽……本当に花嫁みたいですね」
「……は、恥ずかしいから……」
「何で? こんなに可愛いのに」
「可愛くなんてありません」
「そんなことない。羽音は可愛いです」
そう言いながら微笑む瑞稀に、片羽をいたわるようにそっと抱き締められれば……羽音の心は喜びで満たされていく。
──僕も、貴方が好きです。
うっかり口から溢れ出しそうになる言葉を、羽音は必死に飲み込んだ。その言葉は禁句だ。決して口にすることなど、許されるはずがない。そんな事は、羽音が一番わかっていることだ。
それでも、羽音の心の中は瑞稀でいっぱいだった。羽音の心の中にあるティーカップから、『大好き』という甘いミルクが溢れ出してしまっている。それはもう、止めることなどできなかった。
それと同時に葛藤もしてしまう。
瑞稀に隠し事などしたくない。しかし自分には、打ち明けられるほどの記憶すらも持ち合わせていない。そんな自分が怖いと感じるときもあるというのに。そんな自分を、彼は受け入れてくれるのだろうか?
もしも、自分が悪魔と指をさされるほどの悪い過去があったとしたら?
怖い。一体僕は、何者であれば彼を傷つけずに済むんだろう?
嫌われたくないという思いと、全てを受け入れてもらいたいという思い。そんな相反する感情が、まるで天秤のようにカタカタと音をたてて揺れている。
この、どこまでも優しい瑞稀を知れば知る程、その天秤の揺ればどんどん大きくなって行った。
「瑞稀……」
「はい、なんでしょう?」
「ありがとうございます」
「え?」
瑞稀が少しだけ驚いた顔をしながら、羽音の顔を覗き込んだ。
「ありがとう。凄く……嬉しいです……」
「ふふっ。照れちゃいますよ」
瑞稀があまりにも無邪気に笑うものだから、羽音はツイッと少しだけ背伸びをして、瑞稀の唇に自分の唇を重ね合わせた。
羽音は知らなかった。キスがこんなにも気持ちがいいものだということも、抱き締められることが、こんなにも幸せで満たされるものだということも。
「羽音……大好きです……」
「僕も、僕も瑞稀が好き……」
──あ、言っちゃった……。
あれ程我慢していた言葉が、ポロリと口から零れてしまう。それはあまりにも自然で、言った羽音でさえびっくりしてしまう程だった。
「本当ですか? 嬉しい」
「瑞稀……」
瑞稀があまりにも幸せそうに微笑む。でも、その瞳にはたくさんの涙が浮かんでいた。
その涙を見れば、羽音の心がギュッと締め付けられる。
「好きです、羽音」
「僕も、瑞稀が……好きです」
お互い見つめ合って微笑めば、あまりにも照れくさくて、少しだけはにかんだ。
一度その言葉を口にしてしまえば、好き……という思いが、次から次へと溢れ出してきてしまう。もう、止められそうにない。
「照れちゃいますね」
「恥ずかしくて、顔から火がでそう……」
「ふふっ。ねぇ、羽音?」
「はい」
羽音が瑞稀を見上げれば、天から舞い降りてくる粉雪のように、フワリと瑞稀のキスが降ってきた。羽音はその唇を受け止めて、そっと瑞稀の腰に腕を回す。お互いの唇を啄んで、舌を絡め合って……雪さえも蕩けてしまいそうな、熱い熱いキスをした。
「あ、羽が……」
瑞稀が寂しそうな顔をしながら手を伸ばす。
羽音の純白の片羽は白薔薇の花弁に姿を変え、粉雪と共に夜の闇へと消えていった。
教会の釣り鐘が、夕食の時刻を知らせるために、その心地よい音色を学園中に響き渡らせている。
羽音と瑞稀は薔薇園から手を繋いで学生寮へと向かっていたが、建物の明かりが見えた辺りで、そっと手を離した。離れていったその温もりが何だか名残惜しくて、二人で顔を見合わせながら照れくさそうに笑う。
そして、今日はこれで終わり……と自分達を納得させて、最後に口付けを交わした。
「羽音、やっぱり可愛い」
「え?」
「でも、覚えておいてください。俺は、めちゃくちゃエロいんです」
「瑞稀……どうした……ん、ん、ッあ……」
羽音は後ろから羽交い締めにされたまま、やや強引に瑞稀の方を向かされて唇を奪われてしまう。熱い瑞稀の舌がすぐさま侵入してきて、羽音の敏感な上顎を刺激される。それだけで、羽音は意識が遠のくのを感じた。
その後も、舌を絡ませた深い深いキスに、羽音は呆気なく夢中になってしまう。
「あ、んぁ……痛ッ」
最後に鎖骨を強く吸われてから、羽音は瑞稀の唇から解放された。
「俺は、いつだって貴方と結ばれたいって思ってます。どうぞ、ご注意を」
羽音が半ば蕩け切った顔で瑞稀を見上げれば、瑞稀はクスクス笑っていた。
こんなやりとりが、二人にしてみたらクリスマスプレゼントを貰った時みたいに、ドキドキするし、楽しくて仕方ない。
一緒にいられることが、お互い触れ合えることが……心の底から幸せに思えた。
そんな二人だからこそ、周囲に注意を払う余裕はなかったかもしれない。
「毎日毎日、飽きもせずイチャイチャしやがって……」
それは確実に、羽音と瑞稀の仲を引き裂こうとするナイフのように。二人を結び付けている赤い糸を切る瞬間を見計らっていたのだ。
「九条瑞稀は俺の物だ。誰にも渡さない」
学園に潜む悪魔が、今、その翼をはためかせた。
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