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第七章 暴かれた真実?
暴かれた真実?③
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「お前さ、九条瑞稀とどういう関係なわけ?」
「え?」
「だから、九条瑞稀だよ。知ってるだろう?」
突然出てきた『瑞稀』の名前に、羽音は思わず目を見開く。この奏というインキュバスは、瑞稀のことを知っているのだろうか……羽音の鼓動が、どんどん速まっていく。
「あいつは俺のもんだ。ちょっかい出すなよ」
「俺のものだって……?」
奏の一方的すぎる言葉に、羽音は思わず顔を顰めた。
「いつも放課後に、図書館とかでイチャイチャしてたみたいだけど、お前たちさぁ、体の関係あるの?」
「…………」
「あるのか聞いてるんだけど?」
目を見開いたまま返答できない羽音を見て、奏が意地悪く笑う。
「へぇ……その反応……まだしてないんだ?」
奏が一気に距離を詰めてくる。何か反応をする間もなく、羽音は顎に指をかけられて強引に上を向かせられた。その瞬間、二人の視線が絡み合い……仮面の隙間から覗く奏の目がゆっくりと細められた。
「近くで見ると、あんためちゃくちゃ綺麗な顔してんね」
「……ふざけるな!」
羽音の両腕が勢いよく奏を突き飛ばした。後方に蹈鞴を踏む奏は、その瞳に明らかな怒りを浮かべていた。
「ふざけるなは、こっちの台詞だよ」
「え?」
「九条瑞稀は俺の物だ」
「なんだと?」
「だってさ……」
いつの間にか、大きな天窓からキラキラと蒼白い月光が差し込み、教会を淡く照らしていた。
こんな夜は、インキュバスの動きが活発になるから注意しなければならない。インキュバスは、無慈悲に若い男から精液を搾り取る、低級な悪魔なのだから。
「九条瑞稀が、初めて抱いたのは俺だよ」
「……え?……」
「俺は、あいつと契ったんだ」
羽音を見つめながら、奏がうっとりとした声を出す。
「……瑞稀と契った……? じゃあ、瑞稀を襲ったインキュバスって……」
「そう、俺だよ。何もあの甘ったるい花の香りに影響を受けるのは、お前だけじゃないんだよ? あぁ、お前は毒されすぎだけどな。お前程じゃないにしても、少なからず影響は受ける」
「…………」
黙って俯いてしまった羽音に、奏は再び近付いてその顔を覗き込んだ。
「ショックか? 瑞稀と体の関係を持った男が、目の前にいて……。しかもその相手がインキュバスだった、なんてな?」
「…………」
「あんだけエロい事をしてたんだから、さっさとヤッちまえば良かったのに。本当に馬鹿だなぁ」
「な、なんで知ってるんだ?」
羽音の顔に困惑の色が濃く浮かぶ。それを見た奏は殊更おかしそうに笑った。
「だって見てたもん。図書館や薔薇園でのエロいキス」
「……なんで……」
「まさか、あの優等生で有名な生徒会長様が、あんなエロいことしてるなんて、思いもしなかったけどな」
ククッと羽音の目の前で、奏が笑う。
「でもさ、あんまりエロいから、見ててめちゃくちゃ興奮したよ」
そっと耳打ちされれば、カァッと顔が火照っていくのを感じた。
「因みにさ、あの写真を掲示板に貼ったのは俺だよ」
「え?」
「だって、面白くないじゃん。俺の瑞稀に手を出すなんて。だから、二人の関係をぶっ壊してやろうと思った」
「なんで……なんでそんな事……」
「瑞稀を自分だけの物にしたいから……に決まってるじゃん? お前なら、この気持ちわかるだろう? それに……」
軽薄そうな声色から、地を這うような低い声になっていく奏の迫力に、その場の空気がピリピリッと張り詰めていくように感じた。
「愛してるとか、ずっと一緒にいたいとか……見てて本当にウザいんだよ。めちゃくちゃ腹が立つ。俺、そういう綺麗事を並べて悦に入ってる奴、大っ嫌い」
奏の言葉に、羽音は恐怖とともに、怒りを覚えた。震えそうになる口元を、力をこめて開いて。そうして出た羽音の声は、それでも小さく震えていた。
「綺麗事なんかじゃ……僕と瑞稀は本気で……」
「ふーん。本気で愛し合ってるって言いたいわけ? 何を捨ててもいいっていう覚悟があるくらいに愛し合ってるって……」
「それは……」
「ズルいよ、お前だけ。なんでお前だけ、瑞稀にそんなに愛されるんだよ?」
「…………」
「あんな写真を貼り出して、お前等を引き離そうとしたって、結局別れそうにないし」
奏がズカズカと羽音の近くに歩み寄り、整った羽音の顔を覗き込んだ。
「瑞稀から手を引かないなら、俺、瑞稀にバラしちゃうよ?」
「な、何を?」
「お前の正体」
「……え?……」
「俺、知ってんだよね。お前がなんなのか」
羽音の震えが、全身に広がっていく。
この悪魔が、自分のことを知っている……?
「来栖羽音。記憶喪失なんだって?」
「…………⁉」
「てことは、自分のことをよく知りもしないまま、瑞稀に言い寄ってたってことだよな」
羽音は罪悪感に胸が痛んだ。
それが不誠実に映るかもしれないということは、自分が一番よくわかっている。それがどうしたと言ってやりたくもあったが、自分のことに関して一切わからないままであることは事実で。
まるで蔑むような、悪魔の笑い声が聞こえる。
「じゃあ、俺が言っちゃおっかなぁ。お前の正体。瑞稀にさ」
「それは! それは駄目だ‼ それだけは……」
羽音は俯いたまま、震える自分の体を抱き締めた。指先は氷のように冷たくて。あんなに瑞稀と重ねた唇が、カタカタと音をたてて震える。
全てが壊れていく……羽音はそんな強い恐怖に襲われた。
「じゃあ、瑞稀から手を引いてくれるよね?」
クスクスっと、耳元で奏が微笑んだ。
「じゃなきゃ言っちゃうよ?」
羽音は俯いたまま、フルフルと首を横に振る。
「お前が誰かと愛し合おうなんて、笑わせんなよ?」
やはり本当の自分は、瑞稀のような青年と愛し合う資格などない、そんな存在なんだろうか。
奏の冷たく言い放った言葉が、まるで薔薇の花の棘のように、羽音の胸に突き刺さった。
「え?」
「だから、九条瑞稀だよ。知ってるだろう?」
突然出てきた『瑞稀』の名前に、羽音は思わず目を見開く。この奏というインキュバスは、瑞稀のことを知っているのだろうか……羽音の鼓動が、どんどん速まっていく。
「あいつは俺のもんだ。ちょっかい出すなよ」
「俺のものだって……?」
奏の一方的すぎる言葉に、羽音は思わず顔を顰めた。
「いつも放課後に、図書館とかでイチャイチャしてたみたいだけど、お前たちさぁ、体の関係あるの?」
「…………」
「あるのか聞いてるんだけど?」
目を見開いたまま返答できない羽音を見て、奏が意地悪く笑う。
「へぇ……その反応……まだしてないんだ?」
奏が一気に距離を詰めてくる。何か反応をする間もなく、羽音は顎に指をかけられて強引に上を向かせられた。その瞬間、二人の視線が絡み合い……仮面の隙間から覗く奏の目がゆっくりと細められた。
「近くで見ると、あんためちゃくちゃ綺麗な顔してんね」
「……ふざけるな!」
羽音の両腕が勢いよく奏を突き飛ばした。後方に蹈鞴を踏む奏は、その瞳に明らかな怒りを浮かべていた。
「ふざけるなは、こっちの台詞だよ」
「え?」
「九条瑞稀は俺の物だ」
「なんだと?」
「だってさ……」
いつの間にか、大きな天窓からキラキラと蒼白い月光が差し込み、教会を淡く照らしていた。
こんな夜は、インキュバスの動きが活発になるから注意しなければならない。インキュバスは、無慈悲に若い男から精液を搾り取る、低級な悪魔なのだから。
「九条瑞稀が、初めて抱いたのは俺だよ」
「……え?……」
「俺は、あいつと契ったんだ」
羽音を見つめながら、奏がうっとりとした声を出す。
「……瑞稀と契った……? じゃあ、瑞稀を襲ったインキュバスって……」
「そう、俺だよ。何もあの甘ったるい花の香りに影響を受けるのは、お前だけじゃないんだよ? あぁ、お前は毒されすぎだけどな。お前程じゃないにしても、少なからず影響は受ける」
「…………」
黙って俯いてしまった羽音に、奏は再び近付いてその顔を覗き込んだ。
「ショックか? 瑞稀と体の関係を持った男が、目の前にいて……。しかもその相手がインキュバスだった、なんてな?」
「…………」
「あんだけエロい事をしてたんだから、さっさとヤッちまえば良かったのに。本当に馬鹿だなぁ」
「な、なんで知ってるんだ?」
羽音の顔に困惑の色が濃く浮かぶ。それを見た奏は殊更おかしそうに笑った。
「だって見てたもん。図書館や薔薇園でのエロいキス」
「……なんで……」
「まさか、あの優等生で有名な生徒会長様が、あんなエロいことしてるなんて、思いもしなかったけどな」
ククッと羽音の目の前で、奏が笑う。
「でもさ、あんまりエロいから、見ててめちゃくちゃ興奮したよ」
そっと耳打ちされれば、カァッと顔が火照っていくのを感じた。
「因みにさ、あの写真を掲示板に貼ったのは俺だよ」
「え?」
「だって、面白くないじゃん。俺の瑞稀に手を出すなんて。だから、二人の関係をぶっ壊してやろうと思った」
「なんで……なんでそんな事……」
「瑞稀を自分だけの物にしたいから……に決まってるじゃん? お前なら、この気持ちわかるだろう? それに……」
軽薄そうな声色から、地を這うような低い声になっていく奏の迫力に、その場の空気がピリピリッと張り詰めていくように感じた。
「愛してるとか、ずっと一緒にいたいとか……見てて本当にウザいんだよ。めちゃくちゃ腹が立つ。俺、そういう綺麗事を並べて悦に入ってる奴、大っ嫌い」
奏の言葉に、羽音は恐怖とともに、怒りを覚えた。震えそうになる口元を、力をこめて開いて。そうして出た羽音の声は、それでも小さく震えていた。
「綺麗事なんかじゃ……僕と瑞稀は本気で……」
「ふーん。本気で愛し合ってるって言いたいわけ? 何を捨ててもいいっていう覚悟があるくらいに愛し合ってるって……」
「それは……」
「ズルいよ、お前だけ。なんでお前だけ、瑞稀にそんなに愛されるんだよ?」
「…………」
「あんな写真を貼り出して、お前等を引き離そうとしたって、結局別れそうにないし」
奏がズカズカと羽音の近くに歩み寄り、整った羽音の顔を覗き込んだ。
「瑞稀から手を引かないなら、俺、瑞稀にバラしちゃうよ?」
「な、何を?」
「お前の正体」
「……え?……」
「俺、知ってんだよね。お前がなんなのか」
羽音の震えが、全身に広がっていく。
この悪魔が、自分のことを知っている……?
「来栖羽音。記憶喪失なんだって?」
「…………⁉」
「てことは、自分のことをよく知りもしないまま、瑞稀に言い寄ってたってことだよな」
羽音は罪悪感に胸が痛んだ。
それが不誠実に映るかもしれないということは、自分が一番よくわかっている。それがどうしたと言ってやりたくもあったが、自分のことに関して一切わからないままであることは事実で。
まるで蔑むような、悪魔の笑い声が聞こえる。
「じゃあ、俺が言っちゃおっかなぁ。お前の正体。瑞稀にさ」
「それは! それは駄目だ‼ それだけは……」
羽音は俯いたまま、震える自分の体を抱き締めた。指先は氷のように冷たくて。あんなに瑞稀と重ねた唇が、カタカタと音をたてて震える。
全てが壊れていく……羽音はそんな強い恐怖に襲われた。
「じゃあ、瑞稀から手を引いてくれるよね?」
クスクスっと、耳元で奏が微笑んだ。
「じゃなきゃ言っちゃうよ?」
羽音は俯いたまま、フルフルと首を横に振る。
「お前が誰かと愛し合おうなんて、笑わせんなよ?」
やはり本当の自分は、瑞稀のような青年と愛し合う資格などない、そんな存在なんだろうか。
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