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第八章 天使になった悪魔
天使になった悪魔②
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屋根にそっと降り立って静かに天窓を開ければ、フワリと温かな暖炉の温もりがハノンを包み込んだ。
「温かい……」
その瞬間、ハノンの目の前が真っ暗になり、意識が遠退くのを感じる。そのままバランスを崩し、天窓から床へと叩きつけられた。
ハノンが落ちた衝撃で、静かな礼拝堂に大きな音が響き渡った。
「あらあら、何事かしら?」
枯葉のように床へと落ちたハノンの近くに、誰かが近付いてくる。恐怖を感じたハノンが体を起こそうとしたけど、ボロボロに傷ついた体では、それは叶わなかった。
──悪魔だと気付かれたら、このまま人間に殺されるかもしれない。でも、それも運命か……。
ハノンの目からは、止めどなく涙が溢れ出し、綺麗に敷かれた赤い絨毯にたくさんの染みができる。それはまるで、地面に落ちた雪が一瞬で消えていくようにも見えた。
本当は、もっともっとやりたい事がたくさんあった。
──誰かを愛し、誰かに愛されたい。
そんな夢物語のような思いが、ハノンの心の支えだったのだ。
「まぁ。こんな真夜中に、こんな綺麗な悪魔が訪問してくるなんて」
「……え?」
ハノンの横に静かに膝まづいた老婆が、そっと手を握り優しく摩ってくれる。その手の温かさにハノンは安堵感に包まれた。
「怪我をしているのね? 可哀想に……」
その慈愛に満ちた優しい声に、ハノンは必死に顔を上げる。
「もう大丈夫よ」
「…………」
ハノンは胸が熱くなるのを感じて、目の前の老婆に縋り付くかのように、皺だらけの骨ばった手を握り返した。老婆の表情は天使のように優しいのに、まるで少女のように可憐にも見える。丸い眼鏡が、彼女の聡明さを更に引き立てていた。
「貴女はシスターですか?」
「そうよ。私はサラ。ミセス・サラよ」
「ミセス・サラ……お願いがあります……」
ミセス・サラの穏やかな笑顔を見た瞬間、ハノンの目からは硝子玉のような涙が再びボロボロと溢れ出す。
「僕は、インキュバスです。でも、でも僕は……誰かを愛し、そして愛されたい。故に、インキュバスの役目を果たす事ができずに、人間界へ追放されました」
ミセス・サラはそんなハノンの話を、少し驚いた顔をしながらも真剣に聞いてくれた。
「僕は、愛する人と以外抱き合いたくなんかない。インキュバスなんてもう嫌だ……生まれ変わりたい。人間に……」
「そう……」
「僕は、心の底から愛した人と結ばれたい……」
「わかった。わかったわ」
ミセス・サラがハノンの背中を、まるで泣いている子供のように摩ってくれた。
「あなた、名前は?」
「僕は……ハノンです」
「そう。素敵な名前ね。綺麗なあなたにぴったりよ」
ミセス・サラは修道服のポケットをゴソゴソと漁り、一つの水晶玉を取り出した。その水晶玉は小さな林檎ほどの大きさで、蝋燭の淡い光を受けてキラキラと輝いている。
「ハノン。今からこの水晶玉に、あなたの中にある悪魔を封じ込めます」
「この水晶玉に……?」
「そう。だから、これからはこの水晶玉を肌身離さず持っていること。そして、何があっても絶対に割らないこと。約束できる?」
「は、はい……約束します」
「ふふっ、いい子ね」
ミセス・サラがまるで歌うかのように何かを唱えて、小瓶に入った聖水をハノンに振りかける。
「う"っ……くっ、んぁ……!」
その瞬間、ハノンの体がまるで熱湯をかけられたかのような熱さに襲われた。その痛みと苦しさに、歯を噛み締めて必死に耐える。そんなハノンの体を、ミセス・サラが優しく撫でた。
「もう少しの我慢よ。頑張って」
どれくらい苦痛に耐えたのだろうか。清らかな雫が落ちたハノンの体は淡く光り出し、ダラダラと血を吹き出し続けていた傷口の痛みが徐々に和らいでいくのを感じる。
「ハノン。あなたは神の洗礼を受けて、『来栖羽音』として生まれ変わるのです。いいですか? 羽音。あなたは、誰かを愛し、そして愛され……幸せになる権利があるのですよ」
まるで夜空に広がる、満天の星に包まれたかのように羽音の体は淡い光を放ち続けた。
「幸せになるのよ。優しい羽音……」
羽音が眠りに落ちる瞬間に、片方しかない背中の真っ黒な羽は、蒼空に浮かぶ雲のように真っ白になり。漆黒の闇夜のように黒かった髪は、クリスマスプレゼンの包み紙のような綺麗な銀色になっていた。
こうして、出来損ないの悪魔は、天使のように美しい人間へと生まれ変わったのだった。
「温かい……」
その瞬間、ハノンの目の前が真っ暗になり、意識が遠退くのを感じる。そのままバランスを崩し、天窓から床へと叩きつけられた。
ハノンが落ちた衝撃で、静かな礼拝堂に大きな音が響き渡った。
「あらあら、何事かしら?」
枯葉のように床へと落ちたハノンの近くに、誰かが近付いてくる。恐怖を感じたハノンが体を起こそうとしたけど、ボロボロに傷ついた体では、それは叶わなかった。
──悪魔だと気付かれたら、このまま人間に殺されるかもしれない。でも、それも運命か……。
ハノンの目からは、止めどなく涙が溢れ出し、綺麗に敷かれた赤い絨毯にたくさんの染みができる。それはまるで、地面に落ちた雪が一瞬で消えていくようにも見えた。
本当は、もっともっとやりたい事がたくさんあった。
──誰かを愛し、誰かに愛されたい。
そんな夢物語のような思いが、ハノンの心の支えだったのだ。
「まぁ。こんな真夜中に、こんな綺麗な悪魔が訪問してくるなんて」
「……え?」
ハノンの横に静かに膝まづいた老婆が、そっと手を握り優しく摩ってくれる。その手の温かさにハノンは安堵感に包まれた。
「怪我をしているのね? 可哀想に……」
その慈愛に満ちた優しい声に、ハノンは必死に顔を上げる。
「もう大丈夫よ」
「…………」
ハノンは胸が熱くなるのを感じて、目の前の老婆に縋り付くかのように、皺だらけの骨ばった手を握り返した。老婆の表情は天使のように優しいのに、まるで少女のように可憐にも見える。丸い眼鏡が、彼女の聡明さを更に引き立てていた。
「貴女はシスターですか?」
「そうよ。私はサラ。ミセス・サラよ」
「ミセス・サラ……お願いがあります……」
ミセス・サラの穏やかな笑顔を見た瞬間、ハノンの目からは硝子玉のような涙が再びボロボロと溢れ出す。
「僕は、インキュバスです。でも、でも僕は……誰かを愛し、そして愛されたい。故に、インキュバスの役目を果たす事ができずに、人間界へ追放されました」
ミセス・サラはそんなハノンの話を、少し驚いた顔をしながらも真剣に聞いてくれた。
「僕は、愛する人と以外抱き合いたくなんかない。インキュバスなんてもう嫌だ……生まれ変わりたい。人間に……」
「そう……」
「僕は、心の底から愛した人と結ばれたい……」
「わかった。わかったわ」
ミセス・サラがハノンの背中を、まるで泣いている子供のように摩ってくれた。
「あなた、名前は?」
「僕は……ハノンです」
「そう。素敵な名前ね。綺麗なあなたにぴったりよ」
ミセス・サラは修道服のポケットをゴソゴソと漁り、一つの水晶玉を取り出した。その水晶玉は小さな林檎ほどの大きさで、蝋燭の淡い光を受けてキラキラと輝いている。
「ハノン。今からこの水晶玉に、あなたの中にある悪魔を封じ込めます」
「この水晶玉に……?」
「そう。だから、これからはこの水晶玉を肌身離さず持っていること。そして、何があっても絶対に割らないこと。約束できる?」
「は、はい……約束します」
「ふふっ、いい子ね」
ミセス・サラがまるで歌うかのように何かを唱えて、小瓶に入った聖水をハノンに振りかける。
「う"っ……くっ、んぁ……!」
その瞬間、ハノンの体がまるで熱湯をかけられたかのような熱さに襲われた。その痛みと苦しさに、歯を噛み締めて必死に耐える。そんなハノンの体を、ミセス・サラが優しく撫でた。
「もう少しの我慢よ。頑張って」
どれくらい苦痛に耐えたのだろうか。清らかな雫が落ちたハノンの体は淡く光り出し、ダラダラと血を吹き出し続けていた傷口の痛みが徐々に和らいでいくのを感じる。
「ハノン。あなたは神の洗礼を受けて、『来栖羽音』として生まれ変わるのです。いいですか? 羽音。あなたは、誰かを愛し、そして愛され……幸せになる権利があるのですよ」
まるで夜空に広がる、満天の星に包まれたかのように羽音の体は淡い光を放ち続けた。
「幸せになるのよ。優しい羽音……」
羽音が眠りに落ちる瞬間に、片方しかない背中の真っ黒な羽は、蒼空に浮かぶ雲のように真っ白になり。漆黒の闇夜のように黒かった髪は、クリスマスプレゼンの包み紙のような綺麗な銀色になっていた。
こうして、出来損ないの悪魔は、天使のように美しい人間へと生まれ変わったのだった。
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