天使と悪魔が恋に堕ちて

舞々

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第八章 天使になった悪魔

天使になった悪魔⑤

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「聖水を……」
 羽音が体を起こそうとすると、すぐに瑞稀に捕まってしまい、再びベッドへと連れ戻されてしまった。
「聖水ってなんですか?」
 瑞稀が不思議そうに首を傾げる。


「……えっと………」
「教えてください」
 引き下がりそうもない瑞稀に、羽音は溜息をついた。


「……瑞稀に会うと体に不調をきたすと相談したら、ミセス・サラがくれたんです。今思えば……戒めの白百合が、インキュバスに与える影響を無効化するものなんだと思います」
「……なるほど……」
「だから、聖水を飲まないと……」
「飲まないと?」
 瑞稀が悪戯っ子のように目を輝かせながら、羽音の顔を覗き込んだ。
「飲まないと、どうなるんですか?」


 なんて意地悪なんだろう……と羽音は思う。
 本当はわかってるくせに、こんなことを聞くなんて……。でも、言ってあげたいと思う羽音もいる。
 自分の口から紡いだ言葉で、瑞稀を誘惑してみたい。快楽の世界へ突き落してしまいたい。結局、羽音はインキュバスなのかもしれない。


「聖水を飲まないと、瑞稀が欲しくて仕方なくなる……」
 大きな瞳を潤ませて、瑞稀の瞳を覗き込む。首にそっと腕を回して、その体を抱き寄せた。
「抱いて欲しくて、めちゃくちゃにして欲しくて……狂いそうになる。インキュバスの本能が、覚醒していくのを感じるんです」
 ペロッといやらしく瑞稀の唇を舐めた。それに、瑞稀がピクンと反応する。それから、優しく羽音の頬を撫でてくれた。


「なら、そんなもの飲まないでください。俺は見たい。本当の貴方の姿を。ねぇ、見せて?」
「むぅ……あ、あん……はぁ……」
 繰り返される深い深い口付けに、羽音はどんどん追い詰められてしまう。ただ夢中で、瑞稀のキスを受け止めた。
 ベッドに組み敷かれた羽音は、どんどん濃くなっていく白百合の香りを、思いきり吸い込んだ。
「いい匂い……」
 羽音はうっとりと目を細める。もう、『戒めの白百合』に飲み込まれて、羽音の残された理性も脆い硝子のように砕け散ってしまった。


「瑞稀、瑞稀……お願い……中には出さないで……」
「え?」
「体内に精液を吸収してしまうと……インキュバスに戻っちゃう……だから、中には出さないで……」
「インキュバスに?」


 その言葉に、羽音がピクンと反応する。もしかして、あまりにも淫乱な自分を見て、ガッカリしてしまったのだろうか……。強い強い不安が羽音を襲った。


「瑞稀は……こんな淫らな子は嫌いですか?」
「……いいえ。大好きです」
 その言葉に、羽音の心は満たされる。


「だから、もっと羽音を可愛がってもいいですか?」
「うん……」
 目の前にある瑞稀の手を掴めば、ギュッと握り返してくれた。
「もっと、ねぇ、もっと……瑞稀、瑞稀……」
「あんまり煽らないでください。羽音を壊してしまうかもしれません」
「いいよ、それでも……」
 白百合の、甘ったるい香りが小部屋に充満し、羽音はむせ返りそうなった。


「羽音、気持ちいいです。好きな人と抱き合うって、こんなに気持ちいいんですね。羽音……可愛い……可愛い。んん、ん……はぁ……」
「瑞稀、お願い……抱き締めて」
 羽音は必死に瑞稀に向かって両手を広げる。
「羽音……」
「抱き締めてほしい……」
 瑞稀が泣きそうな顔で微笑んだ。


「わかりました。おいで、羽音」
 瑞稀は羽音をギュッと抱き締めてくれて……そのまま二人は、結ばれた。
 瑞稀の甘い口付けを感じながら、激しく体を揺さぶられる。そのまま羽音は意識を手放した。


 窓の外には、白い蝶々がヒラヒラと舞い落ちる、静かな静かな夜……。二人は、身も心も結ばれたのだった。
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