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第九章 新しい朝
新しい朝②
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「瑞稀、僕はね……インキュバスの長の孫として生まれました」
羽音は、瑞稀にそっと語り掛ける。昨日の晩に思い出したこと、全てを彼に打ち明けよう……そう心に決めていた。
「インキュバスは、今まで奏がしてきたように、不特定多数の生殖能力のある若者を襲い、その精液を搾り取ります。僕達インキュバスは、精液がなければ生きていけないからです。……でも、僕にはできなかった」
羽音は唇を噛み締めたまま俯いた。打ち明けると決めたものの、言葉が漏れるたびに胸が締め付けられそうだった。それでも必死に、言葉を紡いでいく。
「僕は、インキュバスのくせに、愛してもいない人と契る事ができなかったんです。僕は、本当に心から愛する人とだけ抱き合いたかった」
「羽音……」
「僕は、長の孫のくせに出来損ないのインキュバスでした。だから、片羽をもぎ取られて、人間界に追放されたのです」
「片羽をもぎり取られて……だから、貴方には片羽しかないんですね」
瑞稀が納得したように何度か頷く。羽音は、そんな瑞稀に笑いかけた。
「そして行き着いたのがここでした。僕はミセス・サラの力で、来栖羽音として生まれ変わったんです」
羽音の心に迷いなんてなかった。
これで、裏返しにされていた、自分のカードが全て表になった。己のことを思い出し、それを愛する人に打ち明けられた。
「僕は、瑞稀が自分以外のインキュバスを抱いていたって構いません。汚いとも思わない」
「羽音、羽音……」
瑞稀が涙をうっすらと浮かべながら懸命に微笑む。その笑顔に、羽音も微笑み返した。
──君もずっとずっと怯えてきたんだね。でも、大丈夫。これからは、僕がいる。
「瑞稀が僕の全てを受け入れてくれるのなら、僕も君の全てを受け入れます。僕は、瑞稀を愛してます」
その瞬間、羽音は瑞稀に抱き締められた。強く強く……。あまりの力強さに、背骨が折れるのではないか、と不安になるくらいだった。
「ありがとう、羽音」
瑞稀がまるで真綿に触れるかのように、優しいキスをくれた。
それでも、昨夜キスをし過ぎた唇は、腫れぼったくてズキッと痛む。そんな事さえ、愛おしかった。
「羽音、朝食に急ぎましょう」
「はい。きっと無断外出なんてしたから、ミスター・レンが怒ってるでしょうね」
「きっとそうですよね。あーあ、また謹慎処分かな……」
「さあ、わかりません。僕は優等生だったので、無断外泊なんてしたことがないし」
青ざめた顔をしている瑞稀を見て、羽音がクスクスと笑った。
「大丈夫ですよ。一緒に怒られましょう」
「羽音、貴方やけに男らしいですね? 昨夜はあんなに可愛かったのに……」
それを聞いた羽音は、また赤面してしまった。
「僕は、瑞稀となら怖いものなんてありません」
顔を真っ赤にしながら歩き出す羽音を瑞稀は後ろから抱き締めて、その首筋に口付けた。
「俺も、羽音と一緒なら、怖いものは何もありませんよ」
羽音は、瑞稀にそっと語り掛ける。昨日の晩に思い出したこと、全てを彼に打ち明けよう……そう心に決めていた。
「インキュバスは、今まで奏がしてきたように、不特定多数の生殖能力のある若者を襲い、その精液を搾り取ります。僕達インキュバスは、精液がなければ生きていけないからです。……でも、僕にはできなかった」
羽音は唇を噛み締めたまま俯いた。打ち明けると決めたものの、言葉が漏れるたびに胸が締め付けられそうだった。それでも必死に、言葉を紡いでいく。
「僕は、インキュバスのくせに、愛してもいない人と契る事ができなかったんです。僕は、本当に心から愛する人とだけ抱き合いたかった」
「羽音……」
「僕は、長の孫のくせに出来損ないのインキュバスでした。だから、片羽をもぎ取られて、人間界に追放されたのです」
「片羽をもぎり取られて……だから、貴方には片羽しかないんですね」
瑞稀が納得したように何度か頷く。羽音は、そんな瑞稀に笑いかけた。
「そして行き着いたのがここでした。僕はミセス・サラの力で、来栖羽音として生まれ変わったんです」
羽音の心に迷いなんてなかった。
これで、裏返しにされていた、自分のカードが全て表になった。己のことを思い出し、それを愛する人に打ち明けられた。
「僕は、瑞稀が自分以外のインキュバスを抱いていたって構いません。汚いとも思わない」
「羽音、羽音……」
瑞稀が涙をうっすらと浮かべながら懸命に微笑む。その笑顔に、羽音も微笑み返した。
──君もずっとずっと怯えてきたんだね。でも、大丈夫。これからは、僕がいる。
「瑞稀が僕の全てを受け入れてくれるのなら、僕も君の全てを受け入れます。僕は、瑞稀を愛してます」
その瞬間、羽音は瑞稀に抱き締められた。強く強く……。あまりの力強さに、背骨が折れるのではないか、と不安になるくらいだった。
「ありがとう、羽音」
瑞稀がまるで真綿に触れるかのように、優しいキスをくれた。
それでも、昨夜キスをし過ぎた唇は、腫れぼったくてズキッと痛む。そんな事さえ、愛おしかった。
「羽音、朝食に急ぎましょう」
「はい。きっと無断外出なんてしたから、ミスター・レンが怒ってるでしょうね」
「きっとそうですよね。あーあ、また謹慎処分かな……」
「さあ、わかりません。僕は優等生だったので、無断外泊なんてしたことがないし」
青ざめた顔をしている瑞稀を見て、羽音がクスクスと笑った。
「大丈夫ですよ。一緒に怒られましょう」
「羽音、貴方やけに男らしいですね? 昨夜はあんなに可愛かったのに……」
それを聞いた羽音は、また赤面してしまった。
「僕は、瑞稀となら怖いものなんてありません」
顔を真っ赤にしながら歩き出す羽音を瑞稀は後ろから抱き締めて、その首筋に口付けた。
「俺も、羽音と一緒なら、怖いものは何もありませんよ」
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