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第九章 新しい朝
新しい朝③
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「二人で仲良く無断外泊とはな……」
食堂で待ち構えていたミスター・レンが、羽音と瑞稀を見て苦笑いをしている。
「天下の生徒会長様が、謹慎開けて早々、随分大胆じゃないか?」
「は、はい。すみません!」
羽音が深々と頭を下げている横で、瑞稀はスンと涼しい顔をしている。
「九条君は、反省してないのか?」
「しています。申し訳ありませんでした。でも……」
瑞稀も羽音に倣い、頭を下げる。
「羽音は俺の物ですから、もうちょっかいは出さないでください」
真面目な顔をしてミスター・レンに言い放った。
「ほう……昨夜は、随分熱い夜を過ごしたようだな……」
「そうですね。お陰様で、今日は体が気怠いです」
「成る程、成る程……」
お互いに、和やかな笑顔で話しているものの、その笑顔は心の底から笑っているように思えず……羽音はハラハラしてしまった。
「まぁ、もうミセス・サラもお二人のことは公認のようなので、今回はお咎めなしだそうだ」
「え? 本当ですか?」
羽音の表情が一瞬で明るくなる。それを見て、ミスター・レンが大きな溜息をついた。
「だからと言って、あんまり羽目を外してイチャイチャしないように」
「あ、はい。わかりました」
顔を真っ赤にしている羽音の横で、瑞稀は相変わらず「我関せず」と言った顔をしている。
「わかりましたか? 九条君。あんまり来栖君にちょっかい出さないように」
それを聞いた瑞稀がニヤリと不敵に笑う。
「善処はしますが、何せ俺の恋人は可愛いので」
「君って人は……」
ミスター・レンは顔を引き攣らせた。
「とりあえず、これ以上学園の風紀を乱すような行為は慎むように。今後も、十分気を付けてください」
打って変わって、ミスター・レンが真面目な顔をして二人を見つめた。
「瑞稀は、なんであんなにミスター・レンに歯向かうんですか?」
「え?」
放課後、二人で待ち合わせをしていた渡り廊下からは、湖に沈んでいく夕日がよく見える。一日の終わりを知らせる鐘の音が学園中に鳴り響き、古い教会に蝋燭の火が灯された。
園庭には大きなモミの木が運び込まれ、庭師たちが様々なクリスマスの飾り付けをしている。そのオーナメントがキラキラと光り輝いていて、とても綺麗だ。段々とクリスマス色に染まっていく学園を見ることが、羽音は楽しくて仕方なかった。
「はぁ……無自覚に周りの男を振り回すなんて、本当に天然って怖い……」
「ん? 何ですか?」
「なんでもありません」
鈍感な羽音は、まさか瑞稀が自分の恋人を守る為に、ミスター・レンに牽制をしたとは思いもしない。そんな羽音を見た瑞稀が大きな溜息をついている。
「それにしても、ミセス・サラは何で僕達を容認してくれるんでしょうか? いくら彼女が優しく理解のある御仁とは言え、こんなに迷惑をかけたのに…」
羽音が、渡り廊下の手摺にもたれながら首を傾げた。そんな姿も、瑞稀には無邪気で可愛らしく映るのだろう。自然と口角が上がっていく。
「俺の予想なんですが、ミセス・サラは、過去にインキュバスと縁があったのでは?」
「ミセス・サラが?」
「はい。まぁ、あくまでも想像なんですが……」
瑞稀が、遠くを見つめながらポツリと呟く。
「羽音も、そして蓮見奏のことも。彼女ならインキュバスひとりを葬ることぐらい造作もないはず……。でも、良き悪しきに問わず、悪魔の力を封じて人として生かした。ミセス・サラはインキュバスに、何か強い思い入れがあるような気がしてなりません」
「……そう言われると確かに……」
「憶測の域を、出ませんけどね」
羽音はずっと不安だった。鼻の奥がツンとしたから静かに瑞稀を見上げる。そこには優しい笑みを浮かべた瑞稀がいた。
「でも、奏が瑞稀を誘惑してきたら、君はまた、奏に欲情してしまうのでしょうか?」
「え?」
「君は、悪魔を魅了する『戒めの白百合』だから」
拗ねた子供みたいに下唇を尖らせる羽音を見て、瑞稀はびっくりしたように目を見開く。
「嫌なんです。君が、僕以外の人間を触ることが……」
常に平常心を保っているように見える羽音の、目まぐるしく変わる表情に瑞稀は釘付けになってしまっている。
「もしかして、羽音……ヤキモチ妬いているの?」
「はい⁉ ま、まさか、ヤキモチなんて⁉」
分かり易く狼狽える羽音を見て、瑞稀が嬉しそうに笑っている。
「大丈夫ですよ。俺はあの時抱いたインキュバスの顔さえ覚えていないんです。ただとても怖かった記憶しかない」
「瑞稀……あ、あの、変なこと言ってごめんなさい」
「いいえ。大丈夫です。それに僕は、羽音以外の人に欲情することなんてありません」
「え……?」
「貴方以外の人を抱く事なんて、一生ありませんから。だから、覚悟していてくださいね」
「瑞稀……んッ」
瑞稀が笑いながら羽音に不意打ちのような口付けをすれば、その場にいた生徒が一斉に黄色い悲鳴を上げて渡り廊下が騒然となる。
「せ、生徒会長様と九条君が、く、口付けを……」
「ヤバいヤバいヤバい‼」
「なんて神々しい……‼」
その騒ぎを聞きつけたミスター・レンが、血相を変えて瑞稀を叱りにきたなんて……言うまでもないだろう。
食堂で待ち構えていたミスター・レンが、羽音と瑞稀を見て苦笑いをしている。
「天下の生徒会長様が、謹慎開けて早々、随分大胆じゃないか?」
「は、はい。すみません!」
羽音が深々と頭を下げている横で、瑞稀はスンと涼しい顔をしている。
「九条君は、反省してないのか?」
「しています。申し訳ありませんでした。でも……」
瑞稀も羽音に倣い、頭を下げる。
「羽音は俺の物ですから、もうちょっかいは出さないでください」
真面目な顔をしてミスター・レンに言い放った。
「ほう……昨夜は、随分熱い夜を過ごしたようだな……」
「そうですね。お陰様で、今日は体が気怠いです」
「成る程、成る程……」
お互いに、和やかな笑顔で話しているものの、その笑顔は心の底から笑っているように思えず……羽音はハラハラしてしまった。
「まぁ、もうミセス・サラもお二人のことは公認のようなので、今回はお咎めなしだそうだ」
「え? 本当ですか?」
羽音の表情が一瞬で明るくなる。それを見て、ミスター・レンが大きな溜息をついた。
「だからと言って、あんまり羽目を外してイチャイチャしないように」
「あ、はい。わかりました」
顔を真っ赤にしている羽音の横で、瑞稀は相変わらず「我関せず」と言った顔をしている。
「わかりましたか? 九条君。あんまり来栖君にちょっかい出さないように」
それを聞いた瑞稀がニヤリと不敵に笑う。
「善処はしますが、何せ俺の恋人は可愛いので」
「君って人は……」
ミスター・レンは顔を引き攣らせた。
「とりあえず、これ以上学園の風紀を乱すような行為は慎むように。今後も、十分気を付けてください」
打って変わって、ミスター・レンが真面目な顔をして二人を見つめた。
「瑞稀は、なんであんなにミスター・レンに歯向かうんですか?」
「え?」
放課後、二人で待ち合わせをしていた渡り廊下からは、湖に沈んでいく夕日がよく見える。一日の終わりを知らせる鐘の音が学園中に鳴り響き、古い教会に蝋燭の火が灯された。
園庭には大きなモミの木が運び込まれ、庭師たちが様々なクリスマスの飾り付けをしている。そのオーナメントがキラキラと光り輝いていて、とても綺麗だ。段々とクリスマス色に染まっていく学園を見ることが、羽音は楽しくて仕方なかった。
「はぁ……無自覚に周りの男を振り回すなんて、本当に天然って怖い……」
「ん? 何ですか?」
「なんでもありません」
鈍感な羽音は、まさか瑞稀が自分の恋人を守る為に、ミスター・レンに牽制をしたとは思いもしない。そんな羽音を見た瑞稀が大きな溜息をついている。
「それにしても、ミセス・サラは何で僕達を容認してくれるんでしょうか? いくら彼女が優しく理解のある御仁とは言え、こんなに迷惑をかけたのに…」
羽音が、渡り廊下の手摺にもたれながら首を傾げた。そんな姿も、瑞稀には無邪気で可愛らしく映るのだろう。自然と口角が上がっていく。
「俺の予想なんですが、ミセス・サラは、過去にインキュバスと縁があったのでは?」
「ミセス・サラが?」
「はい。まぁ、あくまでも想像なんですが……」
瑞稀が、遠くを見つめながらポツリと呟く。
「羽音も、そして蓮見奏のことも。彼女ならインキュバスひとりを葬ることぐらい造作もないはず……。でも、良き悪しきに問わず、悪魔の力を封じて人として生かした。ミセス・サラはインキュバスに、何か強い思い入れがあるような気がしてなりません」
「……そう言われると確かに……」
「憶測の域を、出ませんけどね」
羽音はずっと不安だった。鼻の奥がツンとしたから静かに瑞稀を見上げる。そこには優しい笑みを浮かべた瑞稀がいた。
「でも、奏が瑞稀を誘惑してきたら、君はまた、奏に欲情してしまうのでしょうか?」
「え?」
「君は、悪魔を魅了する『戒めの白百合』だから」
拗ねた子供みたいに下唇を尖らせる羽音を見て、瑞稀はびっくりしたように目を見開く。
「嫌なんです。君が、僕以外の人間を触ることが……」
常に平常心を保っているように見える羽音の、目まぐるしく変わる表情に瑞稀は釘付けになってしまっている。
「もしかして、羽音……ヤキモチ妬いているの?」
「はい⁉ ま、まさか、ヤキモチなんて⁉」
分かり易く狼狽える羽音を見て、瑞稀が嬉しそうに笑っている。
「大丈夫ですよ。俺はあの時抱いたインキュバスの顔さえ覚えていないんです。ただとても怖かった記憶しかない」
「瑞稀……あ、あの、変なこと言ってごめんなさい」
「いいえ。大丈夫です。それに僕は、羽音以外の人に欲情することなんてありません」
「え……?」
「貴方以外の人を抱く事なんて、一生ありませんから。だから、覚悟していてくださいね」
「瑞稀……んッ」
瑞稀が笑いながら羽音に不意打ちのような口付けをすれば、その場にいた生徒が一斉に黄色い悲鳴を上げて渡り廊下が騒然となる。
「せ、生徒会長様と九条君が、く、口付けを……」
「ヤバいヤバいヤバい‼」
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