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第十一章 悲しい別れ
悲しい別れ①
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「来栖君、来栖君。ちょっといいですか?」
「はい?」
それは、クリスマスイブの前日の夜。雪が深々と降りしきる、寒い寒い日だった。
ミスター・レンが夜中だというのに、羽音の部屋の扉を叩いた。
「なんだろう……」
羽音は強い不安を感じながら、そっと扉を開ける。
「どうしたんですか? ミスター・レン」
「こんな夜中に、すまない。ミセス・サラが……」
「え?」
その鬼気迫るミスター・レンの雰囲気に、羽音の胸が騒めいた。
「ミセス・サラがどうしたんですか?」
「つい先程、容体が急変して……非常に危険な状態だ」
「何ですって?」
「最後に、君に会いたがっているから……早く!」
「わかりました」
羽音は慌ててキャソックに着替えて、急いで部屋を飛び出した。
「あ、来栖君。よく来てくださいました」
「ミスター・ハル。ミセス・サラの容体は?」
「とりあえず、中に入ってください」
ミセス・サラの部屋には、校医であるミスター・ハルがいて、羽音を彼女のベッドサイドまで案内してくれる。
部屋の奥のベッドには、目を閉じたミセス・サラが横たわっていた。その姿は、羽音が知っている彼女ではなかった。長い間闘病生活を送ってきたためか、体は痩せ細り、疲れ切った表情をしている。それでも、その優しい雰囲気は変わらなかった。
「ミセス・サラ。羽音です」
静かにベッドの脇にしゃがみ込み、その細い手をそっと握る。その手は、とても温かかった。
「あぁ、羽音……よく来てくれました」
疲れ切った顔をしながらも優しく微笑んでくれる。弱々しい力で、羽音の手をそっと握り返してくれた。
「羽音、そろそろ神のお迎えが来そうです」
「何を言ってるんですか? 気を強く持ってください」
「フフッ、ありがとう。でもわかるのよ。私はそろそろ死んでしまう」
「そんな……」
悲しむ羽音を見たミセス・サラがフワリと微笑む。その笑顔は、まるで天使のように優しいものだった。
「羽音……貴方は、優しくて、賢くて、綺麗な子よ。どうか、幸せになってね」
「ミセス・サラ……」
「あらあら、泣かないで」
羽音の頬を伝った涙を、ミセス・サラが拭ってくれる。
「ハクは星屑になってしまったけど、きっと貴方は幸せになれるわ」
「嫌です。僕は貴女がいなければ何もできない……お願いします。僕を置いて行かないでください」
「まぁまぁ、困った子ね」
ミセス・サラが小さな声でクスクスと笑う。そんなミセス・サラの手を握り締め、羽音は肩を震わせた。
「インキュバスだって誰かを愛し、愛される権利を持っている。だから、貴方には幸せになって欲しい……」
「いいえ。貴女がいなければ、僕は不幸だ」
「大丈夫。貴方には九条君がいるわ。彼を信じて、ただ彼を愛し抜けばいい。そしたらね、きっと、幸せが訪れるでしょう。それにね、私最後に遺言を残しておいたから。本当にこれが私にできる最後の事だけど……きっと、大丈夫よ、羽音」
それが、羽音が見たミセス・サラの最後の笑顔だった。
その日の深夜、ミセス・サラは天国へと旅立った。
「はい?」
それは、クリスマスイブの前日の夜。雪が深々と降りしきる、寒い寒い日だった。
ミスター・レンが夜中だというのに、羽音の部屋の扉を叩いた。
「なんだろう……」
羽音は強い不安を感じながら、そっと扉を開ける。
「どうしたんですか? ミスター・レン」
「こんな夜中に、すまない。ミセス・サラが……」
「え?」
その鬼気迫るミスター・レンの雰囲気に、羽音の胸が騒めいた。
「ミセス・サラがどうしたんですか?」
「つい先程、容体が急変して……非常に危険な状態だ」
「何ですって?」
「最後に、君に会いたがっているから……早く!」
「わかりました」
羽音は慌ててキャソックに着替えて、急いで部屋を飛び出した。
「あ、来栖君。よく来てくださいました」
「ミスター・ハル。ミセス・サラの容体は?」
「とりあえず、中に入ってください」
ミセス・サラの部屋には、校医であるミスター・ハルがいて、羽音を彼女のベッドサイドまで案内してくれる。
部屋の奥のベッドには、目を閉じたミセス・サラが横たわっていた。その姿は、羽音が知っている彼女ではなかった。長い間闘病生活を送ってきたためか、体は痩せ細り、疲れ切った表情をしている。それでも、その優しい雰囲気は変わらなかった。
「ミセス・サラ。羽音です」
静かにベッドの脇にしゃがみ込み、その細い手をそっと握る。その手は、とても温かかった。
「あぁ、羽音……よく来てくれました」
疲れ切った顔をしながらも優しく微笑んでくれる。弱々しい力で、羽音の手をそっと握り返してくれた。
「羽音、そろそろ神のお迎えが来そうです」
「何を言ってるんですか? 気を強く持ってください」
「フフッ、ありがとう。でもわかるのよ。私はそろそろ死んでしまう」
「そんな……」
悲しむ羽音を見たミセス・サラがフワリと微笑む。その笑顔は、まるで天使のように優しいものだった。
「羽音……貴方は、優しくて、賢くて、綺麗な子よ。どうか、幸せになってね」
「ミセス・サラ……」
「あらあら、泣かないで」
羽音の頬を伝った涙を、ミセス・サラが拭ってくれる。
「ハクは星屑になってしまったけど、きっと貴方は幸せになれるわ」
「嫌です。僕は貴女がいなければ何もできない……お願いします。僕を置いて行かないでください」
「まぁまぁ、困った子ね」
ミセス・サラが小さな声でクスクスと笑う。そんなミセス・サラの手を握り締め、羽音は肩を震わせた。
「インキュバスだって誰かを愛し、愛される権利を持っている。だから、貴方には幸せになって欲しい……」
「いいえ。貴女がいなければ、僕は不幸だ」
「大丈夫。貴方には九条君がいるわ。彼を信じて、ただ彼を愛し抜けばいい。そしたらね、きっと、幸せが訪れるでしょう。それにね、私最後に遺言を残しておいたから。本当にこれが私にできる最後の事だけど……きっと、大丈夫よ、羽音」
それが、羽音が見たミセス・サラの最後の笑顔だった。
その日の深夜、ミセス・サラは天国へと旅立った。
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