義妹の引き立て役はもう終わりにします

水空 葵

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14. 治癒魔法

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 あの後、私達は馬車で王都の外に移動した。
 王都の近くは魔物が少ないけれど、偶然にも三体の魔物を見つけることが出来た。

「アイリス、ここからでも届くか?」
「はい!」
「一番手前の魔物に水魔法をかけてみて」

 イアン殿下に言われた通り、私は水魔法をかける。
 すると、魔物の動きが弱々しくなり、数秒で動かなくなった。

「……魔物には害があるようだな」
「イアン、俺だけで確認してくる」

 どういうわけか、残りの二体ももがき苦しんでいて、間もなく動きが止まる。
 そこにレオン様が近付いていっても、魔物が動く気配は無かった。

「三体とも息絶えていた」
「分かった。他の魔物が来る前に移動しよう」

 魔物は人の気配を感じると近寄ってくるから、同じ場所に留まるのは良くない。
 だから、私達は再び馬車に乗って王都に戻ることにした。

「これからも水魔法を使っても大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だ。ただ、庭園の切り株にはかけないように。せっかく切ったのに、また生えてきては困るからね」

 枯れた花まで治せるのだから、切り株でも生えてくると思う。
 何も無いところに立派な木が突然現れたら……大騒ぎになりそうだ。

 そう思った時だった。
 遠くの方に魔物の群れが見えたと思ったら、護衛が声を上げた。

「魔物の群れが迫っています!」
「逃げ切れそうか?」
「逃げ切れたとしても、王都に魔物を差し向けることになります」

 イアン殿下は馬車の窓を開け、護衛とそんな言葉を交わす。
 魔物に襲われた時に戦うのは護衛が中心だけれど、イアン殿下とレオン様は魔法をいつでも使えるように構えた。

「ここで迎え撃つ。俺とレオンだけでも凌げるとは思うが、アイリスが居るから援軍を」
「御意」

 魔物の数は多いけれど、これくらいは私一人で倒させられていた。
 だから怖くなんてない。

「私も戦います」
「それは心強い」

 短く言葉を交わすと、早速イアン殿下が風の攻撃魔法を放つ。
 レオン様も同じ魔法を放ち、次々と魔物が倒されていく。

 私も水魔法で尖った氷を作り、それを魔物の群れに向けて飛ばした。
 護衛さん達も魔法を使えるみたいで、魔物の群れに攻撃魔法の雨が降る。

「──よし、全部倒せたな」

 魔物の姿が見えなくなるのは一瞬で、すぐに馬車が動き出す。
 そして、私達は無事に王宮に戻ることが出来た。

「お疲れ様。魔法の勉強の続きをしても大丈夫かな?」
「はい、大丈夫です」

 王宮を離れていたのは一時間ほどで、魔法の勉強をする時間はまだある。
 これから教わるのは光魔法。先生はまさかの王妃様だ。

「これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね。分からないことがあったら遠慮せずに聞くのよ」
「はい、分かりました」

 最初に開かれたのは、生活魔法と言われる簡単な魔法が書かれているページだった。
 教わりながら試しに使ってみると、周囲が明るく照らされる。

「これで合っていますか?」
「ええ、すごく上手よ。次は支援魔法にしましょう」

 次の支援魔法は生活魔法よりもずっと複雑で、簡単には出来なかった。
 でも、王妃様が丁寧に教えてくれたお陰で、一時間で使えるようになった。

「次はいよいよ治癒魔法よ」
「は、はい……!」

 魔法書のページがめくられると、見覚えのある魔法式が目に入った。

 これ……私が普段から使っている水魔法の一部分と全く同じだ。
 ついさっき習った普通の水魔法と治癒魔法を合わせたもの、それが私の水魔法だったらしい。

 ちなみに、治癒魔法の練習には、怪我をしたばかりの護衛達が集められている。
 全員軽い擦り傷や切り傷だけで、快く協力を申し出てくれたのだ。

「……治癒魔法、かけますね」
「お願いします」

 さっそく一人目に治癒魔法をかけると、一瞬にして擦り傷が消えた。

「まぁ……一回目から成功するなんてアイリスさんは天才かしら?」
「偶然だと思います」

 今までずっと使っていたから失敗しないのだけど、正直に言うことは出来なかった。

「次は水魔法をかけてみますね」

 二人目には、治癒魔法を抜いた水魔法をかけてみる。
 すると、今度は何も起こらなかった。

「何も起こらないなんて、何かあったのかしら?」
「もう一回かけますね」

 王妃様に訝しまれてしまったから、慌てて今まで通りの水魔法をかける。
 すると、今度は傷が綺麗に塞がった。

「普通の水魔法も使えるようになりました」
「……そういうことだったのね。理解したわ」

 王妃様が何か考えている素振りを見せていることが気になるけれど、力を失っているわけではないから、大丈夫だと信じている。
 でも、少しして彼女が放った言葉には、戸惑わずにはいられなかった。

「アイリスさん、今月中にデビュタントを済ませましょう」
「……はい?」

 私が間抜けな声を漏らしても、王妃様は微笑んだまま表情を崩さなかった。
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