21 / 49
21. 初仕事に向けて
しおりを挟む
イアン様と共に玉座の間に入ると、大勢の貴族達が重々しい口調で何かを話し合っているところが目に入る。
玉座の間にこの人数が居るところを見るのは初めてで、雰囲気から良くない状況だということは分かった。
話の内容に耳を傾けると、魔物のことについて語られていた。
どうやら魔物が大量発生する兆しが出ているようで、王都を防衛するための計画を立てているところらしい。
「イアン殿下、アイリス様。お二人はこちらへお願いします」
私達は陛下の隣に行くようにと促され、空けられている椅子に腰を下ろす。
すると、今の話し合いの内容について説明が始まった。
「イアンとアイリス嬢が来たので、繰り返しになるが現状を伝える。
王都の北方にある森で瘴気の発生が確認された。瘴気自体は数年に一度発生しているものだが、今回のものは今までに見たことのない濃さだ。
宮廷魔導師の予想では、手練れの魔法使いを一万人動員したとて、防ぎきれる可能性は低いという。今回の魔物がどのような傾向になるかにもよるが、普段よりも強くなった場合はかなりの犠牲が考えられるだろう」
瘴気の原因は分かっていない。
けれど、瘴気がある場所では魔物が大量発生したり、普段の何倍も強くなることが知られている。最悪の場合は、とてつもない強さの魔物が大量発生し、過去には大国が滅んだ記録がある。
かつての大聖女様の時は、この最悪の場合だったらしく、大国が一夜にして滅亡したと言われている。
明確な記録は残っておらず、当時の国王陛下が予想で書き記した資料を元にしているから、本当だったのかは分からないけれど……。
「黒龍の再来となれば、我が王国の総力を挙げても防ぐことは難しい。
頼れるのは、アイリス嬢だけだ」
陛下がそう口にすると、場の空気がさらに重くなった。
頼れるのが私だけ。
こんな絶望的な状況、私だって不安になってしまう。
治癒魔法はあるけれど、あれは怪我を治せるだけ。命を落としてしまえば、二度と戻せなのだ。
それに、私が魔法の勉強を始めたばかりという噂は社交界に広まっていて、周囲の貴族からの評価が『役立たずの聖女候補』だから、不安にならない方がおかしい。
「……ですが、アイリス嬢は今まで虐げられていたことで魔法を満足に扱えないと聞きました。彼女を頼らずに済む方法を考えるべきです」
「その通りだ。故に、そなた達の知恵を借りたい」
今の発言をしたお方の名前は分からないけれど、彼に何か考えがあるわけでは無い様子。
陛下に視線を向けられると、彼の今までの威勢が嘘のように消えていった。
他の方も良い案は浮かばないらしく、私に視線が集まってくる。
しばらく沈黙が続くと、陛下が再び口を開いた。
「このままだと、アイリス嬢の身に何かあれば、王国が滅ぶ可能性もあるだろう。
王家が倒れるのではない。王国民全員があの世行きだ。くれぐれも、おかしな気は起こさぬよう。
今日はこれにて解散とする。何か案があれば、すぐに報告するように」
これ以上の話し合いは無駄だと判断されたようで、この会はお開きになる。
すると、陛下が私に向き直り、こんな問いかけをされた。
「アイリス嬢。無責任なことではあるが、王国のために力を貸してもらえないだろうか?」
「私に出来ることでしたら、尽力いたしますわ」
断る理由なんて無いから、即答する。
すると、陛下は険しい表情を和らげた。
「感謝する。まずは今存在している強い魔物も倒せるところを目指してほしい。
イアンはアイリス嬢に怪我をさせないように付き添いなさい」
「分かりました」
具体的な指示が欲しいところだけれど、要するに私一人で王国を護れるようになって欲しいということなのだろう。
瘴気の影響がどれくらい酷いかは知らないけれど、せっかく幸せを掴めそうなのだから、たとえ黒龍が相手でも戦えるようになりたい。
そう思っていると、イアン様に手を差し出される。
「アイリス、まずは色々な魔法を自由自在に使えることを目指そう」
「分かりました」
こうして、私達は玉座の間を後にし、いつも通り魔法の勉強をすることになった。
玉座の間にこの人数が居るところを見るのは初めてで、雰囲気から良くない状況だということは分かった。
話の内容に耳を傾けると、魔物のことについて語られていた。
どうやら魔物が大量発生する兆しが出ているようで、王都を防衛するための計画を立てているところらしい。
「イアン殿下、アイリス様。お二人はこちらへお願いします」
私達は陛下の隣に行くようにと促され、空けられている椅子に腰を下ろす。
すると、今の話し合いの内容について説明が始まった。
「イアンとアイリス嬢が来たので、繰り返しになるが現状を伝える。
王都の北方にある森で瘴気の発生が確認された。瘴気自体は数年に一度発生しているものだが、今回のものは今までに見たことのない濃さだ。
宮廷魔導師の予想では、手練れの魔法使いを一万人動員したとて、防ぎきれる可能性は低いという。今回の魔物がどのような傾向になるかにもよるが、普段よりも強くなった場合はかなりの犠牲が考えられるだろう」
瘴気の原因は分かっていない。
けれど、瘴気がある場所では魔物が大量発生したり、普段の何倍も強くなることが知られている。最悪の場合は、とてつもない強さの魔物が大量発生し、過去には大国が滅んだ記録がある。
かつての大聖女様の時は、この最悪の場合だったらしく、大国が一夜にして滅亡したと言われている。
明確な記録は残っておらず、当時の国王陛下が予想で書き記した資料を元にしているから、本当だったのかは分からないけれど……。
「黒龍の再来となれば、我が王国の総力を挙げても防ぐことは難しい。
頼れるのは、アイリス嬢だけだ」
陛下がそう口にすると、場の空気がさらに重くなった。
頼れるのが私だけ。
こんな絶望的な状況、私だって不安になってしまう。
治癒魔法はあるけれど、あれは怪我を治せるだけ。命を落としてしまえば、二度と戻せなのだ。
それに、私が魔法の勉強を始めたばかりという噂は社交界に広まっていて、周囲の貴族からの評価が『役立たずの聖女候補』だから、不安にならない方がおかしい。
「……ですが、アイリス嬢は今まで虐げられていたことで魔法を満足に扱えないと聞きました。彼女を頼らずに済む方法を考えるべきです」
「その通りだ。故に、そなた達の知恵を借りたい」
今の発言をしたお方の名前は分からないけれど、彼に何か考えがあるわけでは無い様子。
陛下に視線を向けられると、彼の今までの威勢が嘘のように消えていった。
他の方も良い案は浮かばないらしく、私に視線が集まってくる。
しばらく沈黙が続くと、陛下が再び口を開いた。
「このままだと、アイリス嬢の身に何かあれば、王国が滅ぶ可能性もあるだろう。
王家が倒れるのではない。王国民全員があの世行きだ。くれぐれも、おかしな気は起こさぬよう。
今日はこれにて解散とする。何か案があれば、すぐに報告するように」
これ以上の話し合いは無駄だと判断されたようで、この会はお開きになる。
すると、陛下が私に向き直り、こんな問いかけをされた。
「アイリス嬢。無責任なことではあるが、王国のために力を貸してもらえないだろうか?」
「私に出来ることでしたら、尽力いたしますわ」
断る理由なんて無いから、即答する。
すると、陛下は険しい表情を和らげた。
「感謝する。まずは今存在している強い魔物も倒せるところを目指してほしい。
イアンはアイリス嬢に怪我をさせないように付き添いなさい」
「分かりました」
具体的な指示が欲しいところだけれど、要するに私一人で王国を護れるようになって欲しいということなのだろう。
瘴気の影響がどれくらい酷いかは知らないけれど、せっかく幸せを掴めそうなのだから、たとえ黒龍が相手でも戦えるようになりたい。
そう思っていると、イアン様に手を差し出される。
「アイリス、まずは色々な魔法を自由自在に使えることを目指そう」
「分かりました」
こうして、私達は玉座の間を後にし、いつも通り魔法の勉強をすることになった。
1,114
あなたにおすすめの小説
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
私の願いは貴方の幸せです
mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」
滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。
私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
【完結】次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!
林 真帆
恋愛
マリアは聖女の血を受け継ぐ家系に生まれ、次期聖女として大切に育てられてきた。
マリア自身も、自分が聖女になり、全てを国と民に捧げるものと信じて疑わなかった。
そんなマリアの前に、異父妹のカタリナが突然現れる。
そして、カタリナが現れたことで、マリアの生活は一変する。
どうやら現聖女である母親のエリザベートが、マリアを追い出し、カタリナを次期聖女にしようと企んでいるようで……。
2022.6.22 第一章完結しました。
2022.7.5 第二章完結しました。
第一章は、主人公が理不尽な目に遭い、追放されるまでのお話です。
第二章は、主人公が国を追放された後の生活。まだまだ不幸は続きます。
第三章から徐々に主人公が報われる展開となる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる