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第2章 公爵令嬢、料理人になりました
6. 物騒な料理名①
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カーテンの隙間から射し込む陽の光に照らされ、マリエットは目を覚ました。
ベッドが変わったせいか身体がやや痛むものの、普段から早起きなため気怠さは感じられない。
それに、色々と吹っ切れたこともあり、気分は晴れやかだ。
(最初が肝心というから、気を引き締めなくちゃ)
普段ならベッドから起き上がるタイミングで侍女が着替えを持ってくるが、使用人の身となったから部屋は静かなまま。
寂しさを感じながらも身支度を進めていると、控えめなノックの音が響いた。
「マリエットさん、おはよう。準備が出来たら、出て左隣の部屋に来て」
「分かりました!」
部屋の外に返事をし、少しして着替えを終える。
髪が帽子から出ることも、一本たりとも服に付いていることも許されないため、すぐに姿見の前に立ち、念入りに確認していく。
美しいと羨まれるプラチナブロンドの髪は白い制服に落ちていても分かりにくく、マリエットは料理スキルで出せる真っ白な光を使って自身を照らす。
これは肉などの食材の鮮度を確かめるためのもので、普通なら見抜けないような痛みを見つけられる優れものだ。
(……よし、大丈夫そうね)
そう確信し、言われた通り隣の部屋に向かうマリエット。
扉をノックすると、中からマリエットと歳の近い女性が姿を見せた。
髪は見えないが、瞳はマリエットと同じ明るい青。初対面なのに、親近感が湧く。
「最初なのに完璧に着れるなんて、すごいわ」
「ありがとうございます」
いきなり褒められるとは思わず、マリエットは戸惑いながらも言葉を返した。
笑顔も絶えず、昨日カミラのせいで感じていた不安はどこかへ吹き飛んでいく。
「……挨拶が先だったわね。私は貴女の教育係になったアンナよ。よろしくね」
「マリエットと申します。よろしくお願いします」
「そんなに堅苦しくなくて大丈夫よ。王家と貴族にはしっかり対応しなくちゃいけないけど、そんな機会はめったに無いもの。
……いけない、朝食を作らなくちゃ。案内するわね」
少し慌てた様子で放たれた言葉に頷き、後を追う。
まだ他の使用人達は眠っているようで、布が擦れる音だけが響いた。
「ここが厨房よ。毒を入れられないように、必ず鍵をかける決まりなの。
これは貴女の鍵になるから、絶対に無くさないように」
「分かりました」
そのやり取りに続けて鍵を受け取り、扉を開ける。
すると、汚れ一つない広大な厨房の景色が視界に飛び込んできた。
公爵邸の厨房も清潔に管理されていたが、ここは輝きが違う。
それに驚きながらも足を踏み入れると、仕込み中の料理の香りが漂ってきた。
「あれは何を作っているのですか?」
「今日のお昼に出すスープよ。中身は後で見れるから、今は朝食の準備をしていくわ」
「分かりました」
「……それじゃあ、さっそくマリエットさんにも一品お願いしようかしら?」
「まだ見習いですけれど、大丈夫なのですか?」
「美味しかったらお出しするけれど、不味かったら出さないから大丈夫よ。失敗を恐れずに頑張ってみて!」
いきなり料理を任されるとは思っていなかったマリエットは驚きながらも、すぐに楽しみな気持ちが勝った。
「この冷蔵庫の中身と調味料は自由に使って良いから、七人分お願いするわ」
「他の料理は何があるのですか?」
「今日はパンとスープの予定よ」
「分かりました。では、作ってみますね!」
さっそく、マリエットはレシピスキルを発動させる。
まずは冷蔵庫の中身を見て、食材を頭に入れていく。
そうすると、ここにある食材で作れる料理が頭に浮かんでくるのだ。
スキルの使い方はこれだけではない。スキルで出せる料理を全て見たり、種類や好みから導き出すことも出来る。
人数によって調味料の分量も詳しく浮かぶため、大人数に出す時でも困ることはない。
(……今日は目玉焼きにしましょう。物騒な名前だけど、すごく美味しいのよね)
目玉焼きという料理は、マリエットが知る限りここレスタン王国では見られないものだ。
一体どの国の料理なのかは分からないものの、大事なのは無事に完成させること。
さっそく、調味料置き場から胡椒と塩を取り出し、挽いていく。
(塩を加えたら、味付けの材料は完成ね)
続けてフライパンを取り出し油を引いて、その上で卵を割っていく。
すると、向かいで食材を切っていたアンナの表情が驚愕に染まった。
ベッドが変わったせいか身体がやや痛むものの、普段から早起きなため気怠さは感じられない。
それに、色々と吹っ切れたこともあり、気分は晴れやかだ。
(最初が肝心というから、気を引き締めなくちゃ)
普段ならベッドから起き上がるタイミングで侍女が着替えを持ってくるが、使用人の身となったから部屋は静かなまま。
寂しさを感じながらも身支度を進めていると、控えめなノックの音が響いた。
「マリエットさん、おはよう。準備が出来たら、出て左隣の部屋に来て」
「分かりました!」
部屋の外に返事をし、少しして着替えを終える。
髪が帽子から出ることも、一本たりとも服に付いていることも許されないため、すぐに姿見の前に立ち、念入りに確認していく。
美しいと羨まれるプラチナブロンドの髪は白い制服に落ちていても分かりにくく、マリエットは料理スキルで出せる真っ白な光を使って自身を照らす。
これは肉などの食材の鮮度を確かめるためのもので、普通なら見抜けないような痛みを見つけられる優れものだ。
(……よし、大丈夫そうね)
そう確信し、言われた通り隣の部屋に向かうマリエット。
扉をノックすると、中からマリエットと歳の近い女性が姿を見せた。
髪は見えないが、瞳はマリエットと同じ明るい青。初対面なのに、親近感が湧く。
「最初なのに完璧に着れるなんて、すごいわ」
「ありがとうございます」
いきなり褒められるとは思わず、マリエットは戸惑いながらも言葉を返した。
笑顔も絶えず、昨日カミラのせいで感じていた不安はどこかへ吹き飛んでいく。
「……挨拶が先だったわね。私は貴女の教育係になったアンナよ。よろしくね」
「マリエットと申します。よろしくお願いします」
「そんなに堅苦しくなくて大丈夫よ。王家と貴族にはしっかり対応しなくちゃいけないけど、そんな機会はめったに無いもの。
……いけない、朝食を作らなくちゃ。案内するわね」
少し慌てた様子で放たれた言葉に頷き、後を追う。
まだ他の使用人達は眠っているようで、布が擦れる音だけが響いた。
「ここが厨房よ。毒を入れられないように、必ず鍵をかける決まりなの。
これは貴女の鍵になるから、絶対に無くさないように」
「分かりました」
そのやり取りに続けて鍵を受け取り、扉を開ける。
すると、汚れ一つない広大な厨房の景色が視界に飛び込んできた。
公爵邸の厨房も清潔に管理されていたが、ここは輝きが違う。
それに驚きながらも足を踏み入れると、仕込み中の料理の香りが漂ってきた。
「あれは何を作っているのですか?」
「今日のお昼に出すスープよ。中身は後で見れるから、今は朝食の準備をしていくわ」
「分かりました」
「……それじゃあ、さっそくマリエットさんにも一品お願いしようかしら?」
「まだ見習いですけれど、大丈夫なのですか?」
「美味しかったらお出しするけれど、不味かったら出さないから大丈夫よ。失敗を恐れずに頑張ってみて!」
いきなり料理を任されるとは思っていなかったマリエットは驚きながらも、すぐに楽しみな気持ちが勝った。
「この冷蔵庫の中身と調味料は自由に使って良いから、七人分お願いするわ」
「他の料理は何があるのですか?」
「今日はパンとスープの予定よ」
「分かりました。では、作ってみますね!」
さっそく、マリエットはレシピスキルを発動させる。
まずは冷蔵庫の中身を見て、食材を頭に入れていく。
そうすると、ここにある食材で作れる料理が頭に浮かんでくるのだ。
スキルの使い方はこれだけではない。スキルで出せる料理を全て見たり、種類や好みから導き出すことも出来る。
人数によって調味料の分量も詳しく浮かぶため、大人数に出す時でも困ることはない。
(……今日は目玉焼きにしましょう。物騒な名前だけど、すごく美味しいのよね)
目玉焼きという料理は、マリエットが知る限りここレスタン王国では見られないものだ。
一体どの国の料理なのかは分からないものの、大事なのは無事に完成させること。
さっそく、調味料置き場から胡椒と塩を取り出し、挽いていく。
(塩を加えたら、味付けの材料は完成ね)
続けてフライパンを取り出し油を引いて、その上で卵を割っていく。
すると、向かいで食材を切っていたアンナの表情が驚愕に染まった。
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