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本編

37. 変わったこと

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 今は亡きセレスティアが起こした騒動から1年の月日が流れ、私の周囲では色々なことがあった。

 あの時はまだ距離を感じていたアルト様との関係も親しいものになった。
 もう正式に婚約を結んでいるし、お互いに好いているから崩れることも無いと思う。

 前の婚約者様の時は感じなかった温もりを、今は感じているのがその証拠。
 一言でいうと、今の私は幸せな時間を過ごしている。


 私達の関係以外にも、王国では変化があった。

 まず、闇魔法の使い手は全員王家と契りを結ぶことが義務付けられた。
 魔法の適正がある人全員に義務付けた方がいいという意見もあったけれど、500年前に同じことをした結果、貴族の反発を招いて国が荒れた過去があるから否定された。

 そんな改革が行われている中、バルケーヌ公爵家の取り潰しは決まった。

 税金の着服に残虐非道な人体実験、禁書を数多く保管していていたこと。
 他にも宰相様の開いた口が塞がらなくくらいの数の不正や犯罪が発覚したから。

 バルケーヌ公爵がセレスティアに王家を操るように仕向けていたことも明らかになり、また裁判の場で陛下に魔法を飛ばしてしまったから、彼もまた処刑された。
 事前に弱体化が図られていたとはいえ、経済を牛耳っていたバルケーヌ家が消えたことによる混乱は大きかった。

 けれども、魔法にも経済事情にも精通しているアルテミス公爵家がバルケーヌ家の役割を継いだことで、混乱は半年も続かなかった。
 その分、魔導卿が不在になってしまったのだけれど。

「まさかソフィアが公爵令嬢になるとは思わなかったよ」
「私も驚いていますわ」

 その空いた枠に入ったのが、お父様だった。
 元は伯爵位だったのに、公爵位を賜ることになったと聞いたときは驚いたわ。

 ちなみにこの公爵位、私が先の事件の解決に大きく貢献したことが影響している。
 けれども、女性に爵位を授けるという前例がないから、家の功績とすることで落ち着いたのよね……。

 反発も出ると思っていたけれど、今は親王家の立場をとっている貴族がほとんどだから、妬みは言われても文句は言われなかった。
 公爵家になった影響は他にもある。

 私とアルト様の婚約を発表しても、政略婚だと信じて疑われなかった。
 そのお陰で、今は陰口を言われることもなくなっている。


 それに、今までは家格の差を気にして、公の場では堅苦しい挨拶をしていたアリスと普段のように話せるようになった。
 今まで以上に家同士の付き合いも増えて、今は楽しく日々を送っている。


 すっかり平穏が続いているけれど、アルト様の前で気を抜くことは出来ないのよね……。

「ソフィア、愛しているよ」
「急に抱きしめるのはやめてください!」

 こんな風に、不意打ちで愛をささやいてくれるお方がいるから。
 でも……。

 この時間はすごく心地よい。

 だから……。
 文句を言ってしまったけれど、恥ずかしさを堪えながら彼の身体に両腕を回した。






☆☆☆


今回で本編完結です。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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