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第二章 ボーダーラインを超えていけ

19 事前準備

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 ブレイブは仲間になった二人を誘い、装備の調達に向かうことにした。

 その途中で、ブレイブが二人に話しかける。

「バッツもメグも、なんで冒険者になりたいんだ?」
「……シスターに恩返ししたいんだ。あの人はオレ達の親みたいなもんだし、恩人だからな。冒険者として稼いで、あの人の役に立ちたいってわけさ!」

 バッツがそう答えると、メグもコクッと頷く。

「二人とも偉いぞ! 俺は応援する!」

 そう言ってブレイブは二人の頭を撫でる。二人は少し恥ずかしそうだ。

〔ブレイブ、二人のジョブを確認してくれないか。ジョブチェンジがまだなら僕が決めたい〕
「おう、分かった!」

 ブレイブが二人にジョブを聞くと、すでにジョブチェンジをし終えていた。

 冒険者になりたいと思ってからすぐにジョブを決めて、自主的に訓練をしていたらしい。

 バッツの方は〈重戦士〉で、もともと力が強い方だから会っているだろうと選んだらしい。

 メグの方は〈魔術師〉で、力は強くないが、魔力が高いから選んだのだという。


〔そうか。ドワーフに最適なジョブではないが、まあ問題ないだろう〕

 そうして一行はよろず屋へと向かった。


 よろず屋に到着して店に入ると、コボルトキングからドロップした〈蒼狗の盾〉と魔石の買取を依頼し、合計で銀貨八十枚を得た。

 その資金で、バッツには青銅製の長大剣とタワーシールドおよび銅製の重鎧を、メグには青銅製のロッドおよび革製のローブと三角帽子を購入した。

 合わせて、ダンジョン攻略に必要なアイテムも買い揃えておく。

 購入時に店主のドン・ドンキーから次のキュアポーションの納品はいつかと聞かれたが、完全に忘れていたブレイブは次に来るまでにと約束しておいた。

 店を出て、装備を二人に渡す。

「うおーーー!? すげーーー!」
「わぁ……!」

 二人は嬉しそうに装備を身につける。特にバッツは剣や鎧に興味津々で、細かい部分まで観察している。

 ドワーフは鍛冶が好きと聞いたことがあるが、本当なんだなとブレイブは納得する。

 二人の様子を見て、シズルがブレイブに話しかける。

〔ダンジョン中層の攻略が進めば、より強力な装備を手に入れられる。こいつらのやる気が上がるように、それも伝えて──〕
「そ、そうなのか!? めちゃくちゃやる気が出てきたぞ!」
〔……お前が興奮してどうする〕

 シズルがそう言うと小さくため息をつく。

〔まあいいか。それよりも、ダンジョンに入る前にまた情報収集に行っておこう〕
「ってことは、ギルドだな!」

 パーティーは冒険者ギルドに向かった。


 ブレイブは、とりあえずバッツとメグにも冒険者登録をさせることにした。

 ギルドの壁を見ると、相変わらず依頼書がたくさん貼られている。

 しかしその中に、以前はあったはずの、行方不明冒険者の捜索依頼がなくなっていた。

 その代わり、このような依頼が貼り出されていた。

【冒険者狩りの合同捕縛依頼 ~依頼元:冒険者ギルド~】

「冒険者狩りって、なんでしょうね?」

 ケイナが少し不安そうな表情でブレイブに聞く。

「そのままの意味なら、冒険者を襲う輩がいるってことだよなぁ」

 でも一体何者が? なぜそんなことをするんだ?

 そんな疑問を解消すべく、ブレイブはギルドの中にある食堂兼酒場に向かう。

 そしてまたしてもいきなり、テーブルで酒を飲み交わす強面の男達の隣に腰かけた。

 ブレイブは男達にギロリと睨まれる。

 しかし、相手がブレイブと分かった瞬間、男達の顔が笑顔に変わった。

「おう坊主! 生きてやがったか!」
「もちろん! 兄さん達も元気そうだ! 店員さん、エールを三つ頼む!」

 ブレイブが注文する。

「おいおい坊主、聞きたいことがあるんだろうが、もうおごらなくていいんだぜ? 俺達は知り合いだろう」
「いや、それでもお礼はしたいんだ! 気にせず飲んでくれ!」

 すぐにエールが運ばれてきた。ブレイブは彼らに質問する。

「なあ兄さん達、冒険者狩りってなんだい?」
「……そのことか。前に行方不明者の捜索に出た冒険者パーティーの話はしたよな? 実は、そいつらも行方不明になっちまったんだ」
「え、そうなのか?」
「ああ、その後も痕跡が見つからなくて謎だらけだったんだ。だがな、この前ある冒険者がダンジョンの中で、その行方不明になった奴の装備を身につけている奴らを見たんだよ。冒険者みたいな格好をしていたが、後をつけたらそいつら、最近勢力を増してきたギャング共だったらしい」
「そいつらが冒険者狩りか……。じゃあ、行方不明になった冒険者達はどうなったんだ?」
「……もう死んでるだろうな」
「嘘だろ……? なんで……」

 ブレイブは想像もしていなかった事態に愕然とする。

「物を奪ってるってことは、金目的だろうな。ダンジョンの中なら死体は放っておけば消えちまうから、なんの痕跡も残らない」
「……こっちは命をかけて冒険してるってのに、ふざけやがって。そんなやつら、俺がぶっ飛ばしてやる!」

 ブレイブは冒険者狩りに対して激しい怒りを感じていた。

 きっと殺された者達には、冒険者として夢や目標があったはずだ。

 ダンジョンでモンスターに襲われて死ぬならまだ納得できるだろう。

 それが、人から物を奪うことでしか生きていけないような奴らに殺されるなんて。死んでも死にきれないだろう。

「ああ、冒険者仲間に手を出すやつは許せねぇ。今冒険者ギルドが力のある冒険者パーティーを募って、冒険者狩りを捕まえる合同依頼を出してる。坊主も十分気をつけて、絶対にやられるんじゃねえぞ!」
「おう! 分かった!」

 ブレイブは頷くと、その席を立った。

〔お前、どうするつもりだ?〕

 まだ怒りが収まらないブレイブにシズルが聞く。

「冒険者狩りを見つけてぶっ飛ばす!」
〔おいおい、これからバッツとメグを育てながら、ダンジョン中層を目指そうとしているんだぞ? 僕達の目的を忘れたのか?〕
「……分かってる。もしダンジョンの中で見つけたらだ!」
〔ならいい。PVPの練習にもなるだろう〕

 シズルが何やら納得したようなことを言う。

 バッツとメグが冒険者登録を終えて戻ってきたので、ケイナも含めて冒険者狩りの情報を共有する。

「だ、大丈夫かな、オレ達?」

 バッツもメグも不安そうだ。

「絶対に大丈夫だ。必ず俺が守るから安心してくれ!」

 ブレイブの宣言に仲間達が頷いた。

 そうしてパーティーは、ダンジョン攻略の挑戦を始めた。
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