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運命さんこんばんは、ありがとう
4ー②
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航は変異型αだと告げられたとき、実は医者からはβ相手なら、という話以外にこうも言われていた。『運命』の相手であればあるいは……と。確かにΩである『運命』であれば航がαである意味もあると思えるが、航はいるのかも分からない相手を探す気にはなれなかった。しかも自分は気心が知れているはずの幼馴染みだった婚約者に簡単に捨てられてしまったのだから、たとえ『運命』であっても本当に番えるのかも分からないし、また番えなくて捨てられてしまえば今度こそ自分はどうなってしまうのか怖かった。だったら無理に探さず可能性を残す方がいいと航は思った。
*****
一時は表情も抜け落ち口もきけなくなっていた航だったが、Ωを助けるようになり表面上は元通りに見えた。日中は会社でバリバリと働き、仕事が終われば夜の街へ繰り出し困っているΩを探す。見つかれば助け、見つからなければ家に帰る。これが最近の航の日課だったのだが、今日はいつもとは違っていた。航にとって命綱のような困っているΩ探しを早々に諦め、妙にお酒を飲みたい気分になったのだ。飲酒自体好きというほどでもないが、誰かと飲むことはわりと好きだった。だから自然とお酒を飲むことはなくなっていたのだが、ふと目についたBarに入ることにした。
初めての店だったが落ち着いた雰囲気で、どこかいい匂いもするようだった。軽く息を吸い込み、航は自然と硬くなっていた表情を少しだけ緩めた。バーテンに促されカウンターに座ると、隣には寒いのか身を丸めた細っそりとした男を見つけた。航はその男になぜかムズムズとしたものを腹の奥から感じ、首を捻った。そして無防備に晒された首に填められたネックガードからΩだと分かり、航はなるほどと思った。困っているΩは航の存在意義だからこのムズムズは期待──しているのだ、と。Ωたちにとってはつらく大変なことで、期待だなんてとんでもない話ではあるが、航が困ったいるΩたちを救ってきたことも事実で、Ωたちからしてみてもこの際動機なんてものはどうでもいいのかもしれなかった。両者の間に特別な感情が存在しないからだ。
だが、玲斗の場合は話が違ってくる。玲斗も困ってはいるが航が玲斗と関わることは玲斗にとって助けになることではなく、あってはいけないことなのだがそんなことを航が知るはずもなく、声をかけてしまう。
「──あの……」
玲斗は航に声をかけられて、飛び上がらんばかりに驚いた。なんでさっさと立ち去らなかったのかと後悔するが、『運命』の声の心地良さにうっとりしてしまいそうになる。あきらかに様子のおかしい玲斗に航は言葉を続ける。
「どこか──具合でも悪いんですか?」
「え……、えぇ……と」
航の顔を見ることができない玲斗は真っ赤な顔で俯き、口ごもる。その様子に航はやっぱりヒートが始まりかけているのでは? と思う。航にはヒート時であってもΩのフェロモンを匂いとしては感じられても香水と同じで、性的刺激は受けず区別はつかない。だから相手の様子を見て判断するしかないのだ。
「──! ここじゃなんだから……場所を変えよう」
航は玲斗にだけ聞こえるように玲斗の耳元で囁き、慣れた様子で肩を抱いて連れ出そうとした。玲斗はあまりにも近すぎる航に、なにがどうなったのかまったく分からないくらいパニくってしまっていて、大して抵抗することもできなかった。それが余計に航にヒートだと思わせてしまい、航は使命感に燃えていた。運がいいのか悪いのかちょうどそのとき店が混んでいて、ふたりの様子を見ている者は誰もおらず、気づいたときにはふたりが座っていたカウンターには多すぎるお金が置かれているだけだった。
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一時は表情も抜け落ち口もきけなくなっていた航だったが、Ωを助けるようになり表面上は元通りに見えた。日中は会社でバリバリと働き、仕事が終われば夜の街へ繰り出し困っているΩを探す。見つかれば助け、見つからなければ家に帰る。これが最近の航の日課だったのだが、今日はいつもとは違っていた。航にとって命綱のような困っているΩ探しを早々に諦め、妙にお酒を飲みたい気分になったのだ。飲酒自体好きというほどでもないが、誰かと飲むことはわりと好きだった。だから自然とお酒を飲むことはなくなっていたのだが、ふと目についたBarに入ることにした。
初めての店だったが落ち着いた雰囲気で、どこかいい匂いもするようだった。軽く息を吸い込み、航は自然と硬くなっていた表情を少しだけ緩めた。バーテンに促されカウンターに座ると、隣には寒いのか身を丸めた細っそりとした男を見つけた。航はその男になぜかムズムズとしたものを腹の奥から感じ、首を捻った。そして無防備に晒された首に填められたネックガードからΩだと分かり、航はなるほどと思った。困っているΩは航の存在意義だからこのムズムズは期待──しているのだ、と。Ωたちにとってはつらく大変なことで、期待だなんてとんでもない話ではあるが、航が困ったいるΩたちを救ってきたことも事実で、Ωたちからしてみてもこの際動機なんてものはどうでもいいのかもしれなかった。両者の間に特別な感情が存在しないからだ。
だが、玲斗の場合は話が違ってくる。玲斗も困ってはいるが航が玲斗と関わることは玲斗にとって助けになることではなく、あってはいけないことなのだがそんなことを航が知るはずもなく、声をかけてしまう。
「──あの……」
玲斗は航に声をかけられて、飛び上がらんばかりに驚いた。なんでさっさと立ち去らなかったのかと後悔するが、『運命』の声の心地良さにうっとりしてしまいそうになる。あきらかに様子のおかしい玲斗に航は言葉を続ける。
「どこか──具合でも悪いんですか?」
「え……、えぇ……と」
航の顔を見ることができない玲斗は真っ赤な顔で俯き、口ごもる。その様子に航はやっぱりヒートが始まりかけているのでは? と思う。航にはヒート時であってもΩのフェロモンを匂いとしては感じられても香水と同じで、性的刺激は受けず区別はつかない。だから相手の様子を見て判断するしかないのだ。
「──! ここじゃなんだから……場所を変えよう」
航は玲斗にだけ聞こえるように玲斗の耳元で囁き、慣れた様子で肩を抱いて連れ出そうとした。玲斗はあまりにも近すぎる航に、なにがどうなったのかまったく分からないくらいパニくってしまっていて、大して抵抗することもできなかった。それが余計に航にヒートだと思わせてしまい、航は使命感に燃えていた。運がいいのか悪いのかちょうどそのとき店が混んでいて、ふたりの様子を見ている者は誰もおらず、気づいたときにはふたりが座っていたカウンターには多すぎるお金が置かれているだけだった。
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