【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ

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運命さんこんばんは、ありがとう

4 『運命』 ①

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 何日過ぎようと少しも進展は見られず、玲斗のお相手探しは難航を極めていた。必死に、それこそαであれば誰彼構わず声をかけているのだが、番候補は見つかることはなかった。原因としてあげられるのは、まずこの界隈でのフリーのαとの遭遇率の低さと、すでに孤高の花というイメージがつきすぎていて玲斗が頑張って話しかけても、緊張感溢れる・・・・・・世間話程度で終わってしまっていた。
 番持ちのαは玲斗が拒否していたし、遊び相手ならいざ知らずまともなαであれば番は自分にとっての安らげる場所であったり守るべき対象で、容姿のよさだけで決められるものではない。それなりの付き合いがあったなら別だが、ほぼほぼ初対面で玲斗のようなタイプは自分には勿体無い、とその辺のαにとって本気の恋愛対象としては見てもらえなかった。これも羽鳥家でのいきすぎた教育の弊害か。


 何度目かの空振りに、いきつけのBarのカウンターに座る玲斗は深くため息を吐いた。こんなにうまくいかないのはきっと自分になにか問題があるのだと玲斗は考えたが、なにが問題なのかは分からない。まさか自分が特上のΩとして見られているなんて、自覚のない玲斗に分かるはずがなかった。
 途方に暮れてもう一度ため息を吐いたところで、Barのドアベルがチリンと鳴って来客を知らせた。何気なく振り向いて、男が──『運命』が入ってきたのが見えた。今日はひとりのようで、ダメだと思うのに『運命』から目が離せない。姿を見るだけで心が喜び、嬉しいと騒ぐのだ。そしてすぐに、いや、待ち合わせかもしれない──とやっと玲斗は視線を外した。
 そんな玲斗の様子を見てなにかを感じたバーテンは、さりげなく男、『運命』を玲斗の隣に座るように誘導した。玲斗は近い『運命』の気配に、身体が熱くなるのを感じた。ありえないくらいドキドキと鼓動も煩く、身体中が心臓にでもなったようだった。静かに腰掛け、バーテンとの短いやりとりですら耳が喜び心が震えた。もっと……もっと聴いていたい。

 すぐに席を立ってこの場を去らなければいけないのに、少しだけ、『運命』の番がくるまで、もう少しだけと座り続けた。身を縮め、できるだけ息を殺して「お願い『運命』に気づかないで」と願いながら。






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