俺のかわいい婚約者さま リメイク版

ハリネズミ

文字の大きさ
57 / 87
俺のかわいい婚約者さま・続

1 ぷろろーぐ

しおりを挟む
「そんな事があったんだね。それはやらかしたねぇかける

「はぁー、彼方かなたをそこまで怒らせるなんてよっぽどだぞ」

と俺、次に長男のかなでに呆れ顔で言われしょんぼりと肩を落とす翔。

翔の20歳の誕生日に彼方君と番う事は、随分前から俺たちと一条さん(遥君と桜花君)は知っていた。大学に合格したその日、翔は彼方君には内緒であちらにお願いにあがったのだそうだ。
20歳の誕生日に番う事、それに関する諸々の事は自分で全部やりたいという事。
俺と楓君は後からその話を聞いて翔の意外な行動力に驚いたけど、我が子の成長ぶりを嬉しく思ったものだ。
翔と彼方君の間には今まで色々な事があった。その事で翔は少しずつでも成長していたという事なのだろう。

言われた通り俺たちは、口出しも手助けもしなかった。奏には相談して協力してもらっていたようだけど、それも翔が自分で考えて決めた事なので文句はない。ただ、翔の手には負えないような事になったら勿論手助けはするつもりでいたのだが――よもやそういう事になっていたとは――――。
ちょっとこれは――かなり……彼方君に申し訳ないな。
ちらりと彼方君を窺えば、何の憂いもなく幸せそうに微笑んでいた。
その顔を見て、まぁこれも二人の歴史になっていくんだなと思った。

我が家の次男である翔の番の彼方君は、俺の番で夫のかえで君の幼馴染の一条 遥いちじょう はるか君とその番の桜花おうか君のひとり息子で、奏と同じ年に生まれた。
同い年でαとΩという事もあって、奏と彼方君が番になったらいいなぁなんて、勝手に俺たちは思ったりした事もあった。だけど、当人たちは『親友』『家族』とそんな深い絆で結ばれていたけど『番』にというのは考えられなかったらしい。
ずっと一緒にいてもそういう反応は少しも見られなかった。

そして翔を俺が身籠って、彼方君がまだ生まれてもいない俺のお腹の中にいる翔に反応したんだ。
あれは本当にびっくりした。
でも多分翔はあんな頃から彼方君が欲しかったんだ。だからあんな自分に注意を向けるような事――。発情期ヒートを起こさせるなんて、一歩間違えばになりかねない事だから褒められた事じゃないけど、でもその気持ちは分かるから――。
あの時すでに彼方君は年齢的に言って、すぐにでも番を見つけちゃう可能性はあった。だからあれは翔からの精一杯の「待ってて」だったのかもしれない。
それから彼方君はずっとずっと待っていてくれた。
俺と楓君のように縁が切れたような日々を過ごす事はなかったけど、それでも20年もの間傍にいて番う事もできずにいたんだ。彼方君もどんなにかつらかっただろうか。
楓君の愛をこの身に受けてからは、好きな人が傍にいるのにそういう事ができないつらさはΩとしてよく分かる。
年老いてヒートもなくなってしまった今でも、楓君に抱かれると身も心も嬉しくて震える。

――本当によく我慢したね。
落ち込む翔に優しく話しかけている彼方君を見て瞳を細めた。


今日はやっと結ばれた二人を祝う為に俺と楓君と息子たち、それにそれぞれの番たちで6人が久しぶりに我が家に集まっていた。一条さんたちは仕事の都合で欠席だけど、また折を見て集まるつもりだ。

さっきは彼方君とやっとの事で番えるという段になって、翔がやってしまった色々なやらかしについてみんなで聞いていたところだった。

「彼方君、うちの愚息が申し訳なかったね」

そう言って彼方君に謝る楓君を見て、俺はなんだかおかしくてくすくす笑ってしまった。

「――かおるさん?」

少し困惑気味に俺の事を見る楓君。

「いや、父子おやこなんだなぁって改めて思ってさ。ふふふ」

楓君は心当たりが沢山あるのだろう。ひどくバツの悪そうな顔をした。

「え?なになになに?父さん何かやらかしたの?」

翔は何も言い返せずに小さく縮こまっていたのだが、矛先が楓君に向いた途端水を得た魚のように元気になった。
よく似た顔で対照的な表情のふたりに、口元が緩む。

「そうだなぁ――あれはまだ奏を授かったって分かってからそんなに経っていない頃だったかな――」

そうして俺は5人が見守る中、当時の事を話し始めた。

和やかな雰囲気の中語り始めた俺だったけど、当時はとてもつらくて苦しかった――。
今では笑い話でしかないけれど。
ふっと息を吐く。


――これは、俺たち夫夫ふうふがまだ未熟だった頃のお話……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...