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俺のかわいい後輩さま どこかの世界線で
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「にゃー」
「今日はとっておきのがあるんだよ。キミはこれ好きかなぁ?」
学校が終わりひとりで帰るいつもの道、聴こえてきたのはそんな声。
声のする方を見ると、大柄な男子学生が道の端でしゃがみこみ何やら猫と会話をしているようだった。
着ている制服からいって、同じ学校の生徒のはずだけど見ない顔だった。体格は大人のように大きいけれど新入生かもしれない。
そのまま立ち去ってしまえばいいのになぜかその子の事が気になって、その場に留まり様子を見ていた。
その子は食べやすいように紙皿の上に猫用の缶詰を開けて猫の前に置いた。
猫はふんすと鼻を鳴らし機嫌よくそれを食べ始めた。食べながらも「うにゃうにゃ」と鳴いている。
首輪もないし野良だろうに猫はその子にとても懐いているように見えた。
ふたりの様子はとても微笑ましくて思わず口元が緩んだ。
「美味しい? そう、よかったね。――あのね、俺ね悩んでる事があるんだ。それ食べてる間だけでも聞いてくれる?」
その子の問いに猫は一旦食べるのをやめ、顔を上げて「にゃあ」と鳴いて再び食べ始めた。「いいよ」とでも言っているのだろうか。
その子はくすりと笑い、「ありがとう」と言った。
本当に会話してるみたいだ。
それに……なんて優しく笑うんだろう。
種族の垣根なんかない友人同士のようなふたりに俺の心臓がとくんと鳴った気がした。
その子と猫のやりとりを少しも逃したくなくて、少しだけ近づいてみた。
まだ俺の存在は気づかれていない。
「俺ね、どうしたらいいのか分からないんだ。父さんが無理言って、相手も断りたくても断れないんじゃないかなって思うんだ。だから俺から断った方がいいよね……?でも、父さんも俺の事を想ってやってくれたわけだし、父さんの事も相手の事も傷つけたくないから何て言ったらいいのか――」
有益な答えなんて得られるはずもないのにどこまでも真剣な顔をして猫に語りかけている。
何の事だか分からないが父親が通した無理に困ってる相手がいて、相手の為に自分から断る方がいいけど父親の事も相手の事も傷つけたくないって事らしい。
なんて優しい子なんだろう。
全貌は分からないけど、話を聞いたかぎりその子はまるで悪くない。
それなのに自分の事は置き去りで、他人の心配ばかりしている。
俺が守ってあげたいな……なんて、突然沸いたそんな想い。
「思ったように言ったらいいんじゃないかにゃ?」
猫のフリして思わずそう声をかけていた。
「え?」
その子は騙される事なくきょろきょろと辺りを見回し、俺の姿を認めると細長の瞳をめいっぱい見開いた。
ひどく驚かせてしまったようでそのまま尻餅をついてしまった。
それにしても驚き過ぎのような気もするが――。まるで幽霊でも見たかのような……?
俺は慌てて手を差し出した。
「驚かせちゃったかな、ごめんね。立てる?」
かぁっとみるみる赤く染まっていくその子の顔。待ってみても俺の手を掴まない。驚き固まって動けないでいるようだ。
「――ほら」
こないなら自分の方から、とその子の手を自分から取り立たせる。
パンパンとズボンについた汚れをはらってやると「ひゃっ」とおかしな声まで聞こえて、その子の顔が更に真っ赤になるものだから俺も少しだけ頬を赤くさせた。
「――きみは優しいね。そんなきみが思っている事を正直に話せば相手が傷つくなんて事ないと思うよ。お父さんだって分かってくれるよ」
「その方が、あなたもいい……ですか?」
不安気に揺れるきみの瞳。安心させるようににっこりと微笑むとぱっと目を逸らされて、なぜか少しだけ寂しい気持ちになった。
『あなたも』だなんて少し変な言い方だなとひっかかりを覚えるが、あえてつっこんで訊いたりはしなかった。
「――うん? いいと思う。どうしても不安なら俺が付き合ってあげるよ。傍に居て応援してあげる。『フレーフレー』ってさ」
冗談めかしてそんな事を言うと、少しだけ笑った。
だけどその笑顔はどこかつらそうにも見えて、胸の奥がざわざわと騒いだんだ。
じゃあね、と別れた後もその笑顔がやけに脳裏に焼き付いていて、なかなか消える事はなかった。
「今日はとっておきのがあるんだよ。キミはこれ好きかなぁ?」
学校が終わりひとりで帰るいつもの道、聴こえてきたのはそんな声。
声のする方を見ると、大柄な男子学生が道の端でしゃがみこみ何やら猫と会話をしているようだった。
着ている制服からいって、同じ学校の生徒のはずだけど見ない顔だった。体格は大人のように大きいけれど新入生かもしれない。
そのまま立ち去ってしまえばいいのになぜかその子の事が気になって、その場に留まり様子を見ていた。
その子は食べやすいように紙皿の上に猫用の缶詰を開けて猫の前に置いた。
猫はふんすと鼻を鳴らし機嫌よくそれを食べ始めた。食べながらも「うにゃうにゃ」と鳴いている。
首輪もないし野良だろうに猫はその子にとても懐いているように見えた。
ふたりの様子はとても微笑ましくて思わず口元が緩んだ。
「美味しい? そう、よかったね。――あのね、俺ね悩んでる事があるんだ。それ食べてる間だけでも聞いてくれる?」
その子の問いに猫は一旦食べるのをやめ、顔を上げて「にゃあ」と鳴いて再び食べ始めた。「いいよ」とでも言っているのだろうか。
その子はくすりと笑い、「ありがとう」と言った。
本当に会話してるみたいだ。
それに……なんて優しく笑うんだろう。
種族の垣根なんかない友人同士のようなふたりに俺の心臓がとくんと鳴った気がした。
その子と猫のやりとりを少しも逃したくなくて、少しだけ近づいてみた。
まだ俺の存在は気づかれていない。
「俺ね、どうしたらいいのか分からないんだ。父さんが無理言って、相手も断りたくても断れないんじゃないかなって思うんだ。だから俺から断った方がいいよね……?でも、父さんも俺の事を想ってやってくれたわけだし、父さんの事も相手の事も傷つけたくないから何て言ったらいいのか――」
有益な答えなんて得られるはずもないのにどこまでも真剣な顔をして猫に語りかけている。
何の事だか分からないが父親が通した無理に困ってる相手がいて、相手の為に自分から断る方がいいけど父親の事も相手の事も傷つけたくないって事らしい。
なんて優しい子なんだろう。
全貌は分からないけど、話を聞いたかぎりその子はまるで悪くない。
それなのに自分の事は置き去りで、他人の心配ばかりしている。
俺が守ってあげたいな……なんて、突然沸いたそんな想い。
「思ったように言ったらいいんじゃないかにゃ?」
猫のフリして思わずそう声をかけていた。
「え?」
その子は騙される事なくきょろきょろと辺りを見回し、俺の姿を認めると細長の瞳をめいっぱい見開いた。
ひどく驚かせてしまったようでそのまま尻餅をついてしまった。
それにしても驚き過ぎのような気もするが――。まるで幽霊でも見たかのような……?
俺は慌てて手を差し出した。
「驚かせちゃったかな、ごめんね。立てる?」
かぁっとみるみる赤く染まっていくその子の顔。待ってみても俺の手を掴まない。驚き固まって動けないでいるようだ。
「――ほら」
こないなら自分の方から、とその子の手を自分から取り立たせる。
パンパンとズボンについた汚れをはらってやると「ひゃっ」とおかしな声まで聞こえて、その子の顔が更に真っ赤になるものだから俺も少しだけ頬を赤くさせた。
「――きみは優しいね。そんなきみが思っている事を正直に話せば相手が傷つくなんて事ないと思うよ。お父さんだって分かってくれるよ」
「その方が、あなたもいい……ですか?」
不安気に揺れるきみの瞳。安心させるようににっこりと微笑むとぱっと目を逸らされて、なぜか少しだけ寂しい気持ちになった。
『あなたも』だなんて少し変な言い方だなとひっかかりを覚えるが、あえてつっこんで訊いたりはしなかった。
「――うん? いいと思う。どうしても不安なら俺が付き合ってあげるよ。傍に居て応援してあげる。『フレーフレー』ってさ」
冗談めかしてそんな事を言うと、少しだけ笑った。
だけどその笑顔はどこかつらそうにも見えて、胸の奥がざわざわと騒いだんだ。
じゃあね、と別れた後もその笑顔がやけに脳裏に焼き付いていて、なかなか消える事はなかった。
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