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番外 番う日
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お見合い大作戦が成功して入籍した後は、一宮家で美幸の妻として過ごしながら勉強も続けていた。
花崎家にもちょくちょく顔を出していて関係も良好、全ては順調……と言いたいんだけど――。
はぁと小さくため息を吐いた。
一番大事な番についてだけど……入籍前は俺も美幸も忙しくて殆ど会えなかったし、その間に発情期は終わってしまっていた。
花崎の方からは色々と心配してか入籍後すぐに番えるように発情促進剤を使って発情期を早めては? と言われた。その理由についてははっきりとは言わないけど、お母さんの事もあったしお父さんたちが何を心配しているのかは分かる。
だけど……と頷けないでいると、美幸が自然に任せたいと言ってくれて薬は使わない事になった。
お父さんたちの気持ちも分かるし、俺自身も早くはやく、と焦る気持ちもあったのは本当だけど、実はあの件以来それが何であっても錠剤を飲むのにも抵抗があったのだ。
でもそんな事誰にも言えなくて――、美幸が反対してくれてホッとした。
そんなわけで薬を使う事なく正式に番になるべく俺の発情期を待っていた、んだけど――普段は何ともないのにそういう意味で触れられると思うだけで身体が強張ってしまうのだ。入籍もして一緒に住んでいる俺たちは正式な夫夫だ。番になるのも秒読み段階だし、美幸も子どもではなく大人なのだ。
つまりはそういう触れ合いをしてもおかしくはない、というか『新婚』なんだからベッドの住人になっても当然? なのだ。だけど俺はなんだかんだと理由をつけて甘い雰囲気にならないようにしていた。だから俺たちは番うどころか『初夜』もまだだった。
やっと愛し愛される相手と結婚して番になるのだ、俺だって美幸とそういう触れ合いをしたくないわけじゃない。なのに俺の身体は一年前のあの出来事を覚えているようで、怖いと思ってしまうのだ。
相手が美幸だと分かっているのにダメなのだ。
こないだのお見合いの席でのキスだって幸せで、怖い事なんて少しもなかったのに、これからその先の事もと思うともうダメだった。
美幸を求める心と怖がる身体、俺がふたつに分裂したような感じがして何とも気持ちが悪い。
俺は自分で思っている以上に心に傷を負ってしまっていたようだ。
花崎家にもちょくちょく顔を出していて関係も良好、全ては順調……と言いたいんだけど――。
はぁと小さくため息を吐いた。
一番大事な番についてだけど……入籍前は俺も美幸も忙しくて殆ど会えなかったし、その間に発情期は終わってしまっていた。
花崎の方からは色々と心配してか入籍後すぐに番えるように発情促進剤を使って発情期を早めては? と言われた。その理由についてははっきりとは言わないけど、お母さんの事もあったしお父さんたちが何を心配しているのかは分かる。
だけど……と頷けないでいると、美幸が自然に任せたいと言ってくれて薬は使わない事になった。
お父さんたちの気持ちも分かるし、俺自身も早くはやく、と焦る気持ちもあったのは本当だけど、実はあの件以来それが何であっても錠剤を飲むのにも抵抗があったのだ。
でもそんな事誰にも言えなくて――、美幸が反対してくれてホッとした。
そんなわけで薬を使う事なく正式に番になるべく俺の発情期を待っていた、んだけど――普段は何ともないのにそういう意味で触れられると思うだけで身体が強張ってしまうのだ。入籍もして一緒に住んでいる俺たちは正式な夫夫だ。番になるのも秒読み段階だし、美幸も子どもではなく大人なのだ。
つまりはそういう触れ合いをしてもおかしくはない、というか『新婚』なんだからベッドの住人になっても当然? なのだ。だけど俺はなんだかんだと理由をつけて甘い雰囲気にならないようにしていた。だから俺たちは番うどころか『初夜』もまだだった。
やっと愛し愛される相手と結婚して番になるのだ、俺だって美幸とそういう触れ合いをしたくないわけじゃない。なのに俺の身体は一年前のあの出来事を覚えているようで、怖いと思ってしまうのだ。
相手が美幸だと分かっているのにダメなのだ。
こないだのお見合いの席でのキスだって幸せで、怖い事なんて少しもなかったのに、これからその先の事もと思うともうダメだった。
美幸を求める心と怖がる身体、俺がふたつに分裂したような感じがして何とも気持ちが悪い。
俺は自分で思っている以上に心に傷を負ってしまっていたようだ。
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