28 / 36
恋する金平糖
幕間 金平糖の思い出
しおりを挟む
「金平糖ってさ、どうやって作るか知ってるか?」
俺を拾ってすぐのころ、静夜さんが俺に言った言葉だ。簡単に言うとザラメなどを核に加熱しながら溶かした糖蜜を少しずつかけて、かき混ぜて作られるのだと教えてくれた。小さな突起ができてあの形になるまで数週間。大事に大事に作られる。そして、金平糖は『糖花』とも呼ばれることもあるのだとか。
確かに花のようにかわいく美しい。
そんな金平糖に俺に似てるって静夜さんは言った。だから腐るなって、まだできあがる途中なんだからって。色々なでこぼこがあって初めて立派な金平糖になるんだって。そして俺が沢山胸焼けするくらい甘い糖蜜をかけてあげるから綺麗な金平糖になれ……って。
なに言ってるんだ? って睨みながらも、本心ではどんなに嬉しかったか。そう言って口の中に放り込むようにしてくれた金平糖は驚くほど甘くて――泣きたくなった。
こんななにも持たない俺が綺麗で甘いお菓子みたいだって。
でも俺はただ愛でられる花ではなく、あなたの傍で瞬き夜空を彩る星でありたいと願う。
そんな身の程知らずな俺の願い。
それから俺の部屋にはあなたから貰った手つかずのままの、金平糖の入った瓶がいくつも並んでいる――。
*****
「ちょっと目閉じて?」
「は? なんでですか?」
突然そんなことを言われてどこかにやついた笑顔を向けられ、目を閉じるように言われ仕方なく目を閉じると、唇にあたるものが――。そしてコロリと口の中に広がった甘くて優しい味。
驚いて目を開けると、至近距離の静夜さんの綺麗な笑顔に心臓がバクバクと煩く騒ぐ。
こんなのいつもの悪戯――、特別な意味なんてない――。揶揄われただけだ。
「――金平糖。なにを遠慮してるのか知らないけど甘いの好きだったろ? 俺があげたやつ食べてないみたいだからさ」
そう言って悪戯が成功したみたいに笑うから、
「こ、子どもじゃないんですからっ」
「ほら、これ星に見えないか? 前に糖花って呼ばれることもあるから花だって言ったけどさ、やっぱ星だよなー。そう思ったらもう星以外には見えなくてさ」
瓶から新しく金平糖を摘まみ上げ、俺に掲げて見せる。
「俺、名前に夜が入ってるからか星が好きなんだよね。だから金平糖も好きになった」
わざとなのかなんなのか、そう言って金平糖にちゅっと唇を寄せて見せた。
俺のことを金平糖に似てるって言った口で、星が好きだから金平糖が好きだなんて、まるで俺のことを好きだって言われてるみたいでドキドキと心臓が煩い。日+星、で『暒』俺の名前。
真っ赤になる顔を意識して、もっと赤くなるから気づかれないように怒ったフリをしてそっぽを向くんだ。
本当に、本当にもう、この人のこういうところが――本当に……嫌い。
俺を拾ってすぐのころ、静夜さんが俺に言った言葉だ。簡単に言うとザラメなどを核に加熱しながら溶かした糖蜜を少しずつかけて、かき混ぜて作られるのだと教えてくれた。小さな突起ができてあの形になるまで数週間。大事に大事に作られる。そして、金平糖は『糖花』とも呼ばれることもあるのだとか。
確かに花のようにかわいく美しい。
そんな金平糖に俺に似てるって静夜さんは言った。だから腐るなって、まだできあがる途中なんだからって。色々なでこぼこがあって初めて立派な金平糖になるんだって。そして俺が沢山胸焼けするくらい甘い糖蜜をかけてあげるから綺麗な金平糖になれ……って。
なに言ってるんだ? って睨みながらも、本心ではどんなに嬉しかったか。そう言って口の中に放り込むようにしてくれた金平糖は驚くほど甘くて――泣きたくなった。
こんななにも持たない俺が綺麗で甘いお菓子みたいだって。
でも俺はただ愛でられる花ではなく、あなたの傍で瞬き夜空を彩る星でありたいと願う。
そんな身の程知らずな俺の願い。
それから俺の部屋にはあなたから貰った手つかずのままの、金平糖の入った瓶がいくつも並んでいる――。
*****
「ちょっと目閉じて?」
「は? なんでですか?」
突然そんなことを言われてどこかにやついた笑顔を向けられ、目を閉じるように言われ仕方なく目を閉じると、唇にあたるものが――。そしてコロリと口の中に広がった甘くて優しい味。
驚いて目を開けると、至近距離の静夜さんの綺麗な笑顔に心臓がバクバクと煩く騒ぐ。
こんなのいつもの悪戯――、特別な意味なんてない――。揶揄われただけだ。
「――金平糖。なにを遠慮してるのか知らないけど甘いの好きだったろ? 俺があげたやつ食べてないみたいだからさ」
そう言って悪戯が成功したみたいに笑うから、
「こ、子どもじゃないんですからっ」
「ほら、これ星に見えないか? 前に糖花って呼ばれることもあるから花だって言ったけどさ、やっぱ星だよなー。そう思ったらもう星以外には見えなくてさ」
瓶から新しく金平糖を摘まみ上げ、俺に掲げて見せる。
「俺、名前に夜が入ってるからか星が好きなんだよね。だから金平糖も好きになった」
わざとなのかなんなのか、そう言って金平糖にちゅっと唇を寄せて見せた。
俺のことを金平糖に似てるって言った口で、星が好きだから金平糖が好きだなんて、まるで俺のことを好きだって言われてるみたいでドキドキと心臓が煩い。日+星、で『暒』俺の名前。
真っ赤になる顔を意識して、もっと赤くなるから気づかれないように怒ったフリをしてそっぽを向くんだ。
本当に、本当にもう、この人のこういうところが――本当に……嫌い。
0
あなたにおすすめの小説
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
だって、君は210日のポラリス
大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺
モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。
一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、
突然人生の岐路に立たされた。
――立春から210日、夏休みの終わる頃。
それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて――
📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。
エピローグまで公開いたしました。14,000字程度になりました。読み切りの形のときより短くなりました……1000文字ぐらい書き足したのになぁ。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる