お前の好きは軽すぎる

ハリネズミ

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惚れっぽい男(1)

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「わ――んっ! フラれました~!」

 そう叫びながら会社の後輩が仕事中にも関わらず背中からどーんと俺に抱き着いて来た。
 地味に痛い。お前は躾けのなっていない大型犬か。

 こいつの名前は相模 理央さがみ りお。俺の四つ下の後輩だ。
 入社時に指導係をした関係で独り立ちして何年も経つのに何かと俺に頼って来る。
 まぁ頼られて悪い気はしないんだが、恋愛面に関してだけは勘弁して欲しい。

 というのもお遣いで書類を庶務課に持って行く僅かな時間に誰かに恋をして、フラれるという恋愛に対して軽い感じが苦手なのだ。
 なんというか……一言で言うと惚れっぽい? 尻軽?

 実は今日みたいな事は初めてではなくて、何度もひと目惚れして告白しては全てフラれている。
 だから周りも慣れた様子で一瞬だけちらっと見て、すぐにそれぞれの仕事に戻っていく。



 相模は身長も高いし顔も甘めのイケメンで、性格も明るくて素直で悪くはない。
 なのにモテた事がないらしい。
 まぁ九十九%惚れっぽいところが原因な気もするが。

 抱き着かれたままキーボードを打つ手を止めず、話を聞いてやる。

「今度は誰?」

「庶務課の、みねさんです―。僕が書類を落としたら拾ってくれて……。優しくないですか? 僕じゃなくても好きになっちゃいますよね? ね?」

「――そうかもな」

 俺は適当に返事を返す。

 俺はこいつの『好き』という言葉が信用できない。
 そんなにほいほいひと目惚れなんかするもんか。
 そりゃある日突然好きになる事はあると思う。
 だけど、すぐに告白してフラれて、その次の瞬間にまた新しく恋に落ちるとか。
 俺には信じられなかった。


 俺の『好き』は違う。好きになって少しずつ育っていくもんだと思っている。

 だから相模が俺との初対面の時、「好きです! 付き合って下さい!」と言った時、「そりゃどうも」と受け流して正解だったと思っている。

 たとえそれからドンドン俺の中の『好き』が大きくなっていこうとも。
 こいつの『好き』が軽すぎて信じられない事にかわりなかった。
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