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④ @耕平
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あれから俺は一度離れてしまったふたりの距離を何とかもう一度縮められないものかと画策していた。二度と間違えないようにまるで中学生のようなメッセージを送り続けている。『おはよう』『おやすみ』『今日は寒いから風邪ひかないように気を付けて』、道端で見つけた可憐な花や雨上がりの空にかかる虹の橋、夜空に輝く宝石たち、猫や犬等愛らしい存在の画像をメッセージに沿える。
小波の心が綺麗な物や可愛い物で満たされるように。
俺の方は人生二度目とも言える熱量に対し小波の方は既読はつくものの殆ど反応はなく、直接会う事はあれから一度もない。冷たいという事はないが未だ温度はぬるいままのようだった。小波から何かを返して貰おうとは思っていなかったので、それは別にいいのだが――。
俺は弟の事以外わりと淡泊な方だ。今まで何人かと恋人と呼べるような関係になった事はあるが、弟ができてからはいつも弟を優先させてきた。だからか告白されて付き合い始めてもすぐにフラれて、そんなやりとりが面倒くさく思えてここしばらくは誰とも付き合っていない。なのに小波とはどんなに面倒でも失いたくはないと思えるのだ。
弟以外でこんなにも愛おしく思った事も守りたいと思った事も初めてだった。
俺は自分では気まぐれな方ではないと思っているが、これが懐かない猫や何かに対する意地なのか愛情なのか、はたまた同情なのか何なのか、何にしてもこちらを向いた途端興味を失うなんて事にはならない。絶対に。
流石に嫌われているとは思っていないが、特別好かれているとも思っていない。俺と小波はこれからなのだ。
今はまだ友人でも恋人でもない、ただの知り合い程度だ。ここで俺が諦めてしまえば簡単に終わってしまう。
そうはしたくないから、ゆっくりと距離を縮めながら自分のこの気持ちの正体も考えていけばいい。
*****
今日は忙しすぎて一度もメッセージを送れていない。勿論小波からも何もないが必要以上に残念に思ったりはしない。
弟の時とは違いこれ以上やるとストーカー認定されてしまうのではないかという不安もあるし、こういう日があってもいいのかもしれない。
ストーカー云々は、刑罰が怖いというより小波にそういう圧をかけてしまっているのかもしれない事が怖いのだ。
はぁ……と思わず出てしまった溜め息に、柄じゃないと苦笑して視線を向けたその先に小波の姿を見つけ、ぴこん! と心臓が跳ねた。
この機を逃すまいとスキップする勢いで近づこうとして、すぐに誰かとふたりでいる事に気がつき足が止まる。
ここからでは小波の表情までは確認できなかったが、男の腕が小波の腰に回されており愛しげに見つめているのが見えた。
さっきまで楽し気にダンスでも踊っていたかのように飛び跳ねていた心臓がぴたりと踊るのを止めてしまった。
俺はその時、どうして小波が他と違うと思うのかが分かった。小波の事が好きなのだ。小波に自分とは違う相手がいると分かってから気づくなんて……。
俺はそのまま声をかける事はせず、踵を返しその場から立ち去った。
小波の心が綺麗な物や可愛い物で満たされるように。
俺の方は人生二度目とも言える熱量に対し小波の方は既読はつくものの殆ど反応はなく、直接会う事はあれから一度もない。冷たいという事はないが未だ温度はぬるいままのようだった。小波から何かを返して貰おうとは思っていなかったので、それは別にいいのだが――。
俺は弟の事以外わりと淡泊な方だ。今まで何人かと恋人と呼べるような関係になった事はあるが、弟ができてからはいつも弟を優先させてきた。だからか告白されて付き合い始めてもすぐにフラれて、そんなやりとりが面倒くさく思えてここしばらくは誰とも付き合っていない。なのに小波とはどんなに面倒でも失いたくはないと思えるのだ。
弟以外でこんなにも愛おしく思った事も守りたいと思った事も初めてだった。
俺は自分では気まぐれな方ではないと思っているが、これが懐かない猫や何かに対する意地なのか愛情なのか、はたまた同情なのか何なのか、何にしてもこちらを向いた途端興味を失うなんて事にはならない。絶対に。
流石に嫌われているとは思っていないが、特別好かれているとも思っていない。俺と小波はこれからなのだ。
今はまだ友人でも恋人でもない、ただの知り合い程度だ。ここで俺が諦めてしまえば簡単に終わってしまう。
そうはしたくないから、ゆっくりと距離を縮めながら自分のこの気持ちの正体も考えていけばいい。
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今日は忙しすぎて一度もメッセージを送れていない。勿論小波からも何もないが必要以上に残念に思ったりはしない。
弟の時とは違いこれ以上やるとストーカー認定されてしまうのではないかという不安もあるし、こういう日があってもいいのかもしれない。
ストーカー云々は、刑罰が怖いというより小波にそういう圧をかけてしまっているのかもしれない事が怖いのだ。
はぁ……と思わず出てしまった溜め息に、柄じゃないと苦笑して視線を向けたその先に小波の姿を見つけ、ぴこん! と心臓が跳ねた。
この機を逃すまいとスキップする勢いで近づこうとして、すぐに誰かとふたりでいる事に気がつき足が止まる。
ここからでは小波の表情までは確認できなかったが、男の腕が小波の腰に回されており愛しげに見つめているのが見えた。
さっきまで楽し気にダンスでも踊っていたかのように飛び跳ねていた心臓がぴたりと踊るのを止めてしまった。
俺はその時、どうして小波が他と違うと思うのかが分かった。小波の事が好きなのだ。小波に自分とは違う相手がいると分かってから気づくなんて……。
俺はそのまま声をかける事はせず、踵を返しその場から立ち去った。
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