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4-5「違うんだ久瑠葉、これは……」
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ほかの女の匂い。
そう言われて思いた当たるのは一人しかいない。
恋さんだ。一コマとはいえ、講義を一緒に受け、昼食まで一緒に食べた。気にしていなかったが、肩くらい触れ合っていてもおかしくはない。
久瑠葉は恐らく、その匂いを嗅ぎつけたのだ――いや、どんな嗅覚だよ。キツイ香水つけていたわけでもないのに。
女にはわかるものなのか? 男のおれにはわからん。
まあ、そんなことを考えていても仕方がない。
今は久瑠葉の誤解を解かねば……。
「違うんだ久瑠葉、これは……」
言いかけたところで気付く。
久瑠葉がいない。
一瞬目を離した隙に、けむりのように消えてしまった――と思ったけれど、前方、遥か彼方に豆粒のように小さくなった久瑠葉の影を見つけた。
「あいつ、足早いんだよな」
おれも急いで地面を蹴る――が、なかなか差が縮まらない。あいつよりは早いはずだが、最初のハンデが少し大きすぎた。
まあ、家に向かって走っているから、問題ないか。
そう思って、家まで、見失わない程度の速さで追いかける。
やがて、家に辿り着く。
久瑠葉はマンションのエレベーターを使ったらしく、おれはそれを待つのがもどかしくて、階段を駆け上がった。
階段を上り終え通路に出ると、久瑠葉が家の中に入っていくのがみえた。
おれも急いで後を追う。
玄関のドアノブを掴んで、勢いよく引き開けようとする。
しかし、ドアは開かない。
久瑠葉が中から鍵を掛けたのだ。
おれは鞄を漁って、鍵を探す。
しかし……。
何度探しても、鍵が見つからない。
どこかに落としたか?
仕方が無いのでスマホで久瑠葉に電話する。
もしかしたら出てくれないかも、と思ったけれど、数回のコール音の後、通話状態へと、切り替わった。
久瑠葉の乱れた呼吸だけが聞こえてくる。
走った直後だから、呼吸を整えているようだ。
おれも、その間に呼吸を整える。
少し時間を空けて、小さな声が聞こえてきた。
「……何、お兄ちゃん?」
「鍵、落としたみたいなんだ。玄関開けてくれないか?」
「……」
無言のあと、通話は切れてしまった。
これは、相当機嫌悪いな……。開けてくれないかも。
と思ったが、玄関の奥から久瑠葉の小さな足音が聞こえてきて、ドアがかちりと音を立てた。
怒っていても、兄を締め出したりなんかしない。
久瑠葉はとってもいい子だった。
そう言われて思いた当たるのは一人しかいない。
恋さんだ。一コマとはいえ、講義を一緒に受け、昼食まで一緒に食べた。気にしていなかったが、肩くらい触れ合っていてもおかしくはない。
久瑠葉は恐らく、その匂いを嗅ぎつけたのだ――いや、どんな嗅覚だよ。キツイ香水つけていたわけでもないのに。
女にはわかるものなのか? 男のおれにはわからん。
まあ、そんなことを考えていても仕方がない。
今は久瑠葉の誤解を解かねば……。
「違うんだ久瑠葉、これは……」
言いかけたところで気付く。
久瑠葉がいない。
一瞬目を離した隙に、けむりのように消えてしまった――と思ったけれど、前方、遥か彼方に豆粒のように小さくなった久瑠葉の影を見つけた。
「あいつ、足早いんだよな」
おれも急いで地面を蹴る――が、なかなか差が縮まらない。あいつよりは早いはずだが、最初のハンデが少し大きすぎた。
まあ、家に向かって走っているから、問題ないか。
そう思って、家まで、見失わない程度の速さで追いかける。
やがて、家に辿り着く。
久瑠葉はマンションのエレベーターを使ったらしく、おれはそれを待つのがもどかしくて、階段を駆け上がった。
階段を上り終え通路に出ると、久瑠葉が家の中に入っていくのがみえた。
おれも急いで後を追う。
玄関のドアノブを掴んで、勢いよく引き開けようとする。
しかし、ドアは開かない。
久瑠葉が中から鍵を掛けたのだ。
おれは鞄を漁って、鍵を探す。
しかし……。
何度探しても、鍵が見つからない。
どこかに落としたか?
仕方が無いのでスマホで久瑠葉に電話する。
もしかしたら出てくれないかも、と思ったけれど、数回のコール音の後、通話状態へと、切り替わった。
久瑠葉の乱れた呼吸だけが聞こえてくる。
走った直後だから、呼吸を整えているようだ。
おれも、その間に呼吸を整える。
少し時間を空けて、小さな声が聞こえてきた。
「……何、お兄ちゃん?」
「鍵、落としたみたいなんだ。玄関開けてくれないか?」
「……」
無言のあと、通話は切れてしまった。
これは、相当機嫌悪いな……。開けてくれないかも。
と思ったが、玄関の奥から久瑠葉の小さな足音が聞こえてきて、ドアがかちりと音を立てた。
怒っていても、兄を締め出したりなんかしない。
久瑠葉はとってもいい子だった。
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