［完結］妹が些細な事で欲情するから困る

4-7「影守恋、か……」

　自室で一人、パソコンに向かいながら物思いに耽る。
　影守恋かげもりれん。
　黒髪ショートで、スタイル抜群で、お嬢様風。
　気品のある行動と話し方。
　少し質問攻めをしすぎるところが玉に瑕なような気もするが、こちらに興味をもってくれているというのは悪くない。
　果たして、この影守恋さんと親交を重ねるうちに――おれは彼女に好意を抱くようになるのだろうか？
　久瑠葉が言っていたように、おれはいつか、誰かに惚れて、付き合い、結婚するのだろうか？
　…………。
　あまり想像できないな。
　おれはきっと、今がずっと続けばいいと、そう思っているのだろう。
　変化を好まない。
　変化を望まない。
　ただ、それでも環境は日々変わっていく。
　そして、今日はいつもより少し急激な変化が起きた。
　影守恋と知り合って――久瑠葉の心の内を知った。
　だから、おれも変化を受け入れなければならない。
　少なくとも、そうできるように努力すべきなのだろう。

「影守恋、か……」

　そう口に出したところで、おれは何か引っかかりを覚えた。
　……影守？
　どこかで聞いたことがあるような気がする。
　なんだ？
　思考を巡らせ、すぐにとある企業を思い出した。
　カゲモリグループ――カゲモリ自動車を中核として、世界に名を馳せる企業グループだ。

　最初にその苗字を聞いた時は、可愛い女子と話していた緊張感で気がつかなかったが、彼女が好きではないと言ったその珍しい苗字は、その企業の代表取締役と同じものだったのだ。
　同姓なだけかもしれないが、もしかしたら、彼女は正真正銘のお嬢様なのかもしれない。