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7-1「だいじょーぶ! なんとかなるなるっ!」
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夏季休暇の初日、恋さんに監禁されてから約一か月後、おれは久瑠葉たちに救出された。
恋さんは一度は逮捕されたものの、影守家の金と権力で事件は揉み消されてしまった。
ただし、恋さんの行動は影守家によって監視・制限されることになり、もうおれの前に現れることはないそうだ。
おれは、大学を止め、遠く離れた土地に引っ越すことにした。
「本当に、良かったのか?」
飛行機の中、おれは久瑠葉に問いかける。
「ん? 何が?」
「何がって……お前まで引っ越すことなかったのに……」
「いやいや、お兄ちゃんが引っ越すのに、妹のあたしが引っ越さないわけないでしょ。お兄ちゃん無くして妹無し、だよ!」
「意味わからんし……」
「卵子!?」
「中学生男子か!」
久瑠葉の頭に軽くチョップを入れる。
「条件反射でつい……」
叩かれたところをさすりながら、たはは、と笑う久瑠葉。
そんな久瑠葉に溜め息をついた後、仕切り直すようにおれは言った。
「で、真面目な話。お前は引っ越しだけじゃなく、転校もすることになっただろ?」
おれの言葉を受けて、久瑠葉は優しい笑みを向けてきた。
「そんなことは大して問題じゃないんだよ。今どき離れててもスマホ一つで繋がれちゃう時代だし……。むしろ、転校なんて稀有な経験ができて、ラッキーだよっ!」
「前向きだな……」
ただ、この前向きさは、おれに気を使ってのものだと思う。事件後のおれが、なるべく気楽に過ごせるように、と。
「それに、北の大地だよ! 海の幸に、ラーメン、そして新鮮な牛乳! こころ踊りますな~」
久瑠葉の表情が緩み、だらしない顔になる。それに……。
「よだれ垂れてんぞ」
「おっと、失礼」
ハンカチでさっと口元を拭う。
そんな久瑠葉を横目に見ながら、口を開く。
「観光ならそうなんだけどな。住むとなると、やっぱり話が違うからな……あと二カ月もすれば雪降ってくるし……そうなると雪かき大変だし、吹雪は本当に命取りだし……よそ者のおれ達にとっては厳しいぞ」
「考え過ぎだって。だいじょーぶ! なんとかなるなるっ!」
久瑠葉の満面の笑みは何ともアホっぽかったが、未来への不安とか過去の嫌な事とかが全部どこかに言ってしまうような、そんな笑みだった。
おれには久瑠葉に伝えなきゃいけない気持ちがある。
けれど、焦ることはない。
新しい場所で再出発して、伝えられるようになったときに、伝えればいい。
恋さんは一度は逮捕されたものの、影守家の金と権力で事件は揉み消されてしまった。
ただし、恋さんの行動は影守家によって監視・制限されることになり、もうおれの前に現れることはないそうだ。
おれは、大学を止め、遠く離れた土地に引っ越すことにした。
「本当に、良かったのか?」
飛行機の中、おれは久瑠葉に問いかける。
「ん? 何が?」
「何がって……お前まで引っ越すことなかったのに……」
「いやいや、お兄ちゃんが引っ越すのに、妹のあたしが引っ越さないわけないでしょ。お兄ちゃん無くして妹無し、だよ!」
「意味わからんし……」
「卵子!?」
「中学生男子か!」
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「条件反射でつい……」
叩かれたところをさすりながら、たはは、と笑う久瑠葉。
そんな久瑠葉に溜め息をついた後、仕切り直すようにおれは言った。
「で、真面目な話。お前は引っ越しだけじゃなく、転校もすることになっただろ?」
おれの言葉を受けて、久瑠葉は優しい笑みを向けてきた。
「そんなことは大して問題じゃないんだよ。今どき離れててもスマホ一つで繋がれちゃう時代だし……。むしろ、転校なんて稀有な経験ができて、ラッキーだよっ!」
「前向きだな……」
ただ、この前向きさは、おれに気を使ってのものだと思う。事件後のおれが、なるべく気楽に過ごせるように、と。
「それに、北の大地だよ! 海の幸に、ラーメン、そして新鮮な牛乳! こころ踊りますな~」
久瑠葉の表情が緩み、だらしない顔になる。それに……。
「よだれ垂れてんぞ」
「おっと、失礼」
ハンカチでさっと口元を拭う。
そんな久瑠葉を横目に見ながら、口を開く。
「観光ならそうなんだけどな。住むとなると、やっぱり話が違うからな……あと二カ月もすれば雪降ってくるし……そうなると雪かき大変だし、吹雪は本当に命取りだし……よそ者のおれ達にとっては厳しいぞ」
「考え過ぎだって。だいじょーぶ! なんとかなるなるっ!」
久瑠葉の満面の笑みは何ともアホっぽかったが、未来への不安とか過去の嫌な事とかが全部どこかに言ってしまうような、そんな笑みだった。
おれには久瑠葉に伝えなきゃいけない気持ちがある。
けれど、焦ることはない。
新しい場所で再出発して、伝えられるようになったときに、伝えればいい。
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