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任務前からドタバタしてます
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「ここかぁ」
むせかえる土の香り、風に揺れる木々の音、時折聞こえる鳥の囀りに包まれた自然の中を歩くこと数時間。
ロアルド・ジェルツは、晴れ渡る青空色をした髪から滴る汗を手で拭いながら目的地を注意深く見渡した。
山と山の間にある谷地形に、蜘蛛の巣を広げた様な街がひっそりとある。
見た感じ普通過ぎて観光に来たんじゃないかと勘違いしそうになりながら、背後から追いついてきた相方を振り返った。
相方アルノ・キュランクは、ロアルドとは対照的に汗ひとつかかずに漆黒のコートを着崩す事もなく静かに眼下の街を見下ろしている。
羨ましくなるほどつるつるのスキンヘッドに幾何学模様の入れ墨が顔の半分を占め、耳、鼻、唇には無数のピアス。
おまけにいい匂いがする。
そんな、かっこいいを全部詰め込んだ理想的な男を恨めしそうに見ながら、こんな服着てられないとロアルドはその場でコートを脱いだ。
汗で濡れた服に風が当たり冷たくて気持ちがいい。
「もっとさぁ、季節やその時の状況に合った服を支給してくれてもいいと思わない?」
不満そうなロアルドの呟きに、脱ぎ捨てられたコートを拾いながらアルノは答えた。
「文句があるなら裸でいろ」
「ひどっ」
秘密組織“天狼”。
裏社会を監視している猛者揃いの集団で、白銀に輝く狼のブローチがついた漆黒のコートを身に纏い腕に巻かれた腕章の色によって部門が異なる。
ロアルド達の腕章は白色で、警察でも手に負えない案件を解決する通称“何でも屋”。
前回の任務から日を置かずに派遣されてきた二人だが、すでに小さなトラブルが起きていた。
「どうだ?タイムの気配はあるか?」
「んー……ないねぇ」
ここへ来る前に、喉が渇いたと騒ぐロアルドの為に空から水が飲めそうな所がないか探しに行った一羽の鳥が行方知れずなのだ。
「……引き返す事はしない」
念を押す様に低い声で忠告するアルノにロアルドも同調する。
「俺だって嫌だよ!もう戻る気力も体力もないからね!」
偉そうに言うロアルドに、あからさまな溜息で答えながらアルノは懐にしまっておいた資料を取り出した。
資料と言っても情報が少なすぎて紙一枚なのだが、そこに書かれている内容は不気味でしかない。
「“死の街”か……」
今フェイドでは一日に一人、必ず死ぬという怪奇現象が起きていた。
病死でも事故死でもない。運命という名の必然的な死……
死を回避するには領主に生娘を捧げよ、というお触れ書きまで出回っているという。
暗殺者でも潜んでいるのだろうか?
それとも呪術絡み?
はたまた怪物の仕業か?
国境が近くにあるわけでもなく、敵国が攻めて来るほど価値がある場所でもない。
辺鄙な街で起きている怪奇現象に地元警察ではなす術がなくなり、今回お鉢が回って来たわけなのだが……
「とりあえず情報収集からだな」
「そーだねぇ。今日中に着くかなぁ?」
「着く」
「えぇぇ?着かせる、の間違いじゃなくて?」
太陽がゆっくりと傾き出している空を指差すロアルドにアルノは不敵な笑みで答えた。
「それはお前次第だろ」
「ですよね……はいはい、歩きまーす」
ぶうぶう文句を垂れながら重くなった身体に鞭打って、ロアルドは再び歩き出した。
目指す街は不穏だが、今日こそは宿でゆっくり休みたい。死にたくはないけれど、休みたい一心で足を動かす。
「頑張れ!俺っ!!」
小さく自分を鼓舞しながら、さらに歩くこと数時間。
ついに足の痛みがピークを迎えたのと街の入り口と思われる場所に辿り着いた頃にはどっぷりと日が暮れていた。
「つ、ついたぁ」
目の前に広がる淡い光の粒が歓喜の涙でぼやけて見える。
良かった、辿り着いて良かった。
そう思いながら誘われる様にふらふら街の方へ歩き出したロアルドの後ろで、先に異変に気づいたのはアルノだった。
「ロアルド!!」
「え?」
緊迫した声に振り向こうとした際に、何かを踏んでしまった足の裏の感覚に肝が冷えた。
すぐに飛び退いたが、異物は見当たらない。
首を傾げながらアルノを見ると、地面に片手をつけたままの姿勢でこちらを見ていた。
やったな?と、その真紅の瞳が真っ直ぐ問うている。
「わ、わざとじゃないから!!」
咎める様に細められた瞳に耐えきれず目を逸らした。
や、やばい。どうしよ。あれは絶対キレてる。
どうかこのまま何も起こりませんよーに!!
その時だった。
突如として空から黒い鉄の棒が街を囲う様に円を描きながら降り注ぎ、激しい音と地面に突き刺さる振動で大地が揺れる。
「嘘でしょ?」
呆けているロアルドとアルノを隔てて完成された一種の結界とほぼ同時に聞こえてきた街からの不気味な警報音。
ロアルドの願い虚しく派手にやらかした惨状を前に、アルノは静かに立ち上がった。
「ロアルド」
「は、はい!!」
「これは解除に時間がかかる」
「そ、そしたら俺は先に街で聞き込みしてます!!あと宿も確保してくる!!」
パァっとあからさまに顔を輝かせるロアルド。
まぁ、こんな所でお灸をすえてもコイツには意味がないと真顔になりながらアルノは話を続ける。
「それと。いくら俺でも、これ以上の面倒事は許せない。わかるか?」
「つまり“歌うな”って事だね!!」
「何故そうなる」
「大丈夫!任せといて!!」
ロアルドは満面の笑顔で小指を突き出し、勝手に約束を交わした。
もう取り合う事すら諦めたアルノに早く行けと追っ払われたロアルドは、元気に両手を振りながら街中へと消えていった。
「いってきまーーーーす」
あんまり楽しそうに出発していくロアルドに釣られ、手を振りながらアルノは自問自答する。
何でこうアイツはトラブルばかり撒き散らすのだろうか?
トラブルメーカーだからか。なるほど。
「先が思いやられる」
一筋縄ではいかないだろう今回の任務の重圧に、はたして自分は耐えられるだろうかと考え……それはあまりにも不毛な問題だと気づいたアルノは、すぐに考える事をやめた。
むせかえる土の香り、風に揺れる木々の音、時折聞こえる鳥の囀りに包まれた自然の中を歩くこと数時間。
ロアルド・ジェルツは、晴れ渡る青空色をした髪から滴る汗を手で拭いながら目的地を注意深く見渡した。
山と山の間にある谷地形に、蜘蛛の巣を広げた様な街がひっそりとある。
見た感じ普通過ぎて観光に来たんじゃないかと勘違いしそうになりながら、背後から追いついてきた相方を振り返った。
相方アルノ・キュランクは、ロアルドとは対照的に汗ひとつかかずに漆黒のコートを着崩す事もなく静かに眼下の街を見下ろしている。
羨ましくなるほどつるつるのスキンヘッドに幾何学模様の入れ墨が顔の半分を占め、耳、鼻、唇には無数のピアス。
おまけにいい匂いがする。
そんな、かっこいいを全部詰め込んだ理想的な男を恨めしそうに見ながら、こんな服着てられないとロアルドはその場でコートを脱いだ。
汗で濡れた服に風が当たり冷たくて気持ちがいい。
「もっとさぁ、季節やその時の状況に合った服を支給してくれてもいいと思わない?」
不満そうなロアルドの呟きに、脱ぎ捨てられたコートを拾いながらアルノは答えた。
「文句があるなら裸でいろ」
「ひどっ」
秘密組織“天狼”。
裏社会を監視している猛者揃いの集団で、白銀に輝く狼のブローチがついた漆黒のコートを身に纏い腕に巻かれた腕章の色によって部門が異なる。
ロアルド達の腕章は白色で、警察でも手に負えない案件を解決する通称“何でも屋”。
前回の任務から日を置かずに派遣されてきた二人だが、すでに小さなトラブルが起きていた。
「どうだ?タイムの気配はあるか?」
「んー……ないねぇ」
ここへ来る前に、喉が渇いたと騒ぐロアルドの為に空から水が飲めそうな所がないか探しに行った一羽の鳥が行方知れずなのだ。
「……引き返す事はしない」
念を押す様に低い声で忠告するアルノにロアルドも同調する。
「俺だって嫌だよ!もう戻る気力も体力もないからね!」
偉そうに言うロアルドに、あからさまな溜息で答えながらアルノは懐にしまっておいた資料を取り出した。
資料と言っても情報が少なすぎて紙一枚なのだが、そこに書かれている内容は不気味でしかない。
「“死の街”か……」
今フェイドでは一日に一人、必ず死ぬという怪奇現象が起きていた。
病死でも事故死でもない。運命という名の必然的な死……
死を回避するには領主に生娘を捧げよ、というお触れ書きまで出回っているという。
暗殺者でも潜んでいるのだろうか?
それとも呪術絡み?
はたまた怪物の仕業か?
国境が近くにあるわけでもなく、敵国が攻めて来るほど価値がある場所でもない。
辺鄙な街で起きている怪奇現象に地元警察ではなす術がなくなり、今回お鉢が回って来たわけなのだが……
「とりあえず情報収集からだな」
「そーだねぇ。今日中に着くかなぁ?」
「着く」
「えぇぇ?着かせる、の間違いじゃなくて?」
太陽がゆっくりと傾き出している空を指差すロアルドにアルノは不敵な笑みで答えた。
「それはお前次第だろ」
「ですよね……はいはい、歩きまーす」
ぶうぶう文句を垂れながら重くなった身体に鞭打って、ロアルドは再び歩き出した。
目指す街は不穏だが、今日こそは宿でゆっくり休みたい。死にたくはないけれど、休みたい一心で足を動かす。
「頑張れ!俺っ!!」
小さく自分を鼓舞しながら、さらに歩くこと数時間。
ついに足の痛みがピークを迎えたのと街の入り口と思われる場所に辿り着いた頃にはどっぷりと日が暮れていた。
「つ、ついたぁ」
目の前に広がる淡い光の粒が歓喜の涙でぼやけて見える。
良かった、辿り着いて良かった。
そう思いながら誘われる様にふらふら街の方へ歩き出したロアルドの後ろで、先に異変に気づいたのはアルノだった。
「ロアルド!!」
「え?」
緊迫した声に振り向こうとした際に、何かを踏んでしまった足の裏の感覚に肝が冷えた。
すぐに飛び退いたが、異物は見当たらない。
首を傾げながらアルノを見ると、地面に片手をつけたままの姿勢でこちらを見ていた。
やったな?と、その真紅の瞳が真っ直ぐ問うている。
「わ、わざとじゃないから!!」
咎める様に細められた瞳に耐えきれず目を逸らした。
や、やばい。どうしよ。あれは絶対キレてる。
どうかこのまま何も起こりませんよーに!!
その時だった。
突如として空から黒い鉄の棒が街を囲う様に円を描きながら降り注ぎ、激しい音と地面に突き刺さる振動で大地が揺れる。
「嘘でしょ?」
呆けているロアルドとアルノを隔てて完成された一種の結界とほぼ同時に聞こえてきた街からの不気味な警報音。
ロアルドの願い虚しく派手にやらかした惨状を前に、アルノは静かに立ち上がった。
「ロアルド」
「は、はい!!」
「これは解除に時間がかかる」
「そ、そしたら俺は先に街で聞き込みしてます!!あと宿も確保してくる!!」
パァっとあからさまに顔を輝かせるロアルド。
まぁ、こんな所でお灸をすえてもコイツには意味がないと真顔になりながらアルノは話を続ける。
「それと。いくら俺でも、これ以上の面倒事は許せない。わかるか?」
「つまり“歌うな”って事だね!!」
「何故そうなる」
「大丈夫!任せといて!!」
ロアルドは満面の笑顔で小指を突き出し、勝手に約束を交わした。
もう取り合う事すら諦めたアルノに早く行けと追っ払われたロアルドは、元気に両手を振りながら街中へと消えていった。
「いってきまーーーーす」
あんまり楽しそうに出発していくロアルドに釣られ、手を振りながらアルノは自問自答する。
何でこうアイツはトラブルばかり撒き散らすのだろうか?
トラブルメーカーだからか。なるほど。
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