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今度は、一緒に
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今度は、一緒に
おれ、コウジ。36歳の会社員。
街コンで、同じ高校・同じ水泳部だったレナと再会した。
当時、彼女はマドンナ的な存在。でも今は少しぽっちゃりしていて──それでも、可愛さは変わっていなかった。
それがきっかけで、レナと週に一度ウォーキングを始めた。やがて一緒にプールにも通うようになり、自然と距離が縮まっていった。そして俺たちは、結婚することになった。
新居への引っ越しも終わり、初めての朝を迎えた。
まだカーテンもない部屋。朝日で目が覚めてしまった。時間は7時くらい。日曜日だし、このまま2度寝しようかと体を横に向けると、レナはまだ寝ていた。彼女の手が俺のお腹あたりに添えられていて、辺りにはダンボールが積まれている。
「引っ越してきたんだな」
そんな実感がわいてきた。俺は、レナの手にそっと自分の手を重ねた。柔らかくて、すべすべだ。
「……あれ、コウジ? おはよう。起きてたんだ」
「おはよう。昨日は寝ちゃったね」
「うん、楽しみにしてたのにね」
「今からでも、遅くないんじゃない?」
「もう……好きなんだから。でも、私も……」
朝からだったが、俺たちは体を重ねた。最近は子作りという名目だったが、何も考えず、赴くままに触れ合うのはやっぱり最高だった。そして、そのまま2度寝してしまった。
……とはいえ、そうも言っていられない。この家で生活を始めるために、やることは山ほどある。ダンボールの片付けもそうだし、生活用品や食料品も買い揃えなければ。
レナは買い出し担当、俺はダンボールの整理を担当することになった。2階で作業していると、下からレナの声が響いた。
「コウジー! 休憩しよー!」
リビングにはシュークリームとブラックコーヒーが用意されていた。
「そういえば、お昼食べてないね」
「私も忘れてた。キッチン周り片付けてたのにね」
キッチンも整って、少しずつ生活感が出てきた。
「後でさ、家具見に行こうよ。夕飯も合わせてさ」
「わかったよ」
レナの横には、買いたい物とサイズが書かれたメモが置かれていた。
おやつを食べ終え、俺たちはすぐに出かけることにした。
ここからはレナの時間。俺にできることはほとんどなく、ボーッと見ているだけだった。
「これさ、どっちの色がいいかな?」
……これは、男が試される質問だ。下手に「どっちでもいい」とか言うと、あとが怖い。
「俺は……こっちの色がいいかな」
「私はこっちなんだよね~」
「そうだね。じゃあ、レナのにしようか」
……やっぱり。もう答えは決まってたんだよな。
そうか、女性が聞くときは、答えを決めた上で背中を押してほしいときなんだな。
先人たちの教え、身に沁みる。
夜はフードコートで軽く済ませて、帰宅した。
明日、明後日と俺たちは有給を取ってある。疲れもあるし、片付けや役所の手続きも山ほどある。
ちょうどそのとき、例の“やつ”の報告が届いた。
この土日、友達がしっかりと連れ回してくれていたらしい。「旅行代出すよ」とメッセージを送ったが、返ってきたのは「いらねえよ。俺からのご祝儀だ。2人で幸せになってくれ」という言葉だった。
レナにそのメッセージを見せると、安心した表情を見せた。
──これで、全部終わっただろう。そう願う。
風呂に入り、部屋に戻ると、レナが一枚の紙を差し出してきた。
「コウジ、ちょっと待って。これ、明日出すから。一緒に書こうよ」
それは──婚姻届だった。
丁寧に、ひと文字ひと文字を噛みしめるように記入した。あまり字は綺麗じゃないが、心を込めて書いた。
書き終えた俺たちは、お酒で乾杯する。
「コウジ、明日さ、役所に行って、ソファ選びに行こう」
「うん、いいよ」
「……あのさ」
レナの声で、ふと時間が止まったような気がした。
「一緒に行ってくれる?」
「えっ? いや、もちろん。2人のことだからさ」
レナは俺の手をぎゅっと握る。
「ありがとう。一緒に行こうね、婚姻届」
聞けば、前の結婚のときは、ほとんど一人だったらしい。婚姻届も、家具選びも──全部一人だったと。
「レナ。2人で決めようって言ったんだから。大丈夫だよ」
「うん、ごめんね、変なこと聞いちゃって」
お酒を飲み干し、歯を磨いて、並んで鏡に映る笑顔を見た。ああ、幸せって、こういう瞬間なんだな。
布団に入ると、レナはすぐに寝息を立て始めた。あまりの可愛さに、そっとキスをする。
「……うーん」
あれ、起こしちゃったかな。
ごめん。でも俺、レナが好きなんだ。
おれ、コウジ。36歳の会社員。
街コンで、同じ高校・同じ水泳部だったレナと再会した。
当時、彼女はマドンナ的な存在。でも今は少しぽっちゃりしていて──それでも、可愛さは変わっていなかった。
それがきっかけで、レナと週に一度ウォーキングを始めた。やがて一緒にプールにも通うようになり、自然と距離が縮まっていった。そして俺たちは、結婚することになった。
新居への引っ越しも終わり、初めての朝を迎えた。
まだカーテンもない部屋。朝日で目が覚めてしまった。時間は7時くらい。日曜日だし、このまま2度寝しようかと体を横に向けると、レナはまだ寝ていた。彼女の手が俺のお腹あたりに添えられていて、辺りにはダンボールが積まれている。
「引っ越してきたんだな」
そんな実感がわいてきた。俺は、レナの手にそっと自分の手を重ねた。柔らかくて、すべすべだ。
「……あれ、コウジ? おはよう。起きてたんだ」
「おはよう。昨日は寝ちゃったね」
「うん、楽しみにしてたのにね」
「今からでも、遅くないんじゃない?」
「もう……好きなんだから。でも、私も……」
朝からだったが、俺たちは体を重ねた。最近は子作りという名目だったが、何も考えず、赴くままに触れ合うのはやっぱり最高だった。そして、そのまま2度寝してしまった。
……とはいえ、そうも言っていられない。この家で生活を始めるために、やることは山ほどある。ダンボールの片付けもそうだし、生活用品や食料品も買い揃えなければ。
レナは買い出し担当、俺はダンボールの整理を担当することになった。2階で作業していると、下からレナの声が響いた。
「コウジー! 休憩しよー!」
リビングにはシュークリームとブラックコーヒーが用意されていた。
「そういえば、お昼食べてないね」
「私も忘れてた。キッチン周り片付けてたのにね」
キッチンも整って、少しずつ生活感が出てきた。
「後でさ、家具見に行こうよ。夕飯も合わせてさ」
「わかったよ」
レナの横には、買いたい物とサイズが書かれたメモが置かれていた。
おやつを食べ終え、俺たちはすぐに出かけることにした。
ここからはレナの時間。俺にできることはほとんどなく、ボーッと見ているだけだった。
「これさ、どっちの色がいいかな?」
……これは、男が試される質問だ。下手に「どっちでもいい」とか言うと、あとが怖い。
「俺は……こっちの色がいいかな」
「私はこっちなんだよね~」
「そうだね。じゃあ、レナのにしようか」
……やっぱり。もう答えは決まってたんだよな。
そうか、女性が聞くときは、答えを決めた上で背中を押してほしいときなんだな。
先人たちの教え、身に沁みる。
夜はフードコートで軽く済ませて、帰宅した。
明日、明後日と俺たちは有給を取ってある。疲れもあるし、片付けや役所の手続きも山ほどある。
ちょうどそのとき、例の“やつ”の報告が届いた。
この土日、友達がしっかりと連れ回してくれていたらしい。「旅行代出すよ」とメッセージを送ったが、返ってきたのは「いらねえよ。俺からのご祝儀だ。2人で幸せになってくれ」という言葉だった。
レナにそのメッセージを見せると、安心した表情を見せた。
──これで、全部終わっただろう。そう願う。
風呂に入り、部屋に戻ると、レナが一枚の紙を差し出してきた。
「コウジ、ちょっと待って。これ、明日出すから。一緒に書こうよ」
それは──婚姻届だった。
丁寧に、ひと文字ひと文字を噛みしめるように記入した。あまり字は綺麗じゃないが、心を込めて書いた。
書き終えた俺たちは、お酒で乾杯する。
「コウジ、明日さ、役所に行って、ソファ選びに行こう」
「うん、いいよ」
「……あのさ」
レナの声で、ふと時間が止まったような気がした。
「一緒に行ってくれる?」
「えっ? いや、もちろん。2人のことだからさ」
レナは俺の手をぎゅっと握る。
「ありがとう。一緒に行こうね、婚姻届」
聞けば、前の結婚のときは、ほとんど一人だったらしい。婚姻届も、家具選びも──全部一人だったと。
「レナ。2人で決めようって言ったんだから。大丈夫だよ」
「うん、ごめんね、変なこと聞いちゃって」
お酒を飲み干し、歯を磨いて、並んで鏡に映る笑顔を見た。ああ、幸せって、こういう瞬間なんだな。
布団に入ると、レナはすぐに寝息を立て始めた。あまりの可愛さに、そっとキスをする。
「……うーん」
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