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優しさとムッツリスケベ
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優しさとムッツリスケベ
おれ、コウジ。43歳の会社員。
街で、同じ高校・同じ水泳部だったレナと再会した。
当時、彼女はマドンナ的な存在だった。でも今は少しぽっちゃりしていて──それでも、可愛さは変わってなかった。
それがきっかけで、レナと週に一度ウォーキングを始めた。やがて一緒にプールにも通うようになり、自然と距離が縮まっていった。そして俺たちは結婚。レナは女の子のユキ、そして男の子のショウスケを出産した。
ユキは小学4年生、ショウスケは小学1年生になった。
小さい頃のユキは「パパ大好き」なんてよく言っていたけど、今では一人で寝るように。通っているプール教室のイケメンコーチにゾッコンらしい。そりゃ、40代のぽっこりお腹より、20代の細マッチョのほうがいいに決まってる。
ショウスケも最近は本を読むことが増えて、「自分の部屋が欲しい」と言い出すようになった。
気づけば、家族4人が別々の部屋で寝るようになっていた。
そんなある日、俺に出張の話が舞い込んだ。月曜から金曜までの5日間。技術職だから出張は滅多にないけれど、今回は他地域への展開のため、案件を終えたついでにレクチャーを頼みたいとのことだった。
家族に伝えると、
「いいな~、旅行じゃん!」
「行きたいよ~!」
なんて軽いノリで返された。まぁ、半分は当たってる。
するとレナが言った。
「私たちも土曜日に合流して、そっちで遊ぼうよ」
「いいね、あまり行かない地域だし」
「行く行く~!」
たまにはいいかと思い、了承した。
出張が始まった。もちろんメインは仕事だ。経験の浅い人も多く、説明や計画の詰めには苦労した。
夜遅くまでレクチャーを続け、なんとか形にしていく。
それでも遅くなるたび、レナには「終わったよ」とメッセージを送り、レナからは子供の写真つきで「おやすみ」が返ってくる。それを楽しみに、出張を乗り切っていた。
金曜日。仕事が無事に終わり、俺は胸を撫で下ろした。
すると同僚たちが声をかけてきた。
「ありがとね、これから飲みに行くなんてどう?」
一週間ともに頑張った仲間だ。無下にはできない。
「いいですね。行きましょう」
「いい店、あるんだよ」
案内されたのは有名な飲み屋街だった。料理もうまいし、つい、いつもより飲みすぎてしまう。
「ねぇ、もう一軒行こうよ。楽しませるからさ」
理性は弱く、「いいですね」と返してしまった。
次に連れて行かれたのは、女性と話せる“大人のお店”。来たのは何年ぶりだろう。
席に着くと、隣に女性が座った。
「初めまして、ルナっていいます」
胸元の開いたドレスに長いスリットから見える足。そして、どこかレナに似た顔。
「結婚されてるんですね。どうしてお店に?」
「いや~、まぁ付き合いっていうか…」
「あら、かわいい。正直なんですね」
こんなとき、気の利いた男なら粋なセリフのひとつでも言えるのだろう。
俺たちの会話は、次第に変化していった。
「ねぇ、相談してもいい?」
「どうぞ、僕でよければ」
「最近、彼氏とうまくいかなくて…」
料理をしても食べてくれなかったり、会話が減ったり。ルナは寂しそうに語った。
「やってあげてるって気持ちがあると、しんどいかもですね。無償の愛って言葉があるけど…」
「無償の愛…」
「僕も奥さんのために頑張ったのに、逆にありがた迷惑だったことありますよ。
そういうときって、会話して、気持ちのズレをなくすことが大事かもしれませんね。もし、その彼が本当に好きなら、ですけど」
「ふふふ。やっぱり優しい人なんですね。ありがとうございます」
「こちらこそ。楽しかったですよ」
「また会いに来てね、優しいけどムッツリスケベさん♪」
バレていた。あの谷間と足を見せられて、見ないほうが無理だ。
夢のようなひととき。普段では味わえない時間だった。
ホテルに戻り、もらった名刺を眺める。微かにルナの香水の香りが残っていた。
「ルナ、彼氏とうまくいくといいな…」なんて余計なことを考えていたら、気づけばレナに連絡していない。
どうしよう──そう思いながら、俺は眠りに落ちていった。
おれ、コウジ。43歳の会社員。
街で、同じ高校・同じ水泳部だったレナと再会した。
当時、彼女はマドンナ的な存在だった。でも今は少しぽっちゃりしていて──それでも、可愛さは変わってなかった。
それがきっかけで、レナと週に一度ウォーキングを始めた。やがて一緒にプールにも通うようになり、自然と距離が縮まっていった。そして俺たちは結婚。レナは女の子のユキ、そして男の子のショウスケを出産した。
ユキは小学4年生、ショウスケは小学1年生になった。
小さい頃のユキは「パパ大好き」なんてよく言っていたけど、今では一人で寝るように。通っているプール教室のイケメンコーチにゾッコンらしい。そりゃ、40代のぽっこりお腹より、20代の細マッチョのほうがいいに決まってる。
ショウスケも最近は本を読むことが増えて、「自分の部屋が欲しい」と言い出すようになった。
気づけば、家族4人が別々の部屋で寝るようになっていた。
そんなある日、俺に出張の話が舞い込んだ。月曜から金曜までの5日間。技術職だから出張は滅多にないけれど、今回は他地域への展開のため、案件を終えたついでにレクチャーを頼みたいとのことだった。
家族に伝えると、
「いいな~、旅行じゃん!」
「行きたいよ~!」
なんて軽いノリで返された。まぁ、半分は当たってる。
するとレナが言った。
「私たちも土曜日に合流して、そっちで遊ぼうよ」
「いいね、あまり行かない地域だし」
「行く行く~!」
たまにはいいかと思い、了承した。
出張が始まった。もちろんメインは仕事だ。経験の浅い人も多く、説明や計画の詰めには苦労した。
夜遅くまでレクチャーを続け、なんとか形にしていく。
それでも遅くなるたび、レナには「終わったよ」とメッセージを送り、レナからは子供の写真つきで「おやすみ」が返ってくる。それを楽しみに、出張を乗り切っていた。
金曜日。仕事が無事に終わり、俺は胸を撫で下ろした。
すると同僚たちが声をかけてきた。
「ありがとね、これから飲みに行くなんてどう?」
一週間ともに頑張った仲間だ。無下にはできない。
「いいですね。行きましょう」
「いい店、あるんだよ」
案内されたのは有名な飲み屋街だった。料理もうまいし、つい、いつもより飲みすぎてしまう。
「ねぇ、もう一軒行こうよ。楽しませるからさ」
理性は弱く、「いいですね」と返してしまった。
次に連れて行かれたのは、女性と話せる“大人のお店”。来たのは何年ぶりだろう。
席に着くと、隣に女性が座った。
「初めまして、ルナっていいます」
胸元の開いたドレスに長いスリットから見える足。そして、どこかレナに似た顔。
「結婚されてるんですね。どうしてお店に?」
「いや~、まぁ付き合いっていうか…」
「あら、かわいい。正直なんですね」
こんなとき、気の利いた男なら粋なセリフのひとつでも言えるのだろう。
俺たちの会話は、次第に変化していった。
「ねぇ、相談してもいい?」
「どうぞ、僕でよければ」
「最近、彼氏とうまくいかなくて…」
料理をしても食べてくれなかったり、会話が減ったり。ルナは寂しそうに語った。
「やってあげてるって気持ちがあると、しんどいかもですね。無償の愛って言葉があるけど…」
「無償の愛…」
「僕も奥さんのために頑張ったのに、逆にありがた迷惑だったことありますよ。
そういうときって、会話して、気持ちのズレをなくすことが大事かもしれませんね。もし、その彼が本当に好きなら、ですけど」
「ふふふ。やっぱり優しい人なんですね。ありがとうございます」
「こちらこそ。楽しかったですよ」
「また会いに来てね、優しいけどムッツリスケベさん♪」
バレていた。あの谷間と足を見せられて、見ないほうが無理だ。
夢のようなひととき。普段では味わえない時間だった。
ホテルに戻り、もらった名刺を眺める。微かにルナの香水の香りが残っていた。
「ルナ、彼氏とうまくいくといいな…」なんて余計なことを考えていたら、気づけばレナに連絡していない。
どうしよう──そう思いながら、俺は眠りに落ちていった。
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