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「お嬢様、ご無事で何よりです」
エルメラルド公爵邸の大広間に入った瞬間、使用人たちが口々に歓喜の声をあげる。グレイスは緊張した面持ちで、その反応を受け止めた。
「ご心配をおかけしました。……私、帰ってきました」
グレイスは深く頭を下げる。かつては王太子妃として優雅に振る舞うことが当たり前だったが、今の彼女にそんな傲慢さは微塵もない。むしろ、使用人たちの温かい歓迎に胸がいっぱいになる。
「お姉様、私が席を用意してきます。まずは一度ゆっくり休んで」
シャーロットが慌ただしく周囲に指示を出す。だが、その前に公爵家の当主――グレイスの父が現れた。
「グレイス。戻ってくれてよかった。おまえが行方不明の間、どれほど心配したことか」
父の目には安堵とともに複雑な感情が混ざっている。グレイスはその声を聞き、胸に熱いものが込み上げた。どんな噂があろうと、家族の愛情は変わらないと感じられたからだ。
「ごめんなさい。父様にも迷惑をかけました。でも、私、王宮に戻ってきちんと話がしたいの。……自分の名誉を取り戻したい」
毅然とした口調で言う娘の姿に、公爵は驚いた表情を浮かべる。今までのグレイスならば、もう少し大人しく父の意向を伺うはず。それがここにきて、はっきりと意思を示すようになった。
「それはおまえの権利だ。公爵家としても協力しよう。……だが、王宮に戻るのは危険だ。おまえを悪者扱いした勢力が、まだ蠢いている」
公爵の顔には深い苦悩の色が漂う。貴族社会は表面上の礼儀を繕いながらも、水面下では暗い思惑が渦巻いているのは周知の事実だ。ハロルドを取り巻く人々、そしてソフィアの存在を考えると、グレイスが安全に行動できる保証はどこにもない。
「私も、そのことはわかっています。でも、私は逃げないわ。父様、どうか私にもう一度だけ力を貸してください」
グレイスは真っ直ぐに父を見つめる。父はしばらく考え込むように目を伏せ、やがて顔を上げた。
「わかった。私もおまえの無実を信じている。王宮がどれほどの闇を抱えていようと、公爵家の名にかけて守ろう」
それを聞いて、シャーロットは胸を撫で下ろす。姉が帰還しただけでなく、父の協力を得られるのは大きい。あとは母や他の貴族たちをどう動かすかが鍵だ。
「早速ですが、王太子殿下に謁見の機会を作れませんか。私は殿下と直接会って、婚約破棄の真意を確かめたい」
グレイスの要求は直球だ。周囲の使用人たちが驚いた顔を見合わせる。しかし、公爵は意外にも否定しなかった。
「殿下に直接か……。いいだろう。私から王宮に打診してみよう。だが、おまえが宮廷の闇に対抗するには、確かな証拠が要る。誰かが裏で糸を引いたという証拠が」
グレイスは拳を握りしめる。その裏でソフィアや他の令嬢、あるいは貴族派閥が動いていることは想像に難くない。彼らの策謀を暴くには、はっきりした材料を掴まねばならない。
「証拠か……シャーロットが探してくれた手がかりがあるの。噂を広めていたのは誰なのか、それを洗い出せばきっと」
「そうだな。時間はかかるかもしれないが、急がねばならん。殿下の周りでは、すでに動きが活発化しているようだから」
公爵がそう言うと、グレイスは大きく息を吸い込む。もう逃げ場はない。自ら王宮の闇に飛び込んで、真実を掴み取るしか道は残されていないのだから。
「わかりました。私、覚悟を決めてやってみます」
彼女の決然たる表情に、父もシャーロットも胸を熱くする。悪役令嬢としての汚名を晴らし、真の自由を掴むための戦いは、まさにここから本格的に始まるのだ。
エルメラルド公爵邸の大広間に入った瞬間、使用人たちが口々に歓喜の声をあげる。グレイスは緊張した面持ちで、その反応を受け止めた。
「ご心配をおかけしました。……私、帰ってきました」
グレイスは深く頭を下げる。かつては王太子妃として優雅に振る舞うことが当たり前だったが、今の彼女にそんな傲慢さは微塵もない。むしろ、使用人たちの温かい歓迎に胸がいっぱいになる。
「お姉様、私が席を用意してきます。まずは一度ゆっくり休んで」
シャーロットが慌ただしく周囲に指示を出す。だが、その前に公爵家の当主――グレイスの父が現れた。
「グレイス。戻ってくれてよかった。おまえが行方不明の間、どれほど心配したことか」
父の目には安堵とともに複雑な感情が混ざっている。グレイスはその声を聞き、胸に熱いものが込み上げた。どんな噂があろうと、家族の愛情は変わらないと感じられたからだ。
「ごめんなさい。父様にも迷惑をかけました。でも、私、王宮に戻ってきちんと話がしたいの。……自分の名誉を取り戻したい」
毅然とした口調で言う娘の姿に、公爵は驚いた表情を浮かべる。今までのグレイスならば、もう少し大人しく父の意向を伺うはず。それがここにきて、はっきりと意思を示すようになった。
「それはおまえの権利だ。公爵家としても協力しよう。……だが、王宮に戻るのは危険だ。おまえを悪者扱いした勢力が、まだ蠢いている」
公爵の顔には深い苦悩の色が漂う。貴族社会は表面上の礼儀を繕いながらも、水面下では暗い思惑が渦巻いているのは周知の事実だ。ハロルドを取り巻く人々、そしてソフィアの存在を考えると、グレイスが安全に行動できる保証はどこにもない。
「私も、そのことはわかっています。でも、私は逃げないわ。父様、どうか私にもう一度だけ力を貸してください」
グレイスは真っ直ぐに父を見つめる。父はしばらく考え込むように目を伏せ、やがて顔を上げた。
「わかった。私もおまえの無実を信じている。王宮がどれほどの闇を抱えていようと、公爵家の名にかけて守ろう」
それを聞いて、シャーロットは胸を撫で下ろす。姉が帰還しただけでなく、父の協力を得られるのは大きい。あとは母や他の貴族たちをどう動かすかが鍵だ。
「早速ですが、王太子殿下に謁見の機会を作れませんか。私は殿下と直接会って、婚約破棄の真意を確かめたい」
グレイスの要求は直球だ。周囲の使用人たちが驚いた顔を見合わせる。しかし、公爵は意外にも否定しなかった。
「殿下に直接か……。いいだろう。私から王宮に打診してみよう。だが、おまえが宮廷の闇に対抗するには、確かな証拠が要る。誰かが裏で糸を引いたという証拠が」
グレイスは拳を握りしめる。その裏でソフィアや他の令嬢、あるいは貴族派閥が動いていることは想像に難くない。彼らの策謀を暴くには、はっきりした材料を掴まねばならない。
「証拠か……シャーロットが探してくれた手がかりがあるの。噂を広めていたのは誰なのか、それを洗い出せばきっと」
「そうだな。時間はかかるかもしれないが、急がねばならん。殿下の周りでは、すでに動きが活発化しているようだから」
公爵がそう言うと、グレイスは大きく息を吸い込む。もう逃げ場はない。自ら王宮の闇に飛び込んで、真実を掴み取るしか道は残されていないのだから。
「わかりました。私、覚悟を決めてやってみます」
彼女の決然たる表情に、父もシャーロットも胸を熱くする。悪役令嬢としての汚名を晴らし、真の自由を掴むための戦いは、まさにここから本格的に始まるのだ。
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・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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