森へ消えた悪役令嬢

ともえなこ

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「これは……確かに決定的かもしれないわ」

シャーロットが手にしているのは、複数の手紙と密書の写し。ソフィアの侍女と思われる人物とのやり取りを示す文面が、そこに赤裸々に綴られていた。

「ソフィア様の指示で、意図的にグレイス様の悪評を広めるよう仕向けられた……そんな内容が書かれているわね」

シャーロットは声を震わせながら、書類に目を通す。どうやら書簡のやりとりの中に「王太子を欺く」と取れるような文言が含まれており、ソフィアが積極的にグレイスを陥れようとしていた証拠となる可能性が高い。

「それと、これを見て。ソフィア様が、殿下の側近に大金を手渡している痕跡があるわ。つまり、殿下の耳にグレイス様の悪評だけを集中的に吹き込むよう工作していたのね」

公爵家の家令が驚きを隠せない表情で、追加の書類をシャーロットに手渡す。これまで噂レベルだったソフィアの暗躍が、ようやく具体的な形で表面化したのだ。

「お姉様が言っていた通り、ソフィアが犯人だったのね。少なくとも、彼女が主体となってグレイス様を悪者に仕立て上げていたのは明らかよ」

シャーロットの声には怒りが込められている。長らく人知れず動いてきたが、ようやく真実を掴んだ感慨が胸を突き上げる。

「これをどう使うかが問題だ。王宮の公の場で追及するにしても、ソフィアは伯爵家の有力者。反撃は必至でしょう」

家令の言葉に、シャーロットは唇を噛み締める。王太子をも巻き込んだこの陰謀を一気に暴くには、確かな舞台とタイミングが必要だ。下手をすれば、再び立場を危うくするだけ。

「でも、グレイス様の汚名を晴らすために、この証拠は欠かせません。私たちには公爵家の力がありますから、堂々と提示すればいいのでは」

「ええ、それも一理あります。ただ、殿下がどこまで本気で取り合ってくださるか……」

会話を聞きながら、シャーロットは覚悟を決める。どんなに相手が強大でも、これ以上姉を追いつめることは許せない。誤解を解くための最強の材料は、すでに手にあるのだから。

「お姉様が王太子殿下と直接話す機会を作りたいと言っていました。そこに私も同行して、この証拠を提示します。……それしかないわ」

顔を上げるシャーロットの目は、迷いを捨てた強い光を放っている。側にいる従者たちはその気迫に感心し、同時にこの場の重みを感じ取っていた。

「わかった。では、すぐに準備をしましょう。ソフィア様の勢力が動き始める前に、一気に勝負をかけるんです」

家令の言葉に、シャーロットは大きく頷く。姉妹で貫いてきた信念をここで実らせるためにも、今こそ行動のときだ。悪役令嬢の汚名を着せられた姉を救うため、そして王太子が真実を知るために――。

「お姉様、必ずや勝ち取りましょう。あなたの本当の居場所を」

シャーロットは心の中でそう誓いながら、書類を抱えて部屋を出る。天井の高い廊下に足音が響き渡るたび、運命の歯車が少しずつ動き始めているのを感じた。
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