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国王と王妃の、魂からの願い。
重く、静まり返った部屋の中で、ウピエルは、ゆっくりと口を開いた。
その声は、驚くほど、穏やかで、澄み切っていた。
「陛下、王妃様。どうか、お顔をお上げください」
二人が、おそるおそる顔を上げる。
そこにいたのは、彼らが知る、無表情な少女でも、泣きじゃくる少女でもなかった。
凛とした、それでいて、どこまでも優しい微笑みをたたえた、一人の自立した女性だった。
「わたくし、決心いたしました」
ウピエルは、まず、そう切り出した。
「サイラス王子からのお誘いは、大変光栄で、魅力的なものでした。わたくしの才能を、あれほど高く評価してくださった方は、初めてでしたから」
その言葉に、国王と王妃の顔が、一瞬、絶望に曇る。
やはり、この国を去ってしまうのか、と。
「ですが」
ウピエルは、続けた。
「わたくしは、ヴァイス王国へは参りません」
「……なんと」
「そして」
ウピエルは、一度、目を伏せた。
脳裏に、土下座をして、涙ながらに愛を叫んだ、アルベルトの姿が浮かぶ。
胸の奥が、ちくりと痛んだ。
しかし、彼女の決意は、もう揺るがない。
「アルベルト殿下と、復縁することもございません」
「……そうか」
国王は、寂しそうに、しかし、どこか納得したように呟いた。
「わたくしは、もう、誰かのお妃にはなりません」
ウピエルは、きっぱりと言い切った。
そして、国王と王妃を、真っ直ぐに見つめる。
「ですが、わたくしは、このエルミート王国を、心から愛しております」
「……!」
「わたくしを産んでくださったお父様とお母様、わたくしを支えてくれる人々、そして、わたくしが作ったもので、笑顔になってくれる民の皆様。その全てが、この国にあります。わたくしは、そんな皆様のいる、この国を、見捨てることなど、到底できません」
ウピエルの瞳には、故郷への、深い愛情の光が宿っていた。
「陛下、王妃様。わたくしに、お願いがございます」
「な、なんだ。申してみよ。君の望みとあらば、なんだって叶えよう」
国王が、身を乗り出す。
ウピエルは、にっこりと微笑むと、自分の考えを、堂々と述べ始めた。
それは、彼女が昨夜、自分のためだけに描き上げた、新しい人生の設計図だった。
「わたくしは、誰かの妻としてではなく、ウピエル・フォン・クライフォルトという、ただ一人の人間として、この国に貢献する道をお許しいただきたいのです」
「……と、言うと?」
「王家直属の、新しい役職を創設してはいただけませんでしょうか。例えば、『王国技術開発局』のような……。そこで、わたくしは、長官として、この国の技術発展のために、自由に研究開発を行いたいのです。農業、医療、防衛……わたくしの知識と能力を、特定の誰かのためではなく、この国に住む、全ての人々のために、使いたいのです」
それは、あまりにも大胆で、前代未聞の提案だった。
貴族令嬢が、ましてや未婚の女性が、国の重要機関のトップに立つなど、歴史上、一度もなかったことだ。
しかし、国王と王妃は、顔を見合わせると、次の瞬間、その顔に、驚きと、そして、心からの喜びの色を浮かべた。
彼らの目の前にいる少女は、自分たちが想像していた、どんな未来よりも、遥かに大きく、そして輝かしい道を、自らの手で切り開こうとしていた。
「……許す」
国王は、力強く、そして、感極まった声で言った。
「許すに決まっておるだろう! 素晴らしい! なんと、素晴らしい考えだ、ウピエル嬢!」
王妃もまた、涙を流しながら、何度も何度も頷いていた。
「ありがとう……ウピエルさん……本当に、ありがとう……!」
ウピエルは、そんな二人の姿を見て、心の底から、安堵した。
自分の選んだ道は、間違っていなかったのだ、と。
誰かのためでもなく、誰かに強いられたのでもなく、自分の意志で選んだ、新しい人生。
その第一歩を、彼女は今、力強く踏み出したのだった。
重く、静まり返った部屋の中で、ウピエルは、ゆっくりと口を開いた。
その声は、驚くほど、穏やかで、澄み切っていた。
「陛下、王妃様。どうか、お顔をお上げください」
二人が、おそるおそる顔を上げる。
そこにいたのは、彼らが知る、無表情な少女でも、泣きじゃくる少女でもなかった。
凛とした、それでいて、どこまでも優しい微笑みをたたえた、一人の自立した女性だった。
「わたくし、決心いたしました」
ウピエルは、まず、そう切り出した。
「サイラス王子からのお誘いは、大変光栄で、魅力的なものでした。わたくしの才能を、あれほど高く評価してくださった方は、初めてでしたから」
その言葉に、国王と王妃の顔が、一瞬、絶望に曇る。
やはり、この国を去ってしまうのか、と。
「ですが」
ウピエルは、続けた。
「わたくしは、ヴァイス王国へは参りません」
「……なんと」
「そして」
ウピエルは、一度、目を伏せた。
脳裏に、土下座をして、涙ながらに愛を叫んだ、アルベルトの姿が浮かぶ。
胸の奥が、ちくりと痛んだ。
しかし、彼女の決意は、もう揺るがない。
「アルベルト殿下と、復縁することもございません」
「……そうか」
国王は、寂しそうに、しかし、どこか納得したように呟いた。
「わたくしは、もう、誰かのお妃にはなりません」
ウピエルは、きっぱりと言い切った。
そして、国王と王妃を、真っ直ぐに見つめる。
「ですが、わたくしは、このエルミート王国を、心から愛しております」
「……!」
「わたくしを産んでくださったお父様とお母様、わたくしを支えてくれる人々、そして、わたくしが作ったもので、笑顔になってくれる民の皆様。その全てが、この国にあります。わたくしは、そんな皆様のいる、この国を、見捨てることなど、到底できません」
ウピエルの瞳には、故郷への、深い愛情の光が宿っていた。
「陛下、王妃様。わたくしに、お願いがございます」
「な、なんだ。申してみよ。君の望みとあらば、なんだって叶えよう」
国王が、身を乗り出す。
ウピエルは、にっこりと微笑むと、自分の考えを、堂々と述べ始めた。
それは、彼女が昨夜、自分のためだけに描き上げた、新しい人生の設計図だった。
「わたくしは、誰かの妻としてではなく、ウピエル・フォン・クライフォルトという、ただ一人の人間として、この国に貢献する道をお許しいただきたいのです」
「……と、言うと?」
「王家直属の、新しい役職を創設してはいただけませんでしょうか。例えば、『王国技術開発局』のような……。そこで、わたくしは、長官として、この国の技術発展のために、自由に研究開発を行いたいのです。農業、医療、防衛……わたくしの知識と能力を、特定の誰かのためではなく、この国に住む、全ての人々のために、使いたいのです」
それは、あまりにも大胆で、前代未聞の提案だった。
貴族令嬢が、ましてや未婚の女性が、国の重要機関のトップに立つなど、歴史上、一度もなかったことだ。
しかし、国王と王妃は、顔を見合わせると、次の瞬間、その顔に、驚きと、そして、心からの喜びの色を浮かべた。
彼らの目の前にいる少女は、自分たちが想像していた、どんな未来よりも、遥かに大きく、そして輝かしい道を、自らの手で切り開こうとしていた。
「……許す」
国王は、力強く、そして、感極まった声で言った。
「許すに決まっておるだろう! 素晴らしい! なんと、素晴らしい考えだ、ウピエル嬢!」
王妃もまた、涙を流しながら、何度も何度も頷いていた。
「ありがとう……ウピエルさん……本当に、ありがとう……!」
ウピエルは、そんな二人の姿を見て、心の底から、安堵した。
自分の選んだ道は、間違っていなかったのだ、と。
誰かのためでもなく、誰かに強いられたのでもなく、自分の意志で選んだ、新しい人生。
その第一歩を、彼女は今、力強く踏み出したのだった。
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