この悪役令嬢できる!

ともえなこ

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ウピエルの前代未聞の提案は、すぐさま国王レオポルトによって実行に移された。
国王は、直ちに貴族たちを招集し、緊急の御前会議を開いた。

「これより、王命を布告する!」

玉座に座る国王の声が、厳粛な議場に響き渡る。
貴族たちは、何事かと緊張した面持ちでひれ伏した。

「本日をもって、王家直属の機関として、『王国技術開発局』を設立する! その目的は、我が国のあらゆる技術を発展させ、国力と民の生活を向上させることにあり!」

貴族たちの間に、どよめきが走る。
新しい機関の設立。それも、王家直属の。

「そして、初代長官として、クライフォルト公爵が娘、ウピエル・フォン・クライフォルトを任命する! 彼女には、長官として、予算の編成から人事まで、全ての権限を与えるものとする!」

その瞬間、議場は爆発したような騒ぎとなった。

「なっ……!?」

「クライフォルト公爵令嬢を、長官に、だと!?」

「前代未聞だ! 未婚の、それもまだ十六の娘に、国の機関を任せるなど!」

一部の保守的な貴族から、案の定、反対の声が上がる。
特に、王太子との婚約を破棄されたばかりの令嬢を、要職に就けることへの反発は強かった。

しかし、その反対の声を、宰相が、力強い声で制した。

「皆様、お静まりに! ウピエル嬢の才能と功績を、侮ってはなりませぬ! 彼女が開発した石鹸が、どれほど王都の衛生を改善したか! 彼女が考案した魔法具が、どれほどの豊作をもたらしたか! 皆様もご存じのはず!」

騎士団長も、立ち上がって声を張り上げる。

「そうだ! ウピエル様が開発された防御魔法具は、我々騎士の命を救う、まさに女神の恩寵だ! 彼女の能力に、男女や年齢など関係ない!」

宰相や騎士団長といった、国の重鎮たちが次々とウピエルを支持する。
彼女の功績は、あまりにも具体的で、圧倒的だった。
その事実の前では、旧態依然とした反対論は、力を失っていく。

そして、とどめを刺したのは、国王自身の言葉だった。

「これは、決定事項である! 異論は一切認めぬ! ウピエル長官の才能こそ、我が国の未来を照らす光であると、私は確信している!」

国王の、揺るぎない決意。
その覇気の前に、もはや、誰も何も言うことはできなかった。

会議の後、ウピエルは、新たに与えられた長官室にいた。
王城の一角にある、最も日当たりの良い、広い部屋だった。

「ウピエル長官。お呼びでしょうか」

部下としてつけられた、若い文官が、緊張した面持ちで入ってくる。

「ええ。早速だけど、仕事にとりかかりましょうか」

ウピエルは、にっこりと微笑んだ。
その笑顔には、もう、かつてのような硬さはない。

「まずは、人材の確保からね。国中の大学や工房に、触れを出してください。『年齢、性別、身分は一切問わない。求めるのは、知識と、探究心と、この国を良くしたいという情熱だけ』と」

「は、はい!」

「それから、予算の申請書も作成します。当面の目標は、第一に、食糧問題の完全解決。第二に、治水技術の確立。第三に、安価で効果的な医療品の開発。夢は、大きくなくっちゃね」

ウピエルは、生き生きとした表情で、次々と指示を出していく。
その姿は、もう、誰かに尽くす令嬢ではない。
国の未来を、その両肩に背負って立つ、若きリーダーの姿そのものだった。
彼女の、そして、エルミート王国の、新しい歴史が、今、この部屋から始まろうとしていた。
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