40 / 42
After Story:最後の約束 一番きれいな君へー
しおりを挟む
二〇六六年。
私は八十歳になった。
肉体という器は、長い年月という風雨にさらされ、あちこちにほころびが生じている。
特に心臓は、刻むリズムを時折失うほどに疲れ切っていた。
三年前、妻を天国へ見送った。
五十六年にわたる結婚生活は、穏やかで、誠実なものだった。
激しい情熱に身を焦がすような日々ではなかったかもしれない。けれど、共に泥にまみれて子を育て、孫を慈しみ、日常という名のレンガを一つひとつ積み上げてきた時間は、間違いなく「幸福」と呼べるものだった。
背負った責任を果たし、互いの存在を「帰るべき場所」だと信じ合えた。
それが、あの冬の日に私が選び取った「正解」の形だった。
レイコもまた、同じ空の下で、自らの人生を誠実に完遂しようとしていた。
彼女も三年前に夫を亡くし、今は心臓の弁の不具合という、逃れようのない宿命と向き合っている。外科的な手術は高齢のため行わず、ホスピスで穏やかな最後を待つことを、彼女自身が選んだ。
*
一月の半ば、私はショウタとレイナに連れられ、彼女の元を訪れた。
病室の扉を開けると、冬の柔らかな光の中に、彼女がいた。
「今日は甲斐田さんも来てくださったんですね。ありがとうございます」
レイコが微かに頬を緩める。
私は会釈を返すのが精一杯だった。前回よりも確実に衰弱している。
レイナが窓を開けて空気の入れ替えを行う。快晴の空が眩しい。
レイコが言う。
「今日はいい天気ねぇ、外を少し、散歩してみたい気分だわ」
ショウタが車椅子を押しながら、レイナが横を歩き、私は二歩、三歩と遅れてその背中を追いかけた。
庭園に溢れる光は、残酷なほどに眩しい。
和やかに話す三人を後ろで眺めながら、私は自分たちの人生を反すうしていた。
あの時、もし私たちが「自分たちの愛」だけを選んでいたら、この穏やかな風景は、この世のどこにも存在しなかったのだ。私たちの「不在」という代償の上に、この豊かな光が降り注いでいる。
元気なころに比べれば、一回りは小さくなった。
髪の毛は綺麗に整えられているが、もうほとんど白髪になっている。
基本、家族のいるところでしか会わないという約束をしているので、自分から特別に話すこともない。レイコのほうから何かを話すこともない。
ただ、時折視線が合う。
それだけで、私たちは十分だと思っている。
別れの時、レイコは笑顔でレイナとショウタに手を振った。
私には一度、視線を合わせて会釈をした。
その目には、何か深い悲しみが揺れるのを私は見た。
(神様、もう少しだけ……彼女に穏やかな時間を待ってあげてください)
私は祈るような思いで、白い息を吐きながらホスピスを後にした。
*
ショウタからは、あの日以降、レイコの体調がよくないということを知らされた。 レイナは毎日ホスピスに通っているようだ。
そして、運命の一月三十日がやってきた。
二〇〇六年、私たちが大学の並木道で別の人生へと歩み出したあの日から、ちょうど六十年。
その日の朝、七時三十分。
椅子に座り、窓の外を眺めていた私の全身を、奇妙な戦慄が貫いた。
それは病の痛みでも、老いの震えでもなかった。魂の深淵から響く、共鳴のうなりだ。
(レイコ……!)
心臓が、これまでになく激しく、そして悲痛なリズムで警鐘を鳴らしている。
理屈では説明がつかない。けれど、分かっていた。
彼女の砂時計の、最後の一粒が落ちようとしている。
今行かなければ、永遠に「次」はない。
私はショウタを呼ぶことさえせず、ただ本能に突き動かされるようにしてタクシーを拾った。テーブルの上にはクスリがそのまま置かれていた。
受付で親族であることを証明するのに時間はかかったが、ようやく彼女の部屋へと入ることができた。
八時十五分。
静まり返った病室。冬の透き通った陽光が、無機質な床に長い影を落としている。
ドアを開けると、ベッドに横たわるレイコが、驚いたように目を見開いた。
「甲斐田さ……タカシ……!?」
「いや……何かさ、来ないといけないと思って。約束を破って、勝手に来てしまった。ごめん」
「いいわ。来てくれて……本当に、ありがとう」
彼女の顔に、この世のものとは思えないほど清らかな微笑みが浮かぶ。
窓から入る爽やかな風が、彼女の白い髪を優しく揺らした。
「窓……寒くないかい?」
「いいの、このほうが気分がいいから」
「とにかく、元気そうで、よかったよ」
あまりにも不格好な、嘘のような言葉が口を突いて出た。
レイコは答えず、ただ愛おしそうに私を見つめ、布団の中からゆっくりと手を伸ばした。
私はその手を、両手でしっかりと包み込む。
その手は、冷たく、枯れ枝のように細かった。
病のせいで真っ白に透き通った肌は、まるで神聖な彫刻のようだ。
けれど、指先から伝わってくる温もりは、間違いなく私が三十年以上焦がれ続けた、あのレイコの温度だった。
レイコの目から涙が一筋、流れる。
私の視界もぼやけてくる。
レイコが、不意に激しく咳き込んだ。私は慌てて彼女の背をさする。
「休むか? 看護師にきてもらおうか?」
レイコは首を振り、
「いえ、いいわ、あなたと二人でいさせて……」
しばらくの沈黙の後、レイコが言う。
「さっきね、窓の外を眺めながら、あなたと合わせて欲しいって祈ってたの。そしたら本当に、あなたが現れた」
「八十年の人生……最高だったわ。レイナを授かって、孫たちを見て、曾孫の産声まで聞けた。私たちが選んだ『正解』は、こんなに素晴らしい景色を連れてきてくれた」
レイコはゆっくりと、噛みしめるように言う。
「そして人生の最後を、あなたと過ごせる。……これ以上の贅沢なんて、もう、どこにもないわ」
彼女の瞳から、最後の一筋の涙が溢れ、枕に吸い込まれていく。
「……きれいだよ、レイコ」
私は、震える声で告げた。
レイコは力なく、けれど幸せそうに笑った。
「覚えていてくれたのね……。もう、こんなお婆ちゃんなのに。お世辞が上手くなったわね、タカシ」
「お世辞じゃない。あの日、言っただろう。八十歳になっても、同じことを言う自信があるって。今の君が……人生で一番、きれいだ」
二人は、重なり合う皺だらけの手を見つめ、小さく笑い合った。
沈黙が、蜜のように甘く、そして重く部屋を満たす。
私は彼女の額に、そっと唇を触れさせた。
カサカサに乾いた肌の感触。それは、どんな宝石よりも尊い、生命の記録だった。
窓の外では、祝祭のように爽やかな風が吹き抜けている。
レイコはベッドの海へ、深く、深く沈み込んでいくようだった。
「神様、ありがとう……。タカシと、出会わせてくれて」
「……レイコ」
視界が、涙で白く塗り潰される。
「私……死ぬのは怖くないわ。あなたとの、約束があるから」
彼女は最後の力を振り絞って私を見つめ、あの日と同じ、悪戯っぽくて瑞々しい眼差しを見せた。
私は彼女の手を、骨が軋むほど強く握りしめた。
「ああ。約束は絶対に、守るよ」
「またね……」
その微かな、羽毛のような囁きと共に、彼女の目はゆっくりと閉じられた。
握りしめていた手の力が、ふっと抜ける。
モニターの電子音が、永遠の凪を告げた。
その瞬間、私の脳裏を、あの三週間の記憶が奔流となって駆け抜けた。
雪の河川敷。安っぽいカラオケボックス。狭い六畳の一間。
二人の笑い声。指先の熱。
「ありがとう、私の愛する人……」
自分の心臓が大きく一度だけ、跳ねるような感覚がくる。
「レイコ、君を待たせることはしないよ」
レイコの手を握る力が急速に失われた。
そして私の頭は、ベッドのレイコの横に静かに倒れ込んだ。
*
二〇六六年一月三十日、午前九時。
甲斐田タカシ、永山レイコ、永眠。
死因、急性心不全。
それは医学的な死を超えた、宿命という名の救済だった。
私は八十歳になった。
肉体という器は、長い年月という風雨にさらされ、あちこちにほころびが生じている。
特に心臓は、刻むリズムを時折失うほどに疲れ切っていた。
三年前、妻を天国へ見送った。
五十六年にわたる結婚生活は、穏やかで、誠実なものだった。
激しい情熱に身を焦がすような日々ではなかったかもしれない。けれど、共に泥にまみれて子を育て、孫を慈しみ、日常という名のレンガを一つひとつ積み上げてきた時間は、間違いなく「幸福」と呼べるものだった。
背負った責任を果たし、互いの存在を「帰るべき場所」だと信じ合えた。
それが、あの冬の日に私が選び取った「正解」の形だった。
レイコもまた、同じ空の下で、自らの人生を誠実に完遂しようとしていた。
彼女も三年前に夫を亡くし、今は心臓の弁の不具合という、逃れようのない宿命と向き合っている。外科的な手術は高齢のため行わず、ホスピスで穏やかな最後を待つことを、彼女自身が選んだ。
*
一月の半ば、私はショウタとレイナに連れられ、彼女の元を訪れた。
病室の扉を開けると、冬の柔らかな光の中に、彼女がいた。
「今日は甲斐田さんも来てくださったんですね。ありがとうございます」
レイコが微かに頬を緩める。
私は会釈を返すのが精一杯だった。前回よりも確実に衰弱している。
レイナが窓を開けて空気の入れ替えを行う。快晴の空が眩しい。
レイコが言う。
「今日はいい天気ねぇ、外を少し、散歩してみたい気分だわ」
ショウタが車椅子を押しながら、レイナが横を歩き、私は二歩、三歩と遅れてその背中を追いかけた。
庭園に溢れる光は、残酷なほどに眩しい。
和やかに話す三人を後ろで眺めながら、私は自分たちの人生を反すうしていた。
あの時、もし私たちが「自分たちの愛」だけを選んでいたら、この穏やかな風景は、この世のどこにも存在しなかったのだ。私たちの「不在」という代償の上に、この豊かな光が降り注いでいる。
元気なころに比べれば、一回りは小さくなった。
髪の毛は綺麗に整えられているが、もうほとんど白髪になっている。
基本、家族のいるところでしか会わないという約束をしているので、自分から特別に話すこともない。レイコのほうから何かを話すこともない。
ただ、時折視線が合う。
それだけで、私たちは十分だと思っている。
別れの時、レイコは笑顔でレイナとショウタに手を振った。
私には一度、視線を合わせて会釈をした。
その目には、何か深い悲しみが揺れるのを私は見た。
(神様、もう少しだけ……彼女に穏やかな時間を待ってあげてください)
私は祈るような思いで、白い息を吐きながらホスピスを後にした。
*
ショウタからは、あの日以降、レイコの体調がよくないということを知らされた。 レイナは毎日ホスピスに通っているようだ。
そして、運命の一月三十日がやってきた。
二〇〇六年、私たちが大学の並木道で別の人生へと歩み出したあの日から、ちょうど六十年。
その日の朝、七時三十分。
椅子に座り、窓の外を眺めていた私の全身を、奇妙な戦慄が貫いた。
それは病の痛みでも、老いの震えでもなかった。魂の深淵から響く、共鳴のうなりだ。
(レイコ……!)
心臓が、これまでになく激しく、そして悲痛なリズムで警鐘を鳴らしている。
理屈では説明がつかない。けれど、分かっていた。
彼女の砂時計の、最後の一粒が落ちようとしている。
今行かなければ、永遠に「次」はない。
私はショウタを呼ぶことさえせず、ただ本能に突き動かされるようにしてタクシーを拾った。テーブルの上にはクスリがそのまま置かれていた。
受付で親族であることを証明するのに時間はかかったが、ようやく彼女の部屋へと入ることができた。
八時十五分。
静まり返った病室。冬の透き通った陽光が、無機質な床に長い影を落としている。
ドアを開けると、ベッドに横たわるレイコが、驚いたように目を見開いた。
「甲斐田さ……タカシ……!?」
「いや……何かさ、来ないといけないと思って。約束を破って、勝手に来てしまった。ごめん」
「いいわ。来てくれて……本当に、ありがとう」
彼女の顔に、この世のものとは思えないほど清らかな微笑みが浮かぶ。
窓から入る爽やかな風が、彼女の白い髪を優しく揺らした。
「窓……寒くないかい?」
「いいの、このほうが気分がいいから」
「とにかく、元気そうで、よかったよ」
あまりにも不格好な、嘘のような言葉が口を突いて出た。
レイコは答えず、ただ愛おしそうに私を見つめ、布団の中からゆっくりと手を伸ばした。
私はその手を、両手でしっかりと包み込む。
その手は、冷たく、枯れ枝のように細かった。
病のせいで真っ白に透き通った肌は、まるで神聖な彫刻のようだ。
けれど、指先から伝わってくる温もりは、間違いなく私が三十年以上焦がれ続けた、あのレイコの温度だった。
レイコの目から涙が一筋、流れる。
私の視界もぼやけてくる。
レイコが、不意に激しく咳き込んだ。私は慌てて彼女の背をさする。
「休むか? 看護師にきてもらおうか?」
レイコは首を振り、
「いえ、いいわ、あなたと二人でいさせて……」
しばらくの沈黙の後、レイコが言う。
「さっきね、窓の外を眺めながら、あなたと合わせて欲しいって祈ってたの。そしたら本当に、あなたが現れた」
「八十年の人生……最高だったわ。レイナを授かって、孫たちを見て、曾孫の産声まで聞けた。私たちが選んだ『正解』は、こんなに素晴らしい景色を連れてきてくれた」
レイコはゆっくりと、噛みしめるように言う。
「そして人生の最後を、あなたと過ごせる。……これ以上の贅沢なんて、もう、どこにもないわ」
彼女の瞳から、最後の一筋の涙が溢れ、枕に吸い込まれていく。
「……きれいだよ、レイコ」
私は、震える声で告げた。
レイコは力なく、けれど幸せそうに笑った。
「覚えていてくれたのね……。もう、こんなお婆ちゃんなのに。お世辞が上手くなったわね、タカシ」
「お世辞じゃない。あの日、言っただろう。八十歳になっても、同じことを言う自信があるって。今の君が……人生で一番、きれいだ」
二人は、重なり合う皺だらけの手を見つめ、小さく笑い合った。
沈黙が、蜜のように甘く、そして重く部屋を満たす。
私は彼女の額に、そっと唇を触れさせた。
カサカサに乾いた肌の感触。それは、どんな宝石よりも尊い、生命の記録だった。
窓の外では、祝祭のように爽やかな風が吹き抜けている。
レイコはベッドの海へ、深く、深く沈み込んでいくようだった。
「神様、ありがとう……。タカシと、出会わせてくれて」
「……レイコ」
視界が、涙で白く塗り潰される。
「私……死ぬのは怖くないわ。あなたとの、約束があるから」
彼女は最後の力を振り絞って私を見つめ、あの日と同じ、悪戯っぽくて瑞々しい眼差しを見せた。
私は彼女の手を、骨が軋むほど強く握りしめた。
「ああ。約束は絶対に、守るよ」
「またね……」
その微かな、羽毛のような囁きと共に、彼女の目はゆっくりと閉じられた。
握りしめていた手の力が、ふっと抜ける。
モニターの電子音が、永遠の凪を告げた。
その瞬間、私の脳裏を、あの三週間の記憶が奔流となって駆け抜けた。
雪の河川敷。安っぽいカラオケボックス。狭い六畳の一間。
二人の笑い声。指先の熱。
「ありがとう、私の愛する人……」
自分の心臓が大きく一度だけ、跳ねるような感覚がくる。
「レイコ、君を待たせることはしないよ」
レイコの手を握る力が急速に失われた。
そして私の頭は、ベッドのレイコの横に静かに倒れ込んだ。
*
二〇六六年一月三十日、午前九時。
甲斐田タカシ、永山レイコ、永眠。
死因、急性心不全。
それは医学的な死を超えた、宿命という名の救済だった。
0
あなたにおすすめの小説
体育館倉庫での秘密の恋
狭山雪菜
恋愛
真城香苗は、23歳の新入の国語教諭。
赴任した高校で、生活指導もやっている体育教師の坂下夏樹先生と、恋仲になって…
こちらの作品は「小説家になろう」にも掲載されてます。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
幼馴染みのアイツとようやく○○○をした、僕と私の夏の話
水鏡こうしき
恋愛
クールなツンツン女子のあかねと真面目な眼鏡男子の亮汰は幼馴染み。
両思いにも関わらず、お互い片想いだと思い込んでいた二人が初めて互いの気持ちを知った、ある夏の日。
戸惑いながらも初めてその身を重ねた二人は夢中で何度も愛し合う。何度も、何度も、何度も──
※ムーンライトにも掲載しています
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる