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127話

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「ミーシャさん?それに、真司(マサシ)君までどうしてここに」
真一は、呆れた表情で言う。
「それはこっちのセリフだ。ここは、Bランクの階層なんだぞ。1人じゃ危険だろ。まぁ、どうせお前のことだから ユウトを一人で戦わせようとしたんだろうけどな」
(流石兄さん!俺の事よくわかってらっしゃる!)
優斗は、心の中で拍手を送った。
「とりあえず話は後だ。さっさと終わらせるぞ」
「ああ」
真一がそう言うと、優斗は返事をして剣を構える。
それを見た真一は驚いた顔をする。
「まさか……優斗が真剣を持ってくるとはな」
優斗の持っていた剣には 優斗が魔法で作ったオリハルコンが ふんだんに使われた、真一のお下がりではなく 真一の愛剣と同等のものだった。
ちなみにだが、この世界において剣は、ミスリルで作られるのが一般的である。これは剣の材料に最も相性が良いからであると言われている。
ゴブリンジェネラルは真一に襲い掛かると剣を振るう。それをかわすと同時に腕に切りかかるが硬い皮膚に阻まれ傷一つ付けられない。
真二は舌打ちして後ろに下がるとすぐに次の攻撃を仕掛けてくる。
(やっぱり硬いね……だったら……)
優斗は真一がゴブリンを倒した時にしていた動きを思い出しながら真似する。
(こうかな?)
真一より数段遅い速度ではあったが、なんとか避ける事に成功する。
(やった!避けれた)
真一の攻撃に優斗は目を見開く
(あいつ、俺がやっていた技を使っただと?)
真一はニヤリと笑うと自分の攻撃をそのまま返す。
真一がゴブリンの腕を切り落とすと、続けて足を狙う。
ゴブリンはバランスを崩し倒れる。その瞬間を逃さず優斗が剣を突き刺すと、剣が貫通した。
「よし!やった!」
(初めて、生き物を仕留められた)
真一が近づいて来ると優斗の肩に手を置く。
「良かったじゃないか。初勝利だ」
「うん」
真一は笑顔で優斗を見る。そんな様子の2人にミーシャは話しかける。
「2人とも、怪我とか無いのかい?」
「ああ、問題無いよ。なあ?ユウト?」
「はい!大丈夫です」
「そうかい、そりゃ安心したよ。でも、今日はもう帰った方がいいんじゃないかい? あんたらの実力ならこのダンジョンで稼ぐ必要は無いと思うんだけどねぇ~」
優斗は少し考え、答える
「えっと……もう少しだけ……」
「おい!無理する必要はねえぞ。帰るか?」
「でも……」
優斗は、真一の顔を見て続ける。
「僕、どうしても強くなりたいんです」
すると、真一がミーシャに尋ねる。
「もしかして、こいつ……誰かから狙われてるんじゃ……」
「ああ~なるほど、そうか、それで強くなって守りたいと?」
「いえ……そういうわけでは」
優斗は照れ臭くなり俯く。
「いいだろう。ただ、あまり無茶はしないでおくれよ?死んだら元も子もないからねぇ。あと、いつでもウチを頼るんだよ。分かったかい?」
「はい!ありがとうございます!」
真一は、ため息をつく。
「仕方がない……俺が鍛えてやる」
優斗は、目を輝かせて喜ぶ。
「本当ですか!?お願いします!」
(真司君が稽古をつけてくれるなんて夢みたいだよ)
真一は、苦笑いで話す。
「そんなに喜んでくれるとやりにくいが……まあいいか」
「じゃ、また来週くらいにギルドで会おうか」
こうして、3人は解散した。
それから一週間、真司による地獄の特訓が始まった。
~side:三人称~
優斗は、朝早く起きる。
(眠いなぁ~、今何時だろ?7時か)
ベッドの横に置いてある机の上の目覚まし時計を見ると時刻は朝の7時過ぎである。
(よし!今日は冒険者ランクを上げる為に頑張るぞ!!)
気合いを入れて起き上がると顔を洗い、朝食を食べた後、すぐに準備をして家を出ると真司の家に向かう。
(おはようございまーす!)
「おっ!来たな」
真司は家の外にある剣を持ちながら出てきた。
「じゃあ、まずは素振りから始めるぞ」
「はい!分かりました。よろしくお願いします!!」
「良い返事だ。さっそく始めようか。お前がいつも使っている短剣を貸してくれ」
優斗は剣を手渡す。すると、真司は地面に突き刺す。
「これを斬れるようになれば上出来だ。やってみろ」
真司のアドバイスを聞きながら剣を振り続け、何時間も経った頃ようやく真司から合格が出た。
次は魔物との戦闘訓練をする為、街の外に出ていた。真司と優斗はお互い向かい合って立つと、お互いに木剣を構える。
真司が剣を中段の構えから上段に切り上げると、それを優斗がギリギリで受け止める。
(重い!けど耐えられる!)
その後、何度か打ち合うと優斗が斬りかかる。
真司はそれを剣の側面で受け流しそのまま優斗の首に刃を当てる。
「よし!今日の修行はここまでだな」
その日の晩、優斗は自室で悩んでいた。
(僕は強くなったのか……?)
ステータスを確認してみるとレベル10になっていた。
(やっぱり強くなっている……このまま、もっと強くならないと!)
決意を新たに眠りにつくのであった。
次の日の朝、優斗が目を覚ますと窓の外を見た。
まだ薄暗い空には星が輝いている。優斗は着替えると家を後にする。
向かった先は真一の家だ。
真一は既に外で待っており、軽く挨拶を交わすと真一は歩き出した。
真一は、街を出て森に入ると優斗の方を向いて話し始める。
「よし、それじゃ、そろそろ本格的に戦闘技術を身につけてもらおうか。優斗、前に渡した武器を出してくれないか?」
優斗はアイテムボックスの中から小ぶりのナイフを取り出した。真一は受け取るとそれを見つめている。
「これは……ミスリル製か?」
「えっと……よく分からないです……」
「まあ、とりあえず俺についてきてくれ」
真一は歩き出すとゴブリンに遭遇した。真一はゴブリンに近づくと腰を落として拳に力を込めた後ゴブリンを殴りつけた。するとゴブリンは吹き飛び動かなくなった。
「今のが魔法を使わない時の攻撃方法だ。覚えておけ」
その後もゴブリンを狩り続けた。真一がゴブリンを倒すと、しばらくしてゴブリンが現れなくなる。
「どうやら、この辺りのゴブリンは全て狩ったようだな」
真一が振り返ってそう言うと、優斗は疑問に思っていた事を口にした。
「なんでこんなに強いのにダンジョンに入らなかったんですか?」
「ん?ああ……そうだな……俺の師匠の教えなんだよ。俺の実力ならこの程度のダンジョンなら余裕でクリア出来るんだが、もし何かがあった時に困るだろ?だから、なるべく安全マージンを取りながら戦っていたんだ」
「そうなんですね……」
「でもまぁ、今回はお前もいるし大丈夫だな。いざとなった時は頼らせて貰うぜ?」
「はい!頑張ります!」
2人はさらに奥へと進んで行く。
それからしばらく経つ頃には優斗のレベルは20を超えていた。そして2人はゴブリンの集団と遭遇した。
(囲まれちゃったよ……でも大丈夫、僕もレベルアップしているはずだ)
「俺が右側をやる、お前は左の方を頼む」
「わかりました!」
そう言って、真一と優斗はそれぞれ1匹ずつ相手取り、数分もすると倒しきってしまった。
(すごい!全然疲れないよ)
すると、優斗はある事に気がついた。それは、倒した相手の経験値が表示されていないのだ。
そこで、ステータスを確認するがレベルが変わっていない。
不思議に思っていると真一が近づいてきた。
「終わったみたいだな。どうだった?」
「えっと……あの……倒してもレベルが上がっていないようなのですが?」
「あ~そりゃあ、お前はまだ弱いままだろ。普通は数をこなすことでレベルが上がるんだよ」
「そうなんですか……残念です」
「まあ、そんなに落ち込むなって、俺が鍛えてやるからよ」
「本当ですか!?」
「ああ、お前が強くなりたい気持ちはよく分かったからな」
「ありがとうございます!!」
真一は再び森の中に入って行った。
数時間後、再び真司の家にやって来た。
「じゃあ、今日はこれくらいにして帰ろうか」
真司は笑顔で話す。その言葉を聞いた瞬間に緊張の糸がきれた優斗は倒れ込んだ。
その後、真司の家に戻り、風呂に入った。
湯船に浸かっていると優斗は、ある事を思った。
(僕を守ってくれると言った人達がいる……けど……もしも僕のせいで亡くなったりしたら……)
そう考えると怖くなり、優斗はすぐにお風呂から出た。
お風呂から出ると、夕食を食べる。食事中に真司は話しかける。
「明日からはギルドに行って依頼を受けようと思う」
「はい!お願いします」
「じゃあ明日に備えて今日は早く寝るか」
「分かりました」
(なんだか、いつもよりドキドキして眠れないかも)
優斗はその日の夜、あまり眠れなかった。
翌朝、真司と一緒に家を出るとギルドに向かって歩き出した。
~side:真一郎~
真司は、街を歩くとあることに気付いた。
「おい、優斗。もしかして、この街に来たばかりか?」
「はい、今朝到着したばかりです」
「そうか……」
真一は少しの間黙ると話し始めた。
「実はな、昨日の依頼で森にオークが現れたって報告が来てるんだよ。もしかすると近くにダンジョンがあるかもしれない。注意してくれ」
真司は真剣な表情で言うと、優斗は心配そうに答える。
「分かりました。ところで、オークとはどのような魔物なのでしょうか?」
「んー……まあ簡単に言うとでかい豚の化け物みたいな感じだな」
優斗は驚いた顔をする。
「そうなんですか!楽しみですね」
「お前……怖いもの知らずだな……」
真司は呆れながら言った。すると、前方の方で騒ぎ声が聞こえた。2人が前を見ると大勢の人々が走っているのが見える。
その後を追いかけるように巨大な猪が突進していた。真一と優斗は人々を追い越すと、目の前には5メートル程の大きさのイノシシがいた。
優斗は怯えていると、真一が背中を押しながら話した。
「ほら!優斗行け!あいつの弱点は鼻だ。あそこの尖ったところを狙えば勝てる!」
「は、はい!行ってきます!」
「おう!頑張れ!」
優斗は駆け出した。
優斗はイノシシに向かって短剣を振り下ろすと、刃が皮膚に当たる直前に真司が叫ぶ。
「違う!横薙ぎに斬るんだ!」
優斗は真司の言葉を聞き、即座に行動した。振り下ろした勢いのまま横に振られた短剣が見事にヒットすると、大きな音をたてて倒れる。
それを見ていた人々は驚きを隠せなかった。すると真一は、後ろから迫っていたもう1匹の猪を斬り捨てると、優斗の元に歩み寄った。
「やるじゃないか。今の感覚を忘れないようにな」
「はい!」
真一達はギルドに入ると掲示板を見た。
そこには多くの依頼書があり、ゴブリン討伐や薬草採取など様々だった。その中からオークを狩るという依頼を受ける事にした。
依頼主は、この街の領主だった。内容は、街から離れた場所にオークが出現したので倒して欲しいという内容だった。
2人は、ギルドを出ると門に向かった。門番の兵士に許可を取ると、そのまま外へ出て行った。
しばらく歩いていると、1人の兵士が近付いて来た。
「そこのお方達!もし良かったら一緒に行きませんか?」
「ん?俺たちか?」
「ええ、お二人で来ているということは初心者なのでしょう?良ければご一緒しましょうよ!」
「いいんじゃないですか?」
優斗は真一に問いかけた。
「そうだな……確かに俺一人じゃ危ないかも知れないし……よし!じゃあよろしく頼むよ」
「えぇ!任せてください!」
こうして3人は目的地に向かうのであった。
優斗は2人と共に森の中を歩いていた。しばらくすると前方に数匹の狼が現れる。すると真一と兵士の男は武器を構えた。
優斗も遅れて短剣を構えると兵士達に話し掛けた。
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