ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

文字の大きさ
288 / 607
第七章 天竜国編

第41話 初めの四人再び2

しおりを挟む

 ケーナイのポータルから出た加藤、畑山さん、俺の三人は、すぐさま狐人領のポータル部屋まで瞬間移動した。

 壁には黒い布がかけてある。この向こうに神樹様がいらっしゃるのだ。
 移動して十分ほどすると、ドアが開き舞子とコルネが入ってくる。

「シロー、久しぶり。
 お姉ちゃんは、元気にしてる?」

 コルネは、姉のコルナのことが心配なようだ。

「ああ、向こうで大活躍だよ」

「そう、あなたが頼りないから心配してたんだけど……」

「シロー、この方は?」

「ああ、畑山さん、コルナには会ったよね。
 今の獣人会議議長で、コルナの妹さんが、このコルネさん」

「よろしくね、コルネさん。
 私は畑山っていうの」

「シローの知り合いでハタヤマ……もしかしてアリストの女王様ですか?」

「そうよ。
 でも、あなたとは立場もそう違わないから、お互いに敬語はやめにしましょう」

「そ、そうですね」

 コルネが三角耳をぴくぴくさせている。

「本当は、お姉ちゃんのことをじっくり聞きたいんだけど、聖樹様のご用件ですから」

 コルネは聖樹様の名を口にするとき、恭しく頭を下げた。
 彼女は神樹の巫女だ。その立場からいうと、聖樹様は口にするのも畏れおおい存在なのだろう。

 コルネが黒い布をさっと引くと、壁いっぱいに木肌が現れた。目や口のような木のウロがある。
 その時、神樹様から念話が来る。

『シロー、天竜国では世話になったな。
 さあ、聖樹様に会いに行くがよい』

 天竜国で、というのは、「光る木」の神樹様の事だな。

「いいえ、俺がやりたくてやったことです。
 こちらこそ神樹様には感謝しております」

 神樹様はそれには答えず、口にあたる部分のポータルを開けた。
 中には黒い渦巻きが見える。

「おい、ボー。
 本当にこれ大丈夫か?」

「加藤! 
 神樹様に対してなんたる口のきき方だ。
 反省しろ」

 俺はそう言うと、加藤をドンと押した。 

「あー……」

 加藤の悲鳴が途中でポータルに呑みこまれる。

「ミミちゃんみたい」

 コルネがよく分からないことを言っている。

「じゃ、行くよ」

 俺は、畑山さんと舞子の手を取り、ポータルに入った。

 ◇

 ポータルの出口には、ルルの母であり、リーヴァスの娘でもあるエレノアさんが待っていた。
 彼女は、ここ「聖樹の島」で夫と共にギルド職員をしている。
 ケーナイのアンデから、俺たちがいつ到着するか聞いていたのだろう。ギルド間には、世界の壁を越えて通信する方法があるという噂だ。
 なぜか顔を赤くした加藤が、エレノアさんの横に立っている。

「こんにちは、エレノアさん。
 レガルスさんはどうされましたか?」

 レガルスというのは、エレノアさんの夫、つまりはルルの父親だ。

「それがねえ、あの人ったら今回はルルが来ないって分かったら、お前だけ行けって言ったのよ。 
 思いきり、シバいてやったわ」

 エレノアさんは苦笑している。俺にはその場面がありありと浮かんた。

「はじめまして。
 畑山と言います。
 その馬鹿は、なんで赤くなってるんですか?」

「カトー君はね、なぜだかポータルから飛びだしてきたの。
 それを私が受けとめたってわけ」

「加藤君、どういうことかしら」

 畑山さんの声は、怖いほど静かだ。

「お、俺は悪くない。
 俺のせいじゃない……」

『(((;゜Д゜))) ご主人様ー、あれがガクブルだよね』

 そうだよ、点ちゃん。よく分かってるね。

「ああ、あなたが聖女様ね。
 ちょうど本部でけが人が出たからお願いしてもいいかしら」

「初めまして、渡辺です。
 舞子と呼んでください。
 けがをした人がいらっしゃるんですね。
 すぐにうかがいます」

「お願いね、マイコちゃん。 
 では、みんなで馬車に乗ってくれる?」

 見ると、少し離れた所に御者が乗った馬車が見える。

「エレノアさん。
 御者さんに、馬車を帰すように言ってもらえますか?」

「どうしてかしら。
 まあいいわ」

 エレノアさんが御者に声を掛けると、馬車は去っていった。

「以前使った、板みたいなのに乗るの?」

 エレノアさんは、かつてボードに乗った経験がある。

「いえ、時間が無いのでこれで……」

 次の瞬間、俺、加藤、畑山さん、舞子、エレノアさんの五人は、ギルド本部にいた。

「なっ、なにこれ?」

「俺の魔法の一つです」

「はー、父さんもだけど、黒鉄の冒険者って、どうしてこうも常識から外れてるのかしら」

「エレノアさん、こいつの非常識は昔からですよ」

 いやいや、加藤、お前がそれを言うかね。

「おや、久しぶりじゃないか」

 ギルドの広間に姿を現したのは、ギルド本部の長、ミランダさんだ。後ろに二人、ギルド関係者を従えている。

「ご無沙汰しております」

 俺たちは自然に膝をつく。これが本当の威厳というものだろう。

「シロー、ずい分頑張ってるようね。
 ギルドとして誇らしいよ」

「ええ、好きにやってるだけなんですが」

「相変わらずね。
 ところで、そちらの方が聖女様?」

「はい、舞子といいます」

「聖女マイコ様、どうぞお立ちください。
 今ちょうどけが人がおります。
 どうか祝福を与えてやってください」

 ミランダが目で合図すると、後ろに控えていた一人の女性が舞子の手を取り、建物の奥へと消えた。 

「さあ、本当はあなたから各世界の情報をもらいたいところなんだけど、聖樹様のお言葉ですから、まずそちらを優先しないと」

「はい、分かっております。
 聖女舞子の仕事が終われば、すぐに向かいます」

 聖樹様がいらっしゃる場所は、ギルド本部から少し離れている。
 俺は、ミランダさんだけに念話でこの後に起こるだろう事を伝えておいた。ミランダさんは、驚いた顔をしたが、俺と目を合わせると黙って頷いてくれた。

 まもなく、舞子が戻ってきた。
 先ほど舞子を連れていったギルド関係者がミランダさんに報告する。

「けが人は、すっかり元通りです」

「聖女様、本当にありがとうございます」

 ミランダさんが、舞子に頭をさげる。

「いえ、お力になれて良かったです」

 舞子はニッコリ微笑んだ。彼女は聖女としての貫禄が出てきたね。

「では、ミランダ様、行ってまいります」

「十分に気をつけるのよ。
 四人揃ってね」

 ミランダさんは、俺と彼女にだけ分かる一言を最後に添えてくれた。

 次の瞬間、ミランダさんの前から、畑山、舞子、加藤、俺の姿が消えた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...