ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

文字の大きさ
437 / 607
第十章 奴隷世界スレッジ編

第48話 子竜の活躍3

しおりを挟む


 ルルと黒猫、三人の冒険者は、スレッジ世界の森で、狼型魔獣にとり囲まれていた。

「みんなっ、油断しないで」

 狼魔獣は右周りの円を描きながら、その包囲を縮めていく。
 
「来るわよっ!」

 ガキン

 一匹の魔獣がルルに跳びかかり、彼女は投げナイフの刃でその牙を受けた。
 魔獣はすぐに包囲の輪に戻った。
 どうやら、じわじわ獲物を痛めつける気らしい。

「ぐっ!」

 一人の冒険者が、上腕部を切りさかれる。
 このままだと、なぶり殺しにされるのは時間の問題だった。

 冒険者が思わず言葉を漏らす。

「も、もう、お終いだ……」

 すかさず強い口調でルルが冒険者を励ます。
 
「諦めないでっ!」

 彼女の声に、魔獣たちがその動きを停める。
 次の瞬間、それらは一斉に襲いかかろうとした。
 ところが、跳びかかろうと身を低くした姿勢から、なぜか魔獣はころんと横になる。そして、お腹を上に向けてしまった。
 
「な、なにが起きた?」

 あまりに意外な出来事に、デデノが呆然としている。
 それはそうだろう。
 服従の姿勢を取った狼魔獣の間を、二匹の小さな魔獣がぴょんぴょん跳ねながら近づいてくる。
 ルルはそれを見た覚えがあるから、なおさら驚きが大きかった。

「ナルとメルの、ぬいぐるみ!?」

 熊とウサギのぬいぐるみは、ルルの前まで来ると、彼女の胸にぴょんと飛びこんだ。

「マンマ!」
「マーマ!」

 その声を聞き、ルルはぬいぐるみの正体に気づいた。
 真竜廟で彼女が育てた子竜に間違いなかった。
 姿は違っても、なぜか彼女にはそれが分かったのだ。
 
「あなたたちなのね!」

 ルルは、ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。
 ぬいぐるみも、ルルにぎゅっと抱きついた。

「ルルさん、それは一体?」

 その姿を見たデデノが呆れている。

「説明は後で。
 とにかくこの場を離れましょう」

 両腕にぬいぐるみを抱いたルルは、三人の冒険者と黒猫を引きつれ、森の中を貫く道を歩きだした。

 ◇

 その頃、真竜となり空を飛んでいたナルとメルは、草原に降りたち、人へとその姿を変えた。
 彼女たちが前足に掴み、運んできたイオ、子どもの姿をした三匹の子竜が、きょろきょろ周りを見回す。

 彼らの周囲には、広大な草原が広がっており、そこに数匹の魔獣がいた。
 魔獣は大きなピンク色の身体をしており、その短い足をちょこちょこ動かし、こちらに近づいてきた。
 魔獣は、人化したナル、メルより背が高かった。
 
 ナルが、その魔獣になにやら話しかけている。
 やがて彼女は大きく頷くと、イオに話しかけた。

「この子たち、たぶんパーパに助けてもらったみたい」

「ナルちゃん、その子と話せるの?」

 イオが驚いている。

「うん、普通に話せるよ」

「いや、私、その子が何言ってるのか、全然聞こえないよ」

「えっ?
 そうなの?」

「うん」

 その時、メルが背筋をピンと伸ばすと、驚いたような顔をした。

「メルちゃん、どうしたの?」

「イオちゃん、マンマがこの世界に来たみたい」

「えっ?
 ルルさんが?」

「うん、マンマがいるね。
 魔獣に囲まれているみたい」

 ナルも、何かに気づいたようだ。

「えっ?
 それじゃ、すぐ助けに行かないと!」

「大丈夫だよ。
『ちびドラ隊』の仲間が来てる」

「そ、そうなの?」

 イオは、ナルとメルがどうしてそんなことが分かるのか知りたかったが、なんとなく聞かない方がいい気がした。
 彼女は、ピンク色をした魔獣の頭を撫でた。

「ムグムグッ」

 魔獣が、きもちよさそうな声を出す。
 振り返ったイオは、驚きで思わず声を上げそうになった。

 彼女たちは、どこからか集まってきたピンクの魔獣にとり囲まれていたのだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...