ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

文字の大きさ
64 / 607
第二章 獣人世界グレイル編

第7話 高級食材

しおりを挟む


ケーナイの町に帰るとすぐ、史郎はギルドで湖沼地帯の状況を報告した。


それを聞いた受付のお姉さんは、すぐにギルマスにそれを報告すると、壁に貼ってあった湖沼地帯方面の依頼を全部回収した。

正しい判断である。
とりあえず、調査隊を送り込むことになるだろう。

俺は思ったより多くなった、討伐依頼対象である水の魔石をカウンターに出した。

「水の魔石54個で、銀貨27枚となります。 さすがですね」

受付のお姉さんが、褒めてくれる。

「あと、この魔石もあるんですが」

俺が拳大の魔石をドンとカウンターに置くと、後ろに並んでた冒険者から一斉にうなり声が聞こえた。

「すげえ!」

「でっけえな。 何から取れたのかな」

「黄色い魔石なんて、初めて見たぜ」

お姉さんも、目を丸くしていた。

「へえ、珍しいですね。 私も、見たの2回目ですよ。
これは、お湯の魔石です」

「お湯?」

「水ではなく、お湯が出るんです」

へーって、もしかしてそれって・・・お風呂!
お風呂に入れるかもしれない。

「売ると、最低でも金貨3枚になりますが、どうしますか?」

300万か・・
 
しかし、お風呂の誘惑には勝てないね。

「では、今は売らないでおきます」

「分かりました。 他に素材なんかは、ありませんか?」

俺が、何か言う前に、ミミが袖を引っ張った。
口に指を立てて、首を左右に振っている。

「あー、もうこれだけです。 ありがとう」

俺たちは、とりあえずギルド二階の俺の部屋に集まった。

テーブルの周りに座る。

俺は銀貨27枚を出して、それを9枚ずつに分けた。

ミミとポルの前に、それを押し出す。

「え? こ、こんなに・・もらってもいいんですか」

「いい訳ないじゃない。 装備は何から何まで、シローが用意したんだから」

えっ?  ミミさん、ここに来て常識発言ですか・・
まあ、いいけど。

「今回は、パーティーリーダーの判断で3等分した。
遠慮なく受け取ってくれ」

二人は少し躊躇したが、銀貨を受け取ってくれた。

懐が温かくなったせいか、二人ともニコニコしている。

ポルのふさふさしっぽと、ミミのにょろにょろ尻尾が、ブンブン振られている。

「そうそう、ミミ。 なんで、素材の事を秘密にしたの?」

俺は、気になっていたことを尋ねた。

「あの食材は、ギルドなんかで売ると、買い叩かれるの。
なんせ、特別な処理しないと食べられないからね」

「ということは、それを知ってる人がいるんだね?」

「うん! 父さんが知ってるよ」

ミミが胸を張る。

なんか、最初の突貫少女のイメージが、少しずつ変わってきている気がする。

「分かった。 じゃ、お店に行こうか」

「うん。 すぐ行こう!」

ミミが俺の手を引っ張る。 まあ、こういうところは変わらないね。


史郎とポルは、ミミに引きずられるように、ワンニャン亭に向かうのだった。

-----------------------------------------------------------------

「ただいまー!」

ミミが、元気よくお店に入っていく。

「討伐依頼、うまくいったようね」

ミミママが、エプロン姿で微笑んでいる。

「ママとパパを驚かせる、お土産があるよ」

「まあ、なにかしら」

「キッチンに入ってもいい?」

「ああ、何か食材を取ってきてくれたのね。 何かしら。
いいわよ、どうぞ入って。 
あなたー、ミミが帰ってきたわよー」

ミミパパが、奥から出てくる前に、ミミが俺の手を引っ張って、キッチンまで入ってしまった。

そこには恰幅のいい犬人族の男が、いわゆるシェフスタイルで立っていた。

「おう、ミミ。 お帰り」

ミミが駆け寄ると、ぐっと抱えあげた。

頬を擦り付ける。

「あーっ! じょりじょりするから、それは止めてって言ってるでしょ」

さすがは、ミミパパ。  強引である。

「それより、今日は、いいお土産があるの」

ミミが俺の方を見て、金属製のテーブルの上をポンポンと叩く。

ここに、出せってことだな。

俺は腰のポーチに触れる格好をすると、でかスライムが入った点を解放した。

ズンッ

机の上一杯にスライムが現れるが、金属製の机はびくともしない。

「まあっ!」 「おおっ!」 

ママとパパの歓声が上がる。

「おう。  こりゃ、立派なゴールデン・スライムだな」

「でしょ。 私が、ママの弓で仕留めたのよ」

「ミミ、やったわね」

頭を撫でられて、ミミは目を細めて、ゴロゴロ喉を鳴らしている。

ちょっと、モフラー心を刺激する光景である。

「こりゃ、腕がなるぜ。 おい、ママ、今日は閉店にしといてくれ」

「はい、あなた」

おい。  それでいいのか、この店は。

そう思ったが、二人は既に、自分の仕事に向かってしまっている。

まあ、ここは任せてしまうか。

ミミが、俺とポルをお客用のテーブルに座らせる。

「ちょっと待っててね」

そう言うと、再びキッチンに入っていった。


きっと、ミミパパの手伝いをするのだろう。

-------------------------------------------------------------

しばらくすると、前菜が出て来た。


マティーニ用のグラスに、薄く切られ、縮れた何かが入っている。

フォークですくって、口に入れてみる。

くにゅくにゅした食感に、酸味のあるソースが合わさり食欲が増す。
絶妙の前菜である。

次に、スープが出る。
オニオンスープのような透明なスープに、1cmくらいのクルトンっぽいものが浮いている。

スープは、見た目とは異なり、濃厚な味がする。
クルトンは香ばしく揚げられており、外はカリカリ、中はチーズのようにしっとりしている。
紛れもない、美味である。

そして、いよいよ大きな平皿に乗った、ステーキの登場である。
1cmくらいの厚さのお肉である。

ナイフで切って、口に運ぶ。
驚きが、口の中に広がる。

ステーキだと思っていたものは、どちらかというとマツタケのような食感であった。

そして、その味。
深く豊かな味わいが、舌を震わせる。
少し、チーズに似ているかもしれない。

お皿の上は、あっという間に空になった。

ポルも、空になったお皿を見つめて、残念そうにしている。
もっと、食べたかったんだね。 育ち盛りだもん。

最後に出てきたのは、デザート。 プルプルのゼリーだった。

今まで出てきた食事が全部、前菜に過ぎなくなる。
そんなインパクトがあった。

熟した果物のような風味と香り、そして、なによりそのツルン、プルンとした食感。
舌の上でふるふるしていたかと思うと、優しい後味を残して淡雪のように溶けて消える。


紛れもなく、人生最高の一品であった。

------------------------------------------------------------

出されたお茶を飲み、食後の余韻に浸っていると、ミミパパが出てきた。


「料理は、どうだった?」

「もう、信じられないくらい美味しかったです」

これはポル。

「今まで食べたものの中で、一番うまかったですよ」

俺も賛同する。

「お前たちが今食べたのは、ゴールデン・スライムの料理だぜ」

え! あれが?

「全部ですか?」

「ああ、全部だ」

「前菜や、スープに入ってたクルトンっぽい奴も?」

「ああ、全部だ。 ステーキも、デザートもな」

「でも、全然食感が違いましたよ」

「ゴールデン・スライムはな、下処理と、調理法によって、まったく違った食感が出るんだ。
なによりすごいのは、風味まで変化することでな。
入手の困難さも手伝って、幻の食材って言われてるのさ」

「へえー、それほど凄いものだったんですね。
しかし、どうやって、それほどの調理法を身に着けたんです?」

「昔、湖沼地帯に住んでる賢者と知り合ってな。
その方から、レシピを教えてもらったんだ」

「はー、しかし、これだけ美味しいと、さぞ高価なんでしょうね」

「ああ、王族の婚礼などに使われるのが普通だからな。
目ん玉が飛び出るような値段になるぞ」

「ふわー、そんな値段なんですか」

「そうだぜ、ポン太。 お前たちが食ったので、まあ、金貨1枚はするな」

「えええっ!!」

美味しいわけである。 
100万円の食事とはね。

しかし、賢者、半端ないな。 
どうやったら、あれだけの調理法に、たどり着くんだ。
スライムマニアか?

「まあ、お前たちからもらったもんだ。 
ただみたいなものだから、明日から町の皆に振舞うさ」

え? いつの間にか上げちゃったことになってる。

まあ、ミミが仕留めたんだから、いいけどね。

俺たち3人は討伐成功の乾杯をして、それぞれの寝床に帰った。



ワンニャン亭は次の日から物凄い人が押しかけた。
しばらく史郎たちは、食事に行くことが出来なかった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...