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第六章 竜人世界ドラゴニア編
第48話 天竜の国へ
しおりを挟む竜舞台での出来事の後、黒竜族の族長はバロワとなった。
彼は黒竜族の重鎮だが、ビギの専横に異議を唱え、長く牢に繋がれていた黒竜族きっての常識人だ。
黒竜族は、四竜社の席までは失わなかったが、無期限で議決権が無くなった。
青竜族は、3年間の議決権停止だ。
しばらくの間は、白竜族、赤竜族の二族で議決を行うことになる。
あの日、竜舞台にいた黒竜族は、全員牢に入れられている。四竜社で行われる、裁判のようなもので量刑が決められることになっている。
ジェラードの話だと、ビガはおそらく追放処分になるだろう、ということだった。
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事件の後、ポンポコ商会は、再び店を開けた。
開店初日は、小雨が降る中、物凄い人が詰めかけた。
「ミミちゃーん!」
「ポルくーん!」
「キャー!
カトー君がいるーっ!」
竜闘の宣伝効果は絶大だった。特に、女性ながら大男と戦ったミミは凄い人気で、女性客の多くが握手を求めている。
彼女は、この国における女性の意識向上に、大きな役割を果たしたかもしれない。
しょうがないから、店の一角に握手コーナーを作った。ミミ、ポル、加藤は、そちらに控えてもらっている。
イオ、コリーダ、俺は大忙しだ。
リーヴァスさんも、試合を見に来たマダムから熱烈な(?)誘惑を受けている。誘拐事件後、ネアさんは、いつもリーヴァスさんの隣にいる。彼女がリーヴァスさんを誘惑してくる女性の方をきっとした目で見ているのが印象的だった。
俺はというと、なぜか、皆が遠巻きに見るだけで、誰も声を掛けてこない。なんか、お客さんがちょっと怖がっている気がする。
なんでだろう。
ああ、そうそう。加藤が救ったエンデという黒竜族の女性も店を手伝っている。ただ、彼女は人前に出ることはせず、イオの家で、クッキーを焼くルルとコルナを助けている。
ナルとメルは、お手伝いに目覚めたらしい。ときどき、失敗はするが、はりきってルルとコルナの手助けをしている。
ネアさんの申し出で、家の前にある畑の一角に「土の家」を建てた。ここは、地上一階、地下一階にしてあるが、地上部分は、全てキッチンにした。
今は、ここで商品を焼いている。
地階は二部屋作ってあり、その一部屋に黒竜族の二人、リニアとエンデが住むことになった。二人とも、母屋にある風呂をとても気に入っている。俺が作った石鹸とシャンプーをしきりに褒めていた。
そうこうしているうちに、7日があっという間に過ぎた。
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その日は、未明からものすごい雨と風で、さすがにお店はお休みすることにした。
久しぶりの休日に、みんなのんびり過ごしている。朝から入浴している者、自作のお菓子を食べている者、お茶を飲んでいる者、思い思いに休みを満喫していた。
昼頃になり、更に雨風が強くなった。特に風は物凄く、この地の住宅がなぜ半地下になっているか、やっと納得がいった。人など簡単に飛ばされそうな強風が吹きあれる。
天竜からのテレパシーが聞こえたのは、そんな時だった。
『シロー、聞こえるか?』
『ああ、天竜モースか?』
『そうじゃ。
言っておったとおりに迎えにきたぞ』
『そうか。
では、すぐに用意をするから、待ってくれ』
『分かった』
俺は、家族とリニアにすぐに念話で連絡した。皆が、母屋に集まってくる。天竜の国に行くメンバーは、あらかじめリーヴァスさんと相談し、決めておいた。
俺、リーヴァスさん、ルル、ナル、メル、コルナ、コリーダ、ミミ、ポル、イオの十人だ。
加藤は、黒竜族の女性二人とネアさんの護衛として後に残る。
『用意はいいか?』
再び、天竜からのテレパシーが聞こえる。
『ああ、いいぞ』
『家の外に出てみよ』
風は大丈夫かなと思いながら、俺が一人で外へ出る。なぜか、風はピタリと止んでいた。
新しく作った「土の家」と、母屋の間には畑があるのだが、そこに竜がいた。青っぽい鱗をもった竜で、ナルとメルの母竜にくらべるとかなり小さい。おそらく半分くらいの大きさだろう。それでも頭上まで5mほどの高さがあった。
『では、皆で我の背に乗るがよい』
天竜モースが、尻尾を母屋の入り口に向けていたので、俺達は、その尻尾を伝って背中に登った。広い背中は、十人乗ってもまだまだ余裕がある。
『では、行くぞ』
加藤、ネア、リニア、エンデの見送りを受け、竜は空へ舞いあがった。翅がそれほど動いていないのに、物凄いスピードで上昇していく。
俺達は、雨雲を突きぬけた。身体が濡れないように、皆には、風防シールドを掛けてある。
青空と陽の光が眩しい。
天竜モースは、台風の目になっている部分に向かっているようだ。
雲の切れ間から下に降りると、すぐ下に森に覆われた陸地が見えた。
雲に隠された浮遊大陸ということになる。
竜の背に乗った史郎達は、その大陸目掛け、降下していった。
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竜人世界ドラゴニア編終了 天竜国編に続く
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