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二人目の男
しおりを挟む「言い難いけどさ、鯨井さんって、そんなに仕事デキないんだよな」
「は?主任なのに?異例の出世なのに?」
他人のことを悪く言うのが苦手な山川さんは、口籠りながらも説明を続ける。
「人の手柄を横取りするのが上手いらしい。
部下に仕事を割り振るのも、すごく乱暴でさ。普通は対・人間だから、いくら部下であってもキャパとか相手の状況を考慮するよな?なのに、あの人はそれをしない。
感情を排除し、ひたすら『やれ』と言う。
風邪を引いていようが、出張で翌朝5時出発だろうが、そんなものは一切無視して強引に仕事を押し付ける。で、自分の評価をどんどん上げてくワケ。
俺だったら恋愛相手として絶対に薦めない。なのにどうして鈴木は鯨井さんを選んだんだろう?」
食後のコーヒーを飲みながら、私は青ざめた。なぜなら、おかわりが用意されていたからだ。
おかわりと言っても、食べ物のことでは無い。
「おかわり?」
「はいい。鈴木さんに鯨井さんとのことを報告したら、『じゃあ次もイケメンでいいか?』と。続けて紹介していただけるようだったので、今度は性格重視にしてくださいと言ってみたんですが。
で、早速そのお相手と明晩に会うようセッティングされてしまって。えっと山川さんって、確か鈴木さんと同期でしたよね?その人も同期だとかで。
物流部の笹村さんって、どんな人ですか?」
あっ、山川さんの目がパカッと開いた。
それから徐々に薄目へと変わっていく。
「うーん。鈴木は本気で、美玲の恋愛相手を探す気があるのかな?いや、悪いヤツじゃない。たぶん、性格はいいぞ笹村は。ただなあ…」
私はゴクリと喉を鳴らして耳を澄ます。
「ビックリするほど無口だ。んもう、すっごくすっごく無口だ。お前がよく喋るから、聞き役に徹してくれればイイっつうんなら、上手くいくと思う。だがアイツとの愉快なトークは期待するな」
んなアホな。
私、口ではバカにしているけど、本当は隣席のカップルに憧れてて。
とにかくキャッキャしたいんです!
じゃれたり、長電話なんかもしたいんです!
「なんだか、会う前から憂鬱になってきました」
「ごめん、俺のせいで」
──その翌日。
噂通り、ミスター笹村は貝のように口を閉ざし。
ううう、シュノーケルが欲しい。
酸素が吸いたい。
…そう念じながら2時間が経過。
勇気を出して、私から『帰りましょうか』と言ったときの全力の笑顔が忘れられない。そんでもって『ごめんなさい、申し訳ありませんでした』と心の中で詫びながら帰宅し、すぐさま電話で鈴木さんに結果を報告したのだが。
その際の『わはは』という笑い声も、死ぬまで忘れないと思う。
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