恋、しちゃおうかな

ももくり

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タチの悪い男

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 …………
「あ、ご夫婦なんですね。そっか、いいなあ情報システム部は。営業部の場合だと、どちらかが異動させられちゃうんですよ」
「はァ」
 
 おいおい、なぜ否定しない。
 名字が同じ『鈴木』なだけで、夫婦ではないと。
 
 一応、直属の上司である鈴木さんは、チラリと私を見て、すぐにヘラヘラ笑う。
 
 ココは営業部内のミーティングルーム。
 
 修正して欲しい箇所があるとの要望を受け、売上システムについて話し合っている最中だ。目の前に並ぶのは、営業部の課長と主任の2人。今月、赴任したばかりの若き課長は素晴らしく男前で、しかも独身なのだと言う。
 
 ひと通り仕事の話が終わって出されたコーヒーを飲んでいると、その人は爽やかにこう呟いた。
 
「いやあ、俺が5年ほど支店に行ってた間に、情報システム部も様変わりしちゃったなあ。言っちゃ悪いけど、こんな美人はなかなかいませんよ。ほんと鈴木さん、めちゃくちゃタイプだなあ。
 
 あ、ゴメン、旦那さんの前で。
 気を悪くしないでくださいね」
 
 いま言わなくて、いつ言うんだ。
 頑張れ!私。
 
「あの、私たち夫婦ではありません。単に名字が同じだけなんですっ」
「えっ、そうなんだ。あは、良かった」
 
 その笑顔にキュンと来た。
 
 オトナなのに笑うと少年みたいって、
 私を殺す気ですか?

「じゃあ、これからは女性の鈴木さん指名で、いろいろ依頼しちゃおうかな」
「はい、なんなりとどうぞ」
 
 …いえいえ。本気にしてませんよ。営業トークでしょうとも。こんなモテそうな男性が、私の相手なんかするワケありませんし。
 
 それは分かっているのに。営業部を出てエレベータに乗り込んだ途端、鈴木さんが不機嫌全開で。同乗していた男性4人が1Fで降りて、エレベータのドアが閉まって再び動き出し。『お、鈴木さんと2人きりだ』と思ったら、その彼にトントンと肩を叩かれて。
 
 顔を向けた瞬間、
 唇に何かが触れた。
 
『あ、コーヒーの味がする』
 
 そう思っているうちに、それは離れ。
 
 地階に到着した途端、彼は何事も無かったかのように、とっとと出て行ってしまったのだ。
 
 
 
 
「なんなの、あの人?!」
「…はは、それ今日10回くらい言ってるよ」
 
 私にあんなことをしておきながら、その後の鈴木さんはあまりにも普通で。だから私も普通に仕事をこなし、終業後、山川さんを飲みに誘ったのだ。
 
 キスをされたと報告すると、特に驚きもせず山川さんはこう言った。

「鈴木は止めておけ。美玲には難易度が高すぎる」
「は?別に鈴木さんなんか好きじゃないし」
 
 チクリ、と胸が痛む。
 
 正直者の私は子供の頃から、嘘を吐くと胸が痛むようになっているのだ。
 
 だ、だって、意識しちゃうでしょ?
 
 今まで何とも思ってなかったはずなのに。あんな、あんなキスなんかされたら、私のこと好きなのかな…とか考えるでしょ?
 
「鈴木はヘタすると、鯨井よりタチが悪いぞ。長年付き合ってる女がいるはずだし、それ以外でも平気で女と寝る。その辺の倫理観がぶっ壊れてるんだよ、アイツは」
 
 
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