恋、しちゃおうかな

ももくり

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鈴木さんと2人きり

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「彼女、いるんですか…?」
「そりゃいるさ。あのルックスだぞ?女の方から寄って来るよ。しかも気に入ると自分からもガンガン行くし、断られたことは無いと自慢してたからな」

「…そ、ですか」
「だからな、ヤメとけよ絶対に」
 
 ショックを受けている自分に驚き、この気持ちをどこにぶつければイイのか途方に暮れていた。残念ながらキス以降は意識しまくりで、ことあるごとに鈴木さんを見てしまい。それを避けるため意識的に目をPC画面へ固定したせいで、軽いドライアイになったほどで。
 
 自分の中で何かが走り出し、
 それを止められそうにない。
 
 この不安をどうすればいいんだろう?
 
「不幸になると分かっていて、鈴木を選ぶんじゃないぞ。美玲は賢い女だと、俺は信じてるからな」
「ふへへ。賢いって言われた」
 
 適当に相槌を打ちながら、心の中で反論する。だって、恋愛は頭でするんじゃないんだもん。ひょっとしたら私、無意識のうちに『鈴木さんを好きになっては、いけない』とブレーキをかけていたのかも。
 
 はふはふとブリ大根を食べながら、山川さんがボソリと呟く。
 
「もしかして、あんな鈴木でも一応、美玲に手を出さないよう、抑えてたのかもな。そのくせ、ダメなヤツばかり紹介して、彼氏を作らせないようにしたりとか。ほんと屈折してるわ、アイツ。典型的なB型男って感じだな」
 
 女にだらしなくて。
 私に気が有るかもしれなくて。
 私に彼氏を作らせようとしない鈴木さん。
 
 人間というものは、危険なものに近づく習性があるらしく。ダメだダメだと思えば思うほど、近寄ってしまうものなのだ。
 
 それを知るのは、
 更に半年後のことである。
 

 
 
 
 …………
 半年後のその日、営業部の新人アシスタントが豪快に売上システムを破壊した。過去データを部分的に消去し、発注ツールまで使用不可にしたせいでちょっとしたパニック状態となり。『早急に復旧せよ』と営業部長から指示を受け、鈴木さんと2人掛かりで修復。
 
 作業完了したのは、深夜3時頃だった。
 
「ふう、休前日で良かったですね。最近、深夜残業がキツくて」
「あー、寿司でも食って帰るか?奢るぞ、美玲」
 
 たぶん駅前の24時間営業している回転寿司。
 
 こんな深夜に?
 食べれるけど。お腹、ペコペコだけど。
 
 でもなんか、気まずい。
 
 だって、鈴木さんと2人きりで外食なんて久々かも。…などと悩んでいるうちにソレは決定事項となった様で、振り返りもせずに、彼は前を歩いて行く。なんとまあ、冷たい男だろうか。並んで喋るでもなく、ずっと無言のままだ。
 
 店へ入ると意外に客は多く、座ってすぐに鈴木さんはビールを1杯飲み干す。
 
「回転寿司なんて久々かも。よく来るんですか?」
「…い」
 
 掠れる声で、彼はもう一度繰り返す。
 ──『あまりいい思い出はない』と。
 
 
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