恋、しちゃおうかな

ももくり

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荒む心

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 それから数カ月が経ち。
 
 『次の恋に挑む』はずの鈴木さんは、何故かしょっちゅう私を誘う。最初はホテルだったが、それが徐々に彼のマンションへと変わり、いつしかそれが決まり事のようになって。

 毎週金曜の夜は必ず2人で過ごしていた。
 
 仕事の方は、相変わらず多忙で。下請け会社に依頼していたものが、まったく手つかずのまま担当者が病気で入院。代わりも見つからず、全て被ることになって更に忙しくなり、土日も出勤することに。
 
 そんなとき、三ツ谷さんが現れる。
 
 彼女は私がシステム構築部門に異動した際に中途採用され、インフラ構築部門へと配属された後釜的な存在で。あまりにも私たちが悲惨な状態だったため、応援として来てもらうことになったのだ。
 
「なんか、一流大学を出たのが自慢みたいでさ。プライドがメチャ高いから、注意しとけよ。見た目は今どきの可愛い女のコなんだけどな」
 
 山川さんのアドバイスどおり、こちらから仕事をお願いしても1度では『ハイ』と答えてくれない。私の方が下だと思っているようで、高圧的な態度で質問してくる。
 
 そのくせ、仕事はあまり出来ない。プログラムを組むのが苦手らしく、ところどころに穴がある。それをチェックしてから修正するため、逆に時間が掛かってしまうという無駄っぷり。
 
 しかも、どうやら鈴木さんに気があるらしく、私と彼とでは態度が全然違うのだ。
 
「コーヒー煎れて来ました。鈴木さん、一緒に休憩しましょうよ」
 
 おいおい、私には煎れてくれないのか。
 
 まあ、これでも一応女子ですからね。
 自分のは自分で煎れますけど。
 
 なんか、いろいろ面倒臭い人だな。
 仕事だけ一生懸命やってくれないかな。
 
 
 
 
 もう限界を超えそうになり、ランチタイムに山川さんを誘った。会社近くにあるいつもの古い洋食屋で、ハンバーグに箸を突き刺していると…
 
「あ~、山川さん…と美玲さん。偶然ですねぇ、私たちも今からなんですう」
「あ、三ツ谷さん」
 
 甲高い声でやって来た彼女を渋い顔で見上げてみれば、そこには何故か彼がいて。どうやら『私たち』というのは彼女と鈴木さんのことらしく、とても仲良さげに2人は奥へと入って行く。
 
「とうとう鈴木もアレにまで守備範囲を広げたか」
 
 山川さんの言葉に返事もせず、ボンヤリと考えていた。そっか、ああいう甘ったるい声で頼ってくる女が好みだったのか。失敗しても謝らなくて、相手によって態度を変える、そんな女が。
 
 って、いけない、いけない。
 私、心が荒んでるわ。
 彼女にもイイところがあるじゃないの。
 
 って、どこだ?
 思いつかない、どこなんだ??
 
 ああ、やっぱり私、心が荒んでるうう。
 
 
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